2025年10月27日 暗号資産業界の最新動向

2025年10月27日、日本の金融史に新たな1ページが刻まれた。午後1時、日本初の円建てステーブルコインJPYCが正式に発行を開始し、わずか数時間で1500万円の発行を達成。関連企業の株価は軒並み急騰し、市場は新時代の到来を歓迎した。同じ日、地球の裏側では国際送金大手ウエスタン・ユニオンがステーブルコイン決済の試験運用を発表し、中央アジアのキルギス共和国は国家としてステーブルコインの発行を決定。一方、ビットコインは11万3000ドルを突破し、米中貿易協議の進展とFRBの利下げ期待を背景に力強い上昇を見せている。暗号資産はもはや投機的資産ではない。国家、伝統的金融機関、そして1億5000万人の顧客を抱える送金企業までもが、ブロックチェーン技術を実用的な金融インフラとして採用し始めた。この24時間で起きた出来事は、デジタル金融革命が本格的な実装フェーズに突入したことを明確に示している。

目次

日本初の円建てステーブルコインJPYC、正式発行開始

2025年10月27日、日本の暗号資産業界において歴史的な出来事が起こった。日本円建てステーブルコインJPYCが正式に発行を開始し、発行開始からわずか数時間で発行量が1500万JPYCを突破した。JPYC社の岡部代表は記者会見で「日本の通貨史に残る分岐点」と述べ、この歴史的な瞬間の重要性を強調した。

JPYCの発行は、専用プラットフォーム「JPYC EX」を通じて行われ、午後1時の公開から午後5時15分までの短時間で1500万円相当の発行を達成した。岡部代表は今後半年間で10兆円の発行を目指すという野心的な目標を掲げており、日本のデジタル金融市場の急速な拡大を予感させる。また、米大手暗号資産取引所Coinbaseとの交渉も進行中であることが明らかにされ、国際的な展開への期待も高まっている。

この歴史的な発行開始を受け、株式市場も即座に反応した。JPYCに出資するアステリア、電算システムホールディングス、ユナイテッドなどの企業の株価が急騰し、インタートレード、Speee、Unbankedなど関連テーマ銘柄にも買いが波及した。これは投資家たちが日本におけるステーブルコイン市場の成長可能性を高く評価していることを示している。

岡部氏は会見で「平等な競争ができる社会に」というビジョンを語り、JPYCが単なる決済手段にとどまらず、金融包摂と経済的平等を実現するツールとなることへの期待を表明した。日本の規制環境下で正式に認可されたステーブルコインとして、JPYCは今後の国内デジタル資産エコシステムの中核を担う存在となる可能性が高い。

世界で加速するステーブルコイン導入の波

日本でのJPYC発行と時を同じくして、世界各地でステーブルコインの導入が加速している。最も注目すべき動きの一つが、国際送金大手ウエスタン・ユニオンによるステーブルコイン決済システムの試験運用計画だ。同社は2025年第3四半期決算でこの計画を発表し、1億5000万人という膨大な顧客基盤に対してオンチェーン決済レールを提供することで、送金コストの削減と決済時間の大幅な短縮を目指している。

伝統的な送金業界の巨人がブロックチェーン技術を本格的に採用することは、業界全体のパラダイムシフトを象徴している。ウエスタン・ユニオンのような企業がステーブルコインを活用することで、国際送金の手数料は従来の数分の一に、送金時間は数日から数分に短縮される可能性がある。これは特に発展途上国において、出稼ぎ労働者が母国の家族に送金する際の負担を劇的に軽減することが期待される。

さらに注目すべきは、キルギス共和国における国家レベルでのステーブルコイン導入だ。同国は自国通貨ソム建てのステーブルコイン「KGST」をBNBチェーン上で発行することを発表した。この動きは、バイナンス創設者のチャンポン・ジャオ(CZ)氏が戦略顧問として支援しており、中央銀行デジタル通貨(CBDC)「デジタルソム」の試験運用開始や国家仮想通貨準備金の設立とともに推進されている。

中小国家がステーブルコインやCBDCを積極的に導入する背景には、金融インフラの近代化と国際決済システムへのアクセス改善がある。特にキルギスのような内陸国にとって、ブロックチェーン技術は地理的制約を超えて世界経済に参加する手段となる。CZ氏の恩赦後の活動として、こうした国家レベルのブロックチェーン戦略支援に注力していることも、暗号資産業界の成熟と政治的影響力の拡大を示している。

また、トロン(TRON)がステーブルコイン決済プラットフォームとして新興国市場で選ばれている理由についても注目が集まっている。イーサリアムやビットコインと比べて日本での知名度は高くないものの、アジア、南米、アフリカなどの新興国市場において、低コストで高速な決済を実現するブロックチェーンとして広く採用されている。これらの地域では、銀行口座を持たない人々が多く、ステーブルコインが金融包摂の重要なツールとなっている。

ビットコイン市場、11万ドル台を回復し強気相場が加速

ビットコイン市場は週末から週明けにかけて力強い上昇を見せ、11万3000ドルを突破した。この上昇の背景には複数の好材料が重なっている。まず、米連邦準備制度理事会(FRB)による追加利下げの確率が98%を超えたことが挙げられる。金融政策の緩和期待は、リスク資産への投資意欲を高め、ビットコインをはじめとする暗号資産市場全体を押し上げる要因となっている。

さらに重要なのは、米中貿易協議の進展に関する報道だ。両国間の貿易摩擦が緩和される兆しが見られたことで、追加関税の悪循環への懸念が後退し、グローバル市場全体でリスク選好の動きが強まった。この流れはビットコインだけでなく、イーサリアム(ETH)やソラナ(SOL)などの主要アルトコインにも波及し、暗号資産市場全体が上昇基調を強めている。

日本円建てのビットコイン価格も、10月20日から26日の週足終値で前週比107万6837円(6.55%)高の1751万5430円と反発し、前週の下げ幅を完全に奪回した。ビットバンクのアナリストは、米中関係改善期待によるビットコインの底入れを指摘しつつも、週明けの取引開始時に形成される可能性のある「下窓」には注意が必要だと警告している。

イーサリアムについても、アナリストが1万ドルへの道筋を予測している。大口保有者(クジラ)や中規模保有者(サメ)の動きが「信頼回復の兆候」を示しており、協定世界時10月25日時点で3946ドル前後で推移している。4000ドル付近には大量の売り注文が控えているものの、これを突破すれば上昇トレンドが加速する可能性がある。

一方で、ビットコインの価格予測に広く使用されてきたストック・フロー(S2F)モデルについては、慎重な見方も示されている。ビットワイズの投資アナリスト、アンドレ・ドラゴシュ氏は、S2Fモデルが価格予測の枠組みとして最適とは言えない可能性があると指摘している。市場の成熟に伴い、より多角的な分析手法が求められているようだ。

マウントゴックス債権者返済、2026年10月まで再延期

2014年に破綻した暗号資産取引所マウントゴックス(Mt. Gox)は、債権者への返済期限を2025年10月31日から1年延長し、2026年10月31日とすることを発表した。この決定は、依然として完了していない返済プロセスの複雑さを浮き彫りにしている。

マウントゴックスは、これまでに約19500人の債権者に対して支払いを完了したが、依然として約3万4000BTC(約6000億円相当)を保有している。この巨額のビットコインが市場に放出される時期とその影響については、市場参加者の間で長年懸念されてきた。今回の延期により、少なくとも今後1年間はこの大量のビットコインが即座に市場に流入する懸念は後退したことになる。

マウントゴックス事件は、暗号資産業界の黎明期における最大級のハッキング事件であり、当時は業界全体の信頼性を揺るがす出来事だった。それから11年が経過した現在も返済プロセスが続いていることは、大規模な暗号資産の管理と分配がいかに複雑であるかを示している。

債権者の中には、ビットコイン価格が大幅に上昇した現在、当初の債権額を大きく上回る価値を受け取ることになる者もいる。一方で、長年の待機を強いられてきた債権者にとっては、さらなる延期は失望をもたらすものとなっている。返済が完了するまで、保有されている3万4000BTCは市場の潜在的な売り圧力として意識され続けることになるだろう。

暗号資産業界と政治の接近、規制環境の変化

暗号資産業界と政治の関係がかつてないほど緊密になっている。トランプ米大統領のホワイトハウス舞踏場建設プロジェクトに対して、コインベース、リップル、テザーなどの暗号資産企業を含む37社・個人が寄付したことが公表された。建設費用は約3億ドルに上り、業界と政権の密接な関係が改めて浮き彫りになった。

特に注目されるのは、バイナンス創設者CZ氏への恩赦に関する報道だ。ポリティコ紙によれば、この恩赦はトランプ陣営と関係の深いロビイストへの45万ドルの支払いと、元SEC議長候補テレサ・グッディ・ギレン氏への29万ドルの支払いを含む、大規模なロビー活動の結果として実現したという。これは暗号資産業界がワシントンでの政治的影響力を拡大するために、多額の資金を投じていることを示している。

CZ氏は恩赦後、キルギス共和国の仮想通貨戦略顧問として活動するなど、国家レベルでのブロックチェーン導入支援に注力している。これは、暗号資産業界のリーダーたちが単なるビジネスの枠を超えて、グローバルな金融システムの再構築に関与しようとしていることを物語っている。

コインベースのCEOブライアン・アームストロング氏も、エコー買収を背景に、起業家が企業設立から資金調達、IPOまでをオンチェーンで可能にする構想を語っている。これは、従来の金融システムや証券市場の仕組みを根本から変革しようという野心的なビジョンであり、規制当局との対話と協力が不可欠となる。

一方で、技術的な議論も活発化している。ソラナ共同創業者アナトリー・ヤコベンコ氏は、イーサリアムのレイヤー2ネットワークが「イーサリアムのセキュリティを継承している」という主張は誤りだと指摘し、明白なセキュリティおよび中央集権化の問題があると批判した。こうしたブロックチェーン間の技術論争は、業界の健全な競争と技術革新を促進する要素となっている。


まとめ

2025年10月27日は、日本の暗号資産史において記念すべき日となった。JPYCの正式発行により、日本は主要国の中でも先進的なステーブルコイン市場を持つ国の一つとなった。同時に、世界各地でステーブルコインの導入が加速し、伝統的金融機関や国家がブロックチェーン技術を本格的に採用する動きが顕著になっている。

ビットコイン市場は11万ドル台を回復し、金融政策の緩和期待と地政学的リスクの低下を背景に強気相場が継続している。一方で、マウントゴックスの返済延期や業界と政治の接近など、解決すべき課題や注視すべき動向も存在する。

暗号資産業界は、投機的な資産クラスから、実用的な金融インフラへと確実に進化している。今後数年間で、ステーブルコインを中心としたデジタル決済システムが、グローバルな金融システムの重要な構成要素となることは間違いないだろう。

本記事は、CoinPost、CoinDesk Japan、Cointelegraph Japan等の暗号資産専門メディアが2025年10月27日に報道した複数の記事を基に、独自に分析・編集したものです。

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