2026年2月初旬、暗号資産市場は歴史的な急落に見舞われました。ビットコイン(BTC)は一時7万6000ドルを割り込み、わずか4時間で1550億円超の強制清算が発生する事態となりました。市場の混乱は暗号資産にとどまらず、伝統的な安全資産とされてきた金が直近4日間で20%下落、銀に至っては40%の大暴落を記録するなど、金融市場全体に激震が走っています。この市場の大変動により、Strategy(ストラテジー)社をはじめとするビットコイン財務戦略企業が巨額の含み損を抱える事態となり、アルトコイン市場では過去1年間で平均70%の下落という壊滅的な状況が明らかになりました。一方で香港がステーブルコインライセンスの初回交付に向けて動き出すなど、規制整備の動きも加速しています。本記事では、激動する暗号資産市場の最新状況を詳しく解説します。
市場の歴史的急落と強制清算の嵐
ビットコイン7万ドル台へ急落、年初来最安値を更新
2026年2月1日から2日にかけて、ビットコイン価格は急激な下落を記録しました。1月初旬には9万ドル台で推移していた価格は、2月1日に一時7万6000ドルを割り込み、年初来最安値を更新しました。2月2日時点では7万5500ドル前後で推移しており、市場には深刻な警戒感が広がっています。
この急落の背景には複合的な要因が絡んでいます。まず、米国を襲った冬の嵐がマイニング施設に深刻な影響を与え、ビットコインのハッシュレートが2021年以来の大幅下落を記録しました。ハッシュレートの低下はネットワークの処理能力低下を意味し、これが価格下落と相まってマイニング企業の収益を急減させています。
また、イラン情勢の悪化という地政学的リスクも市場心理を冷やす要因となりました。さらに、テクニカル分析面では「ダブルデスクロス」と呼ばれる強力な弱気シグナルが形成され、短期移動平均線と長期移動平均線がいずれも下向きにクロスする形となっています。
bitbank(ビットバンク)のアナリストは、8万ドルを割り込むとさらなる売り加速の恐れがある一方で、短期筋の含み損割合が95%超に達しており、底打ちが近い可能性も指摘しています。市場は重要な転換点を迎えていると言えるでしょう。
4時間で1550億円超の強制清算が発生
この急落局面で最も深刻だったのが、デリバティブ市場における大規模な強制清算です。わずか4時間で10億ドル(約1550億円)を超える強制清算が発生し、特にロングポジション(買いポジション)を保有していたトレーダーが大きな損失を被りました。
分散型取引所Hyperliquid(ハイパーリキッド)では、これまで多額の利益を上げていた主要トレーダー8名全員が、すべての資産を失う形で市場から退場する事態となりました。高レバレッジ取引の危険性が改めて浮き彫りになった形です。
CryptoQuant(クリプトクアント)の創業者は、ビットコインへの新規資金流入が枯渇しており、売り圧力が継続していると指摘。市場は横ばいの調整局面に突入する可能性が高いと予想しています。
金・銀の同時暴落が示す市場の異変
今回の市場混乱で特筆すべきは、伝統的な安全資産である金・銀が暗号資産と同時に暴落したことです。金は直近4日間で20%下落し、銀に至っては40%という歴史的な暴落を記録しました。
この異常事態を受けて、暗号資産市場では金に裏付けられた金トークンの取引高が急増しています。DOGE(ドージコイン)やSOL(ソラナ)の取引高を圧倒する水準に達しており、投資家が伝統的な貴金属市場からトークン化された資産へとシフトしている様子がうかがえます。
一方、『金持ち父さん貧乏父さん』の著者として知られるロバート・キヨサキ氏は、この暴落を「セール」と表現し、金・銀・ビットコインの買い増しを表明しました。長期的な価値を信じる投資家にとっては、むしろ買い場と捉える見方もあるようです。
アルトコイン市場の壊滅的状況
ビットコインの下落以上に深刻なのが、アルトコイン市場の状況です。暗号資産調査機関Delphi Digital(デルファイ・デジタル)の最新データによると、過去1年間で価格が上昇したアルトコインはわずか6%に過ぎず、平均下落率は70%に達しました。
特に深刻なのはモジュラー系プロジェクトで83%超の下落、プラットフォーム系では90%超の下落を記録しています。機関投資家の資金がビットコインに集中する傾向が強まり、アルトコインとビットコインの二極化が加速しています。
リップル(XRP)も例外ではなく、年初の2.30ドル超えから1.70ドル台へ急落。テクニカル面ではデッドクロスが形成され、さらなる下落を懸念する声が高まっています。
BTC財務戦略企業に迫る危機
Strategy社が1350億円超の含み損に転落
世界最大のビットコイン保有企業であるStrategy(ストラテジー)社が、深刻な局面を迎えています。同社は1350億円超の含み損を抱える事態となり、保有ビットコインの平均取得価格を市場価格が一時下回る状況となりました。
しかし、マイケル・セイラー会長は動じる様子を見せず、むしろ追加購入を示唆しています。価格下落局面でも買い増しを続ける同社の戦略は「ビットコイン・トレジャリー戦略」と呼ばれ、長期的な価値上昇を見込んだ投資手法です。今回の含み損は、この戦略に対する市場の大きなストレステストとなっています。
日本のメタプラネット株も400円割れ目前
日本のビットコイン財務戦略企業として知られるメタプラネットも、厳しい状況に直面しています。同社株は402円で7%超下落し、400円割れが目前に迫っています。ビットコイン価格が1162万円まで下落したことを受け、BTC NAV(純資産価値)は4079億円に縮小しました。
mNAV(市場価値に対する純資産価値の倍率)は7.42倍に低下しており、1月30日に発表された第三者割当増資の発表後も調整が続いています。同社は1枚あたり約1620万円でビットコインを取得しており、現在約1000億円規模の評価損を抱えている状況です。
一方で同社は、2025年6月28日に横浜市のぴあアリーナMMで株主総会を開催することを発表し、株主還元の姿勢を示しています。
ETH財務企業BitMineも1兆円の含み損
ビットコインだけでなく、イーサリアム(ETH)を財務資産として保有する企業も大きな打撃を受けています。ETH財務企業として知られるBitMine(ビットマイン)社のポートフォリオには、66億ドル(約1兆円)の評価損が発生しており、保有資産価値は90億ドルまで減少しました。
イーサリアムは2026年2月2日時点で約2250ドル前後で推移しており、主要なレベルを割り込む弱気な展開が続いています。ただし、興味深い動きとして、イーサリアムのステーキング市場では取引所から企業へと大規模な資金シフトが発生しています。2025年末までに上場企業によるデジタル資産財務の保有量は約700万ETHに達し、循環供給量の5.5%を超えました。
規制とライセンス整備の進展
香港が3月にステーブルコインライセンス初回交付へ
市場の混乱が続く中、香港では規制整備が着実に進んでいます。香港金融管理局(HKMA)は、2026年3月にステーブルコイン事業者ライセンスを初回交付する見通しを発表しました。現在36機関が申請しており、審査が継続中です。
このライセンス制度は、2025年8月に施行された規制枠組みに基づくものです。香港はこの制度を通じて、国際的な暗号資産ハブとしての地位強化を目指しています。ステーブルコインは暗号資産市場において重要な役割を果たしており、適切な規制の下での発行・運営が可能になることで、市場の健全な発展が期待されます。
ナイジェリアで暗号資産税務報告制度が施行
アフリカでは、ナイジェリアが暗号資産分野での規制整備を進めています。2026年1月から新たな税務管理法が施行され、暗号資産取引の報告制度が始動しました。
ナイジェリアは世界トップ3の暗号資産採用率を誇る国で、約14兆円規模の市場を有しています。新制度では、暗号資産取引所が報告の中心的役割を担い、既存の税務・本人確認システムと統合される形で運用されます。同国は税収対GDP比18%を目指す財政改革を進めており、暗号資産税制はその重要な柱の一つとなっています。
この動きはアフリカ全域への波及効果も期待されており、大陸レベルでの規制統一の契機となる可能性があります。
トランプ関連企業への投資で利益相反の懸念
規制をめぐる話題では、政治的な側面でも注目すべき動きがありました。Wall Street Journal(WSJ)の報道によると、アラブ首長国連邦(UAE)のアブダビ王室関係者が、トランプ大統領の就任直前にトランプ一族の暗号資産企業World Liberty Financial(WLFI)の株式49%を5億ドル(約775億円)で取得したことが明らかになりました。
その後、米国政府がUAEへの最先端AIチップの輸出を承認したことから、利益相反への懸念が高まっています。現在上院で審議中のクラリティ法案においても、倫理規定をめぐる対立が続いており、暗号資産業界と政治の関係性に対する監視の目が厳しくなっています。
マクロ経済とビットコインの将来展望
ドル安がビットコインを押し上げる可能性
市場では「バイ・アメリカ(bye America)」と呼ばれる脱アメリカの取引が再燃しています。市場が米ドルの安全性や保有コストを疑問視し始めており、これがビットコインにとって追い風となる可能性があります。
欧州連合(EU)の指導者たちは、グリーンランドに関連する交渉の材料として1.7兆ドル(約264兆円)規模の米国債の売却を検討しているとの報道もあります。この巨額の資金移動が実現すれば、金からビットコインへと資金が流れる4つの経路が想定されており、ビットコインが金を超える安全資産として認識される可能性も指摘されています。
代替インフレ指標が示す米国経済の実態
米国の消費者物価指数(CPI)の急速な鈍化を示す代替インフレ指標が注目を集めています。連邦準備制度理事会(FRB)の政策をめぐる不透明感が続く中、インフレ動向は暗号資産市場にも大きな影響を与える要因となっています。
インフレの鈍化は一般的に金融緩和への期待を高め、リスク資産である暗号資産にとってはポジティブな材料となりますが、現在の市場環境ではその効果が限定的となっています。
技術開発とエコシステムの進化
ヴィタリックがAI時代のクリエーター収益モデルを提唱
イーサリアム共同創設者のヴィタリック・ブテリン氏が、AI大量生成時代に適した新しいクリエーター収益モデルを提案しました。このモデルは、クリエーターDAO(分散型自律組織)と予測市場を組み合わせたもので、将来有望なガバナンスモデルの構築を目指しています。
AI技術の急速な発展により、コンテンツの大量生成が可能になった一方で、クリエーターの収益確保が課題となっています。ヴィタリック氏の提案は、ブロックチェーン技術を活用してこの問題に対処しようとする先進的な取り組みです。
JupiterがPolymarketとの統合を発表
Solana(ソラナ)基盤のDEX(分散型取引所)アグリゲーターであるJupiter(ジュピター)が、世界最大の予測市場プラットフォームPolymarket(ポリマーケット)との統合を発表しました。この統合により、ユーザーは単一のプラットフォームで予測市場取引が可能になります。
Jupiterは2025年10月にKalshi(カルシ)との提携でベータ版を既にローンチしており、予測市場機能の拡充を積極的に進めています。また、同プロジェクトはマレーシアのクアラルンプールでイベント「CatLumpurr ’26」を開催するなど、コミュニティ活動にも注力しています。
SoSoValueが独自L1チェーン上でDEXをリリース
SoSoValue(ソソバリュー)が、独自のレイヤー1ブロックチェーン「ValueChain(バリューチェーン)」上で分散型取引所「SoDEX(ソデックス)」を公開しました。このDEXでは、暗号資産ビットコインから株式・指数、永久先物まで幅広い金融商品の取引が可能です。
従来のDEXが暗号資産のみを扱うことが多かった中、伝統的な金融商品も取り扱える点が特徴です。これは、暗号資産市場と伝統的な金融市場の融合を示す動きとして注目されます。
JPYCの流通量は回復も保有者数は減少
日本円連動型ステーブルコイン「JPYC(ジェーピーワイシー)」の最新オンチェーンデータによると、市場流通量が明確な回復傾向にある一方で、保有者数が減少を続けている実態が明らかになりました。2月2日時点のデータでは、運営保有分を除いた総流通量が約4億1900万円まで回復しています。
流通量の回復と保有者数の減少という対照的な動きは、少数の大口保有者による利用が増加している一方で、小口ユーザーの離脱が続いていることを示唆しています。一方で、JPYCのレンディングサービスでは年利6%での運用が可能になり、HashPort Wallet(ハッシュポート・ウォレット)への対応も進むなど、利便性の向上が図られています。
おわりに
2026年2月初旬の暗号資産市場は、ビットコインの7万ドル台への急落、金・銀の同時暴落、そして4時間で1550億円超の強制清算という歴史的な混乱に見舞われました。Strategy社やメタプラネットといったビットコイン財務戦略企業が巨額の含み損を抱える一方で、アルトコイン市場では過去1年間で平均70%下落という壊滅的な状況が明らかになりました。
しかし、こうした市場の混乱の中にあっても、香港のステーブルコインライセンス制度やナイジェリアの税務報告制度など、規制整備は着実に進んでいます。また、ヴィタリック氏のAI時代のクリエーター収益モデル提案や、JupiterとPolymarketの統合など、技術革新とエコシステムの進化も継続しています。
短期的には厳しい市場環境が続く可能性が高いものの、ドル安による資金流入の可能性や、長期的な技術発展への期待も根強く残っています。ロバート・キヨサキ氏のように、この下落局面を買い場と捉える投資家も存在します。
暗号資産市場は今、重要な転換点を迎えています。市場参加者の皆様には、冷静に状況を見極め、リスク管理を徹底した上で投資判断を行っていただきたいと思います。引き続き、最新の市場動向と規制の動きを注視していくことが重要です。
