制度・企業・価格・政治 | 2025年10月25日の暗号資産ニュース総まとめ

暗号資産市場は、制度整備の進展、企業による戦略的な動き、価格変動の背景にあるオンチェーンデータ、そして政治的な影響力という4つの軸で日々変化しています。2025年10月25日は、これらの要素が複雑に絡み合った1日となりました。

JPモルガンによるBTC担保融資の計画や、テザー社の新ステーブルコイン「USAT」発表、リップル社の買収戦略、POLYトークンのエアドロップ、そしてトランプ政権によるCZ氏への恩赦など、制度・企業・価格・政治の各領域で注目すべきニュースが相次ぎました。

本記事では、「制度・企業・価格・政治」という4つのカテゴリに沿って、2025年10月25日に報じられた主要な暗号資産関連ニュースを整理・分析しています。  

それでは、暗号資産市場の現在地を見ていきましょう。

目次

JPモルガンとテザーが示す制度化の加速 | BTC担保融資・USATステーブルコイン・Baseトークン分析

この日、暗号資産の制度化と金融インフラ整備に関する動きが複数報じられた。  

まず、米JPモルガン・チェースがビットコイン(BTC)とイーサリアム(ETH)を担保とした融資サービスの提供を計画していると報道された。これは、暗号資産を伝統的な金融資産と同様に扱う動きの一環であり、ウォール街によるデジタル資産の受容がさらに進んでいることを示している。JPモルガンはすでに一部の機関顧客に対して暗号資産を用いた担保融資を試験的に提供しており、今後はより広範な展開が見込まれている。

さらに、JPモルガンはコインベース1のL2ネットワーク2「Base」上でのトークン発行により、最大5兆円(約340億ドル)の価値が創出される可能性があると分析。これは、L2技術と大手金融機関の連携がもたらす経済的インパクトの大きさを示唆しており、RWA3や企業トークンの発行が金融市場に与える影響を定量的に評価した初のレポートとして注目されている。

ステーブルコイン4分野では、テザー社が米国向けの新たなステーブルコイン「USAT」を12月にローンチ予定であると発表。USATは米ドル連動型で、既存のUSDTとは異なる設計思想を持ち、1億人の米国ユーザーへのリーチを目指している。これは米国市場に特化したステーブルコイン戦略の一環であり、規制対応やKYC5設計も含めて新たな展開が期待される。

また、テザー62025年の年間利益が2.3兆円(約150億ドル)に達する見込みであると報じられた。これは過去最高益となる見通しで、ステーブルコイン事業の収益性と拡張性を裏付ける内容となっている。テザーはUSDT7の発行残高を背景に、利回り運用や準備資産の活用によって安定的な収益を確保しており、今後の事業多角化にも注目が集まっている。

これらの動きは、暗号資産が単なる投機対象から、制度的に認知された金融インフラの一部へと進化しつつあることを示している。JPモルガンの動きは伝統金融の受容を、テザーの展開はステーブルコインの実用化を、それぞれ象徴しており、制度化の流れが加速していることが明確に読み取れる。

リップル・Pump.fun・ジェミナイ | 企業買収と評価が分かれる暗号資産戦略

企業による暗号資産関連の戦略的展開も活発化している。  

リップル社は、プライムブローカレッジ企業8「Hidden Road」の買収を完了し、仮想通貨企業として初めてグローバルなプライムブローカー事業に参入した。これにより、機関投資家向けのサービス提供が本格化する見込みで、リップルの事業領域が大きく拡張される。Hidden Roadは伝統金融と暗号資産の橋渡しを担う企業であり、リップルの流動性提供事業との相乗効果が期待されている。

また、ソラナ基盤のミームコインローンチパッド9「Pump.fun」は、マルチチェーン対応の取引ターミナル「Padre」を買収。Padreは複数のチェーンに対応したトレーディングUIを提供しており、Pump.funのユーザー体験を大きく向上させると見られている。ミームコイン市場の拡大とともに、インフラ整備が進むことで、より多様なユーザー層の獲得が可能になる。

一方、米金融大手シティグループは、暗号資産取引所ジェミナイの目標株価を引き下げたと報じられた。ジェミナイは規制対応や収益性の面で課題を抱えており、シティのアナリストは「忍耐が必要」とコメントしている。対照的に、別の取引所「ブリッシュ」については目標株価を引き上げており、企業ごとの評価が分かれる状況が浮き彫りとなっている。

これらの動きは、暗号資産業界における企業戦略の多様化と成熟化を示しており、今後の競争環境や市場構造に影響を与える可能性がある。買収・評価・UI強化といった動きは、単なる価格変動とは異なる構造的な変化を示している。

ポリマーケットとCZ恩赦 | 予測市場とトークン発行が交錯する政治と投資の最前線

この日、予測市場とトークン発行に関する話題が複数報じられた。  

まず、分散型予測市場10「ポリマーケット」が独自トークン「POLY」の発行とエアドロップ11の実施を正式に表明。米国市場への再進出後にローンチされる予定で、ユーザー報酬やガバナンス参加などの用途が想定されている。これにより、予測市場のトークン化が本格化し、分散型金融(DeFi)との接続性が高まる可能性がある。

さらに、ポリマーケットは米国版アプリのローンチを優先する方針を明らかにしており、規制対応とユーザー基盤の拡大を両立させる戦略が見て取れる。予測市場は政治・金融・スポーツなど多様なテーマを扱っており、米国市場での再始動は業界全体にとって重要な転機となる。

この動きと並行して、トランプ大統領によるバイナンス12創設者CZ氏への恩赦が報じられ、ポリマーケット上では「CZのバイナンス復帰確率」が急騰。一時82%まで上昇した後、30%付近で推移している。トレーダーGarrett Jin氏は恩赦を事前に予測し、2倍のリターンを達成したとされる。

このように、予測市場と政治的イベントがリアルタイムで接続され、トークン価値や市場流動性に直接影響を与える構造が明確になってきた。POLYの発行とCZ関連予測の活発化は、分散型予測市場の可能性とリスクを同時に示している。

テザー社のAI事業始動 | QVACデータセットとプライバシー重視アプリで新領域へ

ステーブルコイン最大手のテザー社が、AI事業に本格参入したことが報じられた。  

同社はSTEM分野13に特化した大規模AIデータセット14「QVACジェネシスI」を公開。これは、教育・研究・開発用途に向けて設計されたオープンデータセットであり、AIモデルの訓練や評価に活用されることが期待されている。

加えて、テザーはプライバシー重視のAIアプリ「QVACワークベンチ」も同時にリリース。ユーザーの個人情報を保護しながら、AIによるデータ処理や分析を可能にする設計となっており、分散型思想に基づいたアプローチが特徴的だ。

このAI事業は、テザーのステーブルコイン事業とは異なる領域でありながら、データ・プライバシー・分散型技術という共通基盤を持っている。今後は、USDTやUSATといったステーブルコインとAIサービスが連携する可能性もあり、金融と技術の融合が進むことが予想される。

テザーはこれまでにも、インフラ投資や分散型通信技術への関与を強めてきたが、今回のAI事業は知的資産とユーザー体験の両面で新たな価値創出を目指す動きとして注目される。

ビットコイン・ソラナ・HYPE | 価格分析とオンチェーン動向で見える市場の現在地

この日は、複数の暗号資産に関する価格分析とオンチェーン動向が報じられた。  

まず、オンチェーンアナリストの報告によると、大口投資家が過去4日間で約25万SOL(約74億円相当)を購入したことが明らかになった。これはソラナに対する機関投資家の関心が高まっていることを示しており、価格上昇の一因と見られている。

また、CryptoQuantのレポートでは、中規模保有者(ドルフィン)によるビットコイン蓄積が市場を牽引していると指摘された。ドルフィン層は、クジラほどの影響力はないものの、継続的な買い支えによって価格の安定性に寄与しているとされる。

スペースXによる204億円相当のBTC移動も報告されており、ウォレット再編成や資産管理の動きが活発化している。企業によるBTC保有と運用が、オンチェーンで可視化される時代に突入している。

価格分析では、CointelegraphJPがBTC・ETH・XRP・SOLのチャートを解説。BTCは10万7000ドルのサポートから反発したものの、11万2000〜11万6000ドルのゾーンで強い抵抗に直面しているとされる。ETHやSOLも同様に、短期的な上昇と調整の局面にある。

ドージコイン(DOGE)は0.18ドルから7.5%上昇後、0.20ドル突破が鍵とされ、突破すれば25%の上昇余地があるとの見方も出ている。ミームコイン市場にも再び注目が集まりつつある。

さらに、分散型取引所15ハイパーリキッドのネイティブトークン16「HYPE」は、ロビンフッド上場を受けて13%以上上昇し、一時40.87ドルまで到達。強気シグナルが点灯しており、40%上昇の可能性も示唆されている。

最後に、米CPI17の低下を受けてS&P500が高値を更新。BTCは一時11万2000ドルまで上昇した後、ウォール街の取引開始に合わせて反落。マクロ経済と暗号資産の連動性が改めて浮き彫りとなった。

トランプ政権とCZ恩赦 | 仮想通貨規制と人事が揺れる米国政治の現在地

この日は、米国の政治と仮想通貨規制に関する話題が複数報じられた。  

まず、トランプ大統領がバイナンス創設者CZ氏に恩赦を与えたことが明らかになり、米政界と業界に衝撃が走った。CZ氏は過去の法的問題を抱えていたが、恩赦により再び業界復帰の可能性が高まっている。ポリマーケットでは「CZのバイナンス復帰確率」が急騰し、政治と予測市場の連動が注目された。

この動きに対し、米民主党議員が公式声明で批判を表明。下院金融サービス委員会のランキングメンバーは「規制の信頼性を損なう」として、トランプ政権の対応に懸念を示した。仮想通貨業界と政治の距離感が再び問われる展開となっている。

さらに、トランプ政権はCFTC18の次期委員長にマイケル・セリグ氏を指名する方針を固めた。セリグ氏はSECの仮想通貨タスクフォースに所属していた法律顧問であり、規制と技術の両面に精通している人物とされる。元々の候補だったブライアン・クインテンツ氏の指名を撤回した後の新たな動きであり、政権内の方針転換がうかがえる。

この一連の動きは、米国における仮想通貨規制の方向性と政治的影響力の強さを改めて示すものとなった。CZ恩赦、委員長人事、民主党の反応 ー それぞれが制度化の進展と政治的リスクの両面を浮き彫りにしている。

  1. Coinbase(コインベース)
    米国発の世界最大級の暗号資産取引所。2012年に設立され、ビットコインやイーサリアムなどの暗号資産の売買・保管・送金を提供するプラットフォーム。2021年には米NASDAQ市場に上場し、暗号資産業界で初の上場企業となった。 ↩︎
  2. L2ネットワーク(Layer 2/レイヤー2)
    既存のブロックチェーン(レイヤー1)の上に構築される拡張ネットワーク。主にイーサリアムなどのL1チェーンの「処理速度」「手数料」「スケーラビリティ」の課題を解決するために設計されており、DeFiやNFT、ゲームなどの利用拡大に不可欠な技術とされている。 ↩︎
  3. RWA(Real World Assets/リアルワールドアセット)
    現実世界に存在する資産をブロックチェーン上でトークン化したもの。不動産、債券、株式、金、芸術品などの実物資産をデジタル化し、暗号資産として取引可能にすることで、伝統的金融とDeFi(分散型金融)を接続する新たな仕組み。 ↩︎
  4. ステーブルコイン
    価格の安定性を目的として設計された暗号資産。法定通貨(米ドル・円など)や現物資産(金など)に価値を連動させることで、暗号資産の価格変動リスクを抑え、決済や送金に適した通貨として機能する。 ↩︎
  5. KYC(Know Your Customer/顧客確認)
    金融機関や暗号資産取引所が、顧客の本人確認を行う法的手続き。マネーロンダリングやテロ資金供与などの不正行為を防止し、金融取引の透明性と安全性を確保するために導入されている。 ↩︎
  6. Tether Limited(テザー・リミテッド)
    世界最大のステーブルコイン「USDT(テザー)」を発行・管理する企業。
    法定通貨に連動する暗号資産の先駆けとして、2015年にUSDTの発行を開始。現在は複数のステーブルコイン(USDT、EURT、CNHTなど)を提供し、暗号資産市場の流動性基盤を担っている。 ↩︎
  7. USDT(Tether/テザー)
    米ドルと1:1で連動するステーブルコイン。Tether Limited社が発行する暗号資産で、価格が常に「1USDT=1ドル」に保たれるよう設計されている。暗号資産市場における「基軸通貨」として、取引量・時価総額ともに最大規模を誇る。 ↩︎
  8. プライムブローカレッジ企業Prime Brokerage Firms
    ヘッジファンドや機関投資家向けに、証券取引・資金管理・レバレッジ・清算などの包括的な金融サービスを提供する専門企業。主に大手投資銀行や証券会社が担っており、資産運用の効率化とリスク管理を支援する役割を果たす。 ↩︎
  9. ミームコインローンチパッド(Meme Coin Launchpad)
    誰でも簡単にミームコイン(インターネット文化をテーマにした暗号資産)を発行・流通させるための分散型プラットフォーム。スマートコントラクトの複雑さを隠蔽し、ノーコードでトークンを生成・DEX(分散型取引所)に即時上場できる仕組みを提供する。2025年にはSolanaやBNBチェーンを中心に爆発的に普及。 ↩︎
  10. 分散型予測市場(Decentralized Prediction Market)
    ブロックチェーン技術を活用し、未来の出来事に対する予測をトークン化して売買できる分散型プラットフォーム。選挙、経済指標、スポーツの勝敗、天候、暗号資産の価格など、現実世界の事象に対して「起こる/起こらない」などの選択肢にベットし、的中すれば報酬を得られる仕組み。中央管理者を介さず、スマートコントラクトにより運営される。 ↩︎
  11. エアドロップ(Airdrop)
    暗号資産やNFTを無料で配布するプロモーションイベント。新規プロジェクトや取引所が、認知度向上やユーザー獲得を目的として、特定の条件を満たしたユーザーにトークンを無償で配布する仕組み。Web3時代の「参加型マーケティング」として定着している。 ↩︎
  12. バイナンス(Binance)
    世界最大級の暗号資産取引所。2017年に設立され、取引高・ユーザー数・対応通貨数のいずれもトップクラスを誇るグローバルプラットフォーム。現物・先物・ステーキング・NFT・ローンチパッドなど多彩なサービスを展開しており、Web3インフラ企業としても存在感を強めている。 ↩︎
  13. STEM分野(Science, Technology, Engineering, Mathematics)
    科学・技術・工学・数学の4分野を総称する教育・研究領域。現代社会のイノベーションを支える中核的な分野として、教育政策・産業振興・国家戦略の中で重視されている。AI、ロボティクス、バイオテクノロジー、量子コンピューティングなどの先端技術は、すべてSTEM分野に根ざしている。 ↩︎
  14. 大規模AIデータセット(Large-scale AI Dataset)
    AIモデルの学習に用いられる、膨大かつ多様な形式のデータ群。画像、音声、テキスト、動画、センサーデータなどを含み、機械学習や深層学習の精度向上に不可欠な基盤。特に生成AIやマルチモーダルAIの開発では、質・量ともに優れたデータセットが競争力を左右する。 ↩︎
  15. 分散型取引所(DEX:Decentralized Exchange)
    中央管理者を介さず、ユーザー同士が直接暗号資産を取引できるブロックチェーンベースの取引所。スマートコントラクトを活用することで、資産の自己管理・透明性・検閲耐性を実現し、DeFi(分散型金融)の中核インフラとして機能している。 ↩︎
  16. ネイティブトークン(Native Token)
    特定のブロックチェーン上で基軸通貨として機能する、独自発行の暗号資産。そのブロックチェーンの運営・手数料支払い・ステーキング・ガバナンスなどに直接使用されるトークンであり、他のトークンとは異なり「そのチェーン固有の通貨」として設計されている。 ↩︎
  17. CPI(Consumer Price Index/消費者物価指数)
    消費者が購入する商品やサービスの価格変動を測定する経済指標。インフレ(物価上昇)やデフレ(物価下落)の状況を把握するために、政府や中央銀行が毎月公表する。経済政策、金利判断、年金改定などに広く活用される。 ↩︎
  18. CFTC(Commodity Futures Trading Commission/米商品先物取引委員会)
    米国のデリバティブ市場(先物・オプション・スワップなど)を監督・規制する独立政府機関。1974年に設立され、金融市場の公正性・透明性・競争性を確保し、投資家保護とシステミックリスクの抑制を目的として活動している。 ↩︎
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