2025年12月7日、今週の暗号資産市場は「ビットコイン財務戦略企業のビジネスモデル崩壊」という衝撃的な分析がギャラクシーリサーチ(Galaxy Research)から発表され、大きな転換点を迎えました。かつて急成長を誇ったビットコイン・トレジャリー企業(DAT企業)が、株価プレミアムの縮小により「ダーウィン的段階」に入りつつあるとの指摘です。従来の「無限の錬金術」とも形容された循環モデルが機能不全に陥り、生存競争が激化しています。
ストラテジー(Strategy)のフォン・レ(Phong Le)CEOは、14.4億ドル(約2,230億円)の準備金を設けた理由について、ビットコイン下落局面で高まった投資家の不安を和らげるためだったと説明しました。配当不安の払拭が狙いであることが明確になりました。
日本円連動ステーブルコインJPYC(ジェーピーワイシー)の保有者数が3日間で2.4万人も急増し、11万2,395アドレスに到達しました。さらにガス代不要のQR決済ソリューション「Avacus Pay(アバカス・ペイ)」も登場し、Web3の利便性が日常決済レベルに到達しつつあります。
リップル(XRP)は価格が暴落する一方、ネットワーク活動は2025年最高水準を記録し、ETF誕生により保有層に変化の兆しが見られます。市場心理は「恐怖」に染まっていますが、ファンダメンタルズは好調という「ねじれた」状態です。
本稿では、DAT企業ダーウィン的段階、ストラテジー準備金説明、JPYC急増、XRP動向、その他重要トピックについて解説します。
BTC財務戦略企業が「ダーウィン的段階」突入、収益モデル崩壊──ギャラクシーリサーチ「錬金術的モデル」機能不全
ギャラクシーリサーチ(Galaxy Research)の新たな分析によれば、ビットコイン・トレジャリー企業(DAT企業)が、かつて急成長を誇ったビジネスモデルの根幹が崩れつつあり、「ダーウィン的段階」に入りつつあるという衝撃的な指摘がなされました。株価プレミアムの縮小により、従来の「無限の錬金術」とも形容された循環モデルが機能不全に陥り、生存競争が激化しています。
DAT企業ダーウィン的段階の意義と背景は以下の通りです。第一に、「錬金術的モデル」の崩壊です。DAT企業は、ビットコインを保有することで株価プレミアム(NAV、純資産価値に対するプレミアム)を獲得し、そのプレミアムを活用して増資や社債発行により追加資金を調達し、さらにビットコインを購入するという循環モデルを構築していました。株価がNAVの2倍、3倍で取引されることで、実質的に「無限の錬金術」が可能でした。しかし、ビットコイン価格の調整と市場センチメントの悪化により、株価プレミアムが急速に縮小しています。
第二に、株価プレミアム縮小の実態です。ストラテジー(Strategy)株は10月6日以降、約57%下落し、mNAV(純資産価値)1倍割れのリスクも指摘されています。他のDAT企業も同様の状況で、株価がビットコイン保有額を下回るケースも出ています。投資家は「DAT企業株を買うより、ビットコインETFを買った方が良い」と判断し始めており、DAT企業株からの資金流出が続いています。
第三に、「ダーウィン的段階」の意味です。ギャラクシーリサーチは、DAT企業が「ダーウィン的段階」に突入したと表現しています。これは、従来のビジネスモデルが機能しなくなり、生存競争が激化する段階を意味します。株価プレミアムが維持できない企業は、追加資金調達が困難になり、ビットコイン購入ペースが鈍化します。一方、配当提供、レンディング事業参入、ビットコインマイニング統合など、新しい収益源を確保できる企業のみが生き残ります。自然淘汰が起きる局面です。
第四に、メタプラネットの対応です。メタプラネット(Metaplanet)は、BTC財務戦略に危険信号が点灯する中で、あえて攻めの姿勢を崩さない動きを見せました。5,000万ドル(約77億円)の追加借入を実施し、ビットコインの追加購入に充てています。市場全体では株価プレミアムの縮小により従来の「錬金術的モデル」が機能不全に陥りつつありますが、メタプラネットはBTC担保レンディングを活用することで、資金調達を継続しています。株価は下げ止まりの兆候が見られ、「底打ち」の可能性が指摘されています。
第五に、Twenty One社の上場です。暗号資産市場が調整局面にあり、DAT企業にとって厳しい資金調達環境が続くなか、ビットコインを中核資産とするDAT企業Twenty One(トゥエンティ・ワン)が12月9日にニューヨーク証券取引所(NYSE)にSPAC(特別買収目的会社)方式で上場予定です。厳しい環境下でも上場を強行する背景には、DAT企業の生存競争が激化していることがあります。
第六に、投資家への示唆です。ギャラクシーリサーチの分析は、DAT企業への投資リスクが高まっていることを示唆しています。株価プレミアムが維持できなくなれば、DAT企業株はビットコインETFに対して優位性を失います。投資家は「DAT企業株とビットコインETF、どちらが良いか」を慎重に検討する必要があります。一方、新しい収益源を確保できるDAT企業は、長期的に成長する可能性があります。生き残る企業と淘汰される企業を見極めることが重要です。
ストラテジー14億ドル準備金で配当不安払拭、CEO「投資家不安和らげるため」──BTC売却回避能力を強化
ストラテジー(Strategy)のフォン・レ(Phong Le)CEOは、14.4億ドル(約2,230億円)の準備金を設けた理由について、ビットコイン下落局面で高まった投資家の不安を和らげるためだったと説明しました。配当不安の払拭が狙いであることが明確になりました。JPモルガン(JPMorgan)は、ストラテジーのビットコイン売却回避能力がBTC価格の短期見通しにおいてマイナー活動より重要だと分析しており、今週は同社の財務戦略に高い関心が集まりました。
ストラテジー準備金説明の意義は以下の通りです。第一に、14.4億ドル準備金の目的です。ストラテジーは、米ドル建ての準備金14.4億ドルを確保しました。この準備金は、ビットコイン価格が下落した際に、ビットコインを売却せずに配当や運転資金を賄うためのものです。ビットコインの「永久保有」戦略を維持しながら、株主への還元も実現する狙いです。
第二に、配当不安の払拭です。フォン・レCEOは「ビットコイン下落局面で高まった投資家の不安を和らげるため」と説明しました。ビットコイン価格が急落すると、投資家は「ストラテジーが配当を支払うためにビットコインを売却するのではないか」との不安を抱きます。準備金を確保することで、この不安を払拭し、株価の安定化を図ります。
第三に、JPモルガンの評価です。JPモルガンのアナリストが、ストラテジーのビットコイン売却回避能力がBTC価格の短期見通しにおいてマイナー活動より重要だと分析しました。ストラテジーは約65万BTC(約600億ドル、約9兆3,000億円)を保有しており、市場最大の保有者です。同社が売却すれば価格に大きな下落圧力がかかりますが、売却回避能力があれば、需給は安定します。
第四に、Bitwise(ビットワイズ)やみずほ証券の見解です。Bitwiseのマット・ホーガンCIOは「ストラテジーがビットコインを売却することはない」と断言し、そのような主張は「完全に間違っている」と述べました。みずほ証券も、ストラテジー社に対し「Outperform(買い)」評価を維持し、目標株価を484ドルに設定しています。大手金融機関がストラテジーの戦略を支持していることが鮮明です。
第五に、キャンター・フィッツジェラルド(Cantor Fitzgerald)の目標株価引き下げです。一方、キャンター・フィッツジェラルドは、ストラテジー株の12カ月目標株価を560ドルから384ドルに引き下げました。株価急落を受けた調整ですが、依然として「買い」推奨を維持しています。長期的にはビットコインに強気姿勢を示しています。
JPYC保有者3日で2.4万人急増・11万超到達、QR決済対応で実用化加速──Web3利便性が日常決済レベルに
日本円連動ステーブルコインJPYC(ジェーピーワイシー)の保有者数が3日間で2.4万人も急増し、11万2,395アドレスに到達しました。12月3日時点の8万8,288アドレスと比較して、異例の成長を記録しています。さらにガス代不要のQR決済ソリューション「Avacus Pay(アバカス・ペイ)」も登場し、Web3の利便性が日常決済レベルに到達しつつあります。
JPYC急増とQR決済対応の意義は以下の通りです。第一に、3日間で2.4万人急増の背景です。JPYCは12月3日時点で8万8,288アドレスでしたが、12月6日時点で11万2,395アドレスに到達しました。わずか3日間で2万4,107アドレス増加し、約27%の成長です。この急増の背景には、何らかのキャンペーンやエアドロップがあった可能性がありますが、詳細は明らかにされていません。いずれにせよ、日本円ステーブルコインへの関心が急速に高まっています。
第二に、QR決済対応の革新性です。Web3テック企業のSOWAKA PTE. LTD.(SOWAKA)は、JPYCと連携した新たな決済ソリューション「Avacus Pay(アバカス・ペイ)」を正式に発表しました。最大の特徴は、ガス代不要でQR決済が可能になることです。従来のブロックチェーン決済では、トランザクション手数料(ガス代)が必要でしたが、Avacus Payではこれが不要になります。店舗側がQRコードを提示し、顧客がスマホでスキャンして決済するという、既存のPayPayやLINE Payと同様の使い勝手を実現します。
第三に、手数料大幅減の可能性です。Avacus Payは、従来のクレジットカード決済(手数料3-5%)やQR決済(手数料1-3%)と比較して、大幅に手数料を削減できる可能性があります。ブロックチェーン技術により、仲介業者を排除できるためです。店舗にとっては手数料負担が減少し、消費者にとっても還元が増える可能性があります。
第四に、日本のステーブルコイン市場の成長です。JPYCの急成長は、日本のステーブルコイン市場が本格的に立ち上がりつつあることを示しています。政府は2025年6月にステーブルコイン規制を施行し、銀行や信託銀行による発行を解禁しました。MUFGは円建てのトークン化されたマネー・マーケット・ファンド(MMF)を2026年に発行する計画を発表しており、大手金融機関も参入しています。JPYCのような民間発行ステーブルコインと、金融機関発行ステーブルコインが共存する市場が形成されつつあります。
第五に、Web3の日常化です。JPYCのQR決済対応は、Web3技術が日常決済レベルに到達しつつあることを示しています。従来、暗号資産は投機的な投資対象と見られていましたが、ステーブルコインにより日常決済での利用が可能になります。SBI VCトレードとサッポロビールがWeb3技術を活用した実証実験を開始し、黒ラベルTHE BARでNFTを活用したビール体験を提供するなど、日本企業のWeb3活用事例が増えています。
XRP暴落もデータ好調、ETF誕生で保有層変化──SNS「恐怖」もネットワーク活動2025年最高、ねじれた市場
リップル(XRP)は価格が暴落する一方、ネットワーク活動は2025年最高水準を記録し、ETF誕生により保有層に変化の兆しが見られます。市場心理は「恐怖」に染まっていますが、ファンダメンタルズは好調という「ねじれた」状態です。SNS上では悲観論が支配していますが、XRPレジャー(XRPL)の流通速度が年間最高値を記録し、大口保有者による2,100億円規模の買い増しが確認されています。
XRP動向の分析は以下の通りです。第一に、価格暴落とセンチメント悪化です。XRP価格は約20%下落し、2ドル(約310円)付近で推移しています。XRPを巡るソーシャルセンチメントが「恐怖ゾーン」に沈んでおり、SNS上では悲観的な意見が目立ちます。投資家は「XRPは終わった」「もう上がらない」といった極端な見方をしています。
第二に、データは好調という矛盾です。一方、XRPレジャーの流通速度が12月2日に年間最高値0.0324を記録しました。流通速度とは、XRPが取引される頻度を示す指標で、高いほど活発に取引されていることを意味します。大口保有者による2,100億円(約13.5億ドル)規模の買い増しや取引所準備金の減少など、オンチェーン活動の活発化が確認されました。価格が下落しているにもかかわらず、ネットワーク活動は活発化しているという「ねじれた」状態です。
第三に、ETF誕生による保有層変化です。XRP現物ETFが11月14日に上場して以来、13営業日連続で純流入を記録し、暗号資産ETF史上最長の記録を更新しました。累計流入額は10億ドル(約1,550億円)の節目に迫っています。ETFの登場により、機関投資家や個人投資家がXRPに投資しやすくなりました。一方、ETFで買われる一方、現物市場で売られるという需給の歪みが生じており、価格が下落しています。大口保有者や初期投資家が、ETF流入を利用して利益確定の売りを出している可能性があります。
第四に、サンティメント(Santiment)の逆張り指標です。情報プラットフォームのサンティメントは、XRPのソーシャルセンチメントが「恐怖ゾーン」に沈んでいることを指摘する一方、同様の局面が以前には上昇の前触れになったと指摘しています。センチメントが極端に悪化すると、逆張りで買いが入る傾向があります。市場心理が「恐怖」に染まっている今こそ、買い場である可能性があります。
第五に、リップル社の動向です。リップル(Ripple)社のブラッド・ガーリングハウスCEOは、バイナンス・ブロックチェーン・ウィークで、ビットコインは2026年に18万ドル(約2,790万円)に達すると予測しました。XRP自体の価格予測は示していませんが、暗号資産市場全体への強気姿勢を示しています。リップル社はシンガポール金融管理局から主要決済機関ライセンスの拡大承認を取得し、XRPとRLUSDを活用した決済サービスを強化しています。
その他の重要トピック──イーサリアムフサカ実装、ソラナスマホ独自通貨、テザー財務懸念、ミャンマーBTC活用
今週の主要暗号資産材料として、イーサリアム(Ethereum)の大型アップグレード「フサカ(Fusaka)」実装完了が報じられました。フサカは、ロールアップの処理能力向上、ガス代市場の適正化、およびパスキー型署名へのネイティブサポートを実現します。12月3日21時49分(UTC)にメインネットで有効化され、処理能力が桁違いに向上しました。イーサリアムの拡張性問題が大きく改善されます。
ソラナ(Solana)スマホの独自通貨発行計画も注目されました。ソラナ・モバイル(Solana Mobile)が開発するスマートフォン「Saga」や次世代機「Seeker」で使用される独自トークンの発行が計画されています。ソラナエコシステムのモバイル展開が加速しており、暗号資産のモバイルファーストの流れが鮮明です。
ステーブルコイン発行企業テザー(Tether)の財務的な安定性をめぐる懸念が今週あらためて浮上しました。きっかけは、ビットメックス(BitMEX)創業者アーサー・ヘイズ(Arthur Hayes)氏が、準備資産の価値が下落した場合に同社が深刻な問題に直面する可能性を警告したことです。一方、コインシェアーズ(CoinShares)のアナリストは「杞憂」と反論し、テザーには十分な余剰資産があると主張しています。テザーUSDT(ユーエスディーティー)は時価総額約1,400億ドル(約21兆7,000億円)の最大ステーブルコインであり、財務健全性への懸念は市場全体に影響を与える可能性があります。
ANAPホールディングス(ANAP Holdings)が主催したビットコイン特化の国際カンファレンス「BITCOIN JAPAN 2025」のサイドイベントで、軍政下ミャンマーの人権活動家がビットコインの重要性を語りました。発展途上国や独裁国家では、ビットコインが命と自由をつなぐ重要なツールとなっています。投機を超えたビットコイン本来の価値が再認識されました。ミャンマーでは軍事クーデター後、銀行システムが機能不全に陥り、現金の引き出しが制限されています。ビットコインにより、海外からの送金を受け取り、生活費や医療費を賄うことができます。検閲耐性と国境を越えた送金能力が、抑圧された人々の生命線となっています。
今週は、FRB(米連邦準備制度理事会)の量的引き締め(QT)終了、チャールズ・シュワブ(Charles Schwab)の暗号資産取引開始に関する記事も関心を集めました。シュワブは、2026年前半にビットコインとイーサリアムの現物取引サービスを開始予定と発表しており、米大手証券会社の参入が市場拡大を後押しします。
おわりに
2025年12月7日の今週まとめは、ビットコイン財務戦略企業(DAT企業)が「ダーウィン的段階」に突入し、収益モデルが崩壊しつつあるという衝撃的な分析がギャラクシーリサーチから発表された歴史的な週となりました。かつて「無限の錬金術」とも形容された株価プレミアムを活用した循環モデルが機能不全に陥り、生存競争が激化しています。投資家は「DAT企業株を買うより、ビットコインETFを買った方が良い」と判断し始めており、株価プレミアムの縮小が続いています。新しい収益源を確保できる企業のみが生き残る自然淘汰の局面です。
ストラテジーの14.4億ドル準備金確保による配当不安払拭の説明は、同社が「永久保有」戦略を維持しながら株主還元も実現する意図を明確にしました。JPモルガンやBitwiseが同社のビットコイン売却回避能力を高く評価する一方、キャンター・フィッツジェラルドは目標株価を引き下げるなど、評価が分かれています。ビットコイン価格の動向と株価プレミアムの維持が、今後の鍵となります。
JPYCの3日間で2.4万人急増とQR決済対応は、日本のステーブルコイン市場が本格的に立ち上がりつつあることを示す重要な動きです。ガス代不要のQR決済により、Web3の利便性が日常決済レベルに到達し、暗号資産が投機的な投資対象から実用的な決済手段へと転換しつつあります。MUFGの円建てMMF計画、SBI VCトレードとサッポロビールのNFT活用など、日本企業のWeb3参入が加速しています。
XRPの価格暴落とデータ好調という「ねじれた」状態は、ETF誕生による保有層変化を象徴しています。機関投資家がETFで買う一方、大口保有者が現物市場で売るという需給の歪みが生じています。しかし、XRPレジャーの流通速度が年間最高値を記録し、ネットワーク活動は活発化しており、ファンダメンタルズは好調です。市場心理が「恐怖」に染まっている今こそ、買い場である可能性があります。
イーサリアムフサカ実装、ソラナスマホ独自通貨計画、テザー財務懸念再燃、ミャンマーBTC活用、FRB QT終了、シュワブ参入など、多様な動きがありました。ミャンマーの人権活動家の証言は、投機を超えたビットコイン本来の価値を再認識させ、検閲耐性と国境を越えた送金能力が抑圧された人々の生命線となっていることを示しました。
DAT企業ダーウィン的段階、ストラテジー準備金説明、JPYC急増、XRPねじれた市場という4つの大きな流れが、暗号資産市場の構造変化を示しています。短期的な価格変動やセンチメント悪化に惑わされず、ビジネスモデルの転換、実用化の進展、保有層の変化という本質的な変化を冷静に見極め、長期的な視点で市場と向き合ってください。リスク管理を徹底し、余裕資金の範囲内で投資を行いましょう。
