2025年11月26日、金融庁が暗号資産規制の報告書案を公開しました。資金決済法から金商法へ移管し、インサイダー取引規制や課徴金制度を新設。一方、暗号資産交換業者の販売所誘導に懸念が指摘され、最良執行義務への言及もありました。
MSCI(モルガン・スタンレー・キャピタル・インターナショナル)が暗号資産保有企業の指数除外を検討中で、ストラテジーのマイケル・セイラー氏が猛反論。メタプラネットも対象リストに含まれる可能性があります。
メタプラネットは約203億円(1億3,000万ドル)の借入れを実施。JPモルガンはビットコイン半減サイクルに合わせた仕組債を発行します。本稿では、金融庁規制改革、MSCI指数除外問題、メタプラネット借入、JPモルガン仕組債、予測市場動向、ETF展開、銀行参入、市場分析について解説します。
金融庁「販売所誘導」に懸念表明、最良執行義務に言及 ── 金商法移行でインサイダー規制・課徴金新設、銀行参入解禁
金融庁が金融審議会ワーキンググループで暗号資産規制の報告書案を公開しました。資金決済法から金商法へ移管し、インサイダー取引規制や課徴金制度を新設。銀行子会社の参入も解禁します。一方、暗号資産交換業者の販売所誘導に懸念が指摘され、最良執行義務への言及もありました。
報告書案の主要ポイントは以下の通りです。第一に、金商法への移管です。暗号資産規制を資金決済法から金融商品取引法へ移行させることで、証券市場と同等の規制体系を適用します。これにより、機関投資家の参入障壁が下がり、市場の成熟が期待されます。
第二に、インサイダー取引規制の導入です。未公表の重要情報を利用した取引を禁止し、市場の公正性を確保します。株式市場と同様の規制により、投資家保護が強化されます。課徴金制度も新設し、違反者への罰則を強化します。
第三に、銀行グループ子会社の参入解禁です。現行制度では制限されていた銀行グループ本体による暗号資産交換業への参入が可能になります。金融機関の豊富な資本と信頼性を活用した暗号資産サービスの提供が期待されます。
第四に、販売所誘導への懸念です。報告書案には「暗号資産交換業者の販売所誘導に対する懸念が指摘されている」と記載されています。取引所取引より手数料が高い販売所へ顧客を誘導する行為が問題視されており、最良執行義務の導入が検討されています。
最良執行義務とは、顧客の注文を最も有利な条件で執行する義務です。販売所のスプレッド(売買価格差)が取引所より大きい場合、業者は取引所での執行を優先すべきとされます。この義務化により、顧客は不利な条件での取引を強いられるリスクが減少します。
座長は「お墨付きを与えるものではない」と強調し、規制強化と業界の健全な発展のバランスを取る姿勢を示しました。事業継続性など「宿題」を抱えつつ金商法へ移行する形となります。
また、金融庁は暗号資産交換業者に対し、不正流出などの事案に備えて責任準備金の積み立てを義務付けることも明らかにしました。投資家保護をさらに強化します。
MSCI指数除外問題、セイラー氏が猛反論 ── メタプラネットも対象、DAT企業に逆風
MSCI(モルガン・スタンレー・キャピタル・インターナショナル)が暗号資産を主要な事業資産として保有する企業を同社の株式インデックスから除外する検討を進めています。ストラテジー(Strategy)のマイケル・セイラー会長が猛反論し、メタプラネットも対象リストに含まれる可能性があります。
セイラー氏の反論内容は以下の通りです。「ストラテジーはファンドではなく、上場事業会社だ。ビットコインを財務戦略の一環として保有しているだけで、事業活動を行っている。MSCIの基準は不当だ」と主張しています。
MSCIの除外案は、暗号資産を大量保有する企業が実質的に暗号資産ファンドとして機能しているとの見方に基づいています。株価がビットコイン価格に連動し、事業活動よりも暗号資産保有が価値の主要源泉となっている企業を問題視しています。
メタプラネットも対象リストに含まれる可能性があります。同社は積極的なビットコイン買い増し戦略を展開しており、株価はビットコイン価格と強い相関を示しています。MSCI指数から除外されれば、インデックスファンドによる保有が減少し、株価への悪影響が懸念されます。
この問題は、DAT(デジタル・アセット・トレジャリー)企業のビジネスモデルそのものへの疑問を投げかけています。ビットワイズ(Bitwise)CIOは「プレミアムを維持できるのは一部のみで、多くはディスカウント価格で取引される」と予想しており、DAT企業の淘汰が進む可能性があります。
一方、ビットコインETFの普及により、投資家は企業株を通じた間接保有ではなく、ETFを通じた直接保有を選択できるようになりました。これがDAT企業のプレミアム崩壊につながっています。
メタプラネット203億円借入、BTC追加購入と自社株買いへ ── ビットコイン担保のレバレッジ戦略
メタプラネットが約203億円(1億3,000万ドル)の借入れを実施したことを発表しました。調達資金はビットコイン追加取得やビットコインインカム事業、市場環境に応じた自己株式取得に充当する予定です。
この借入は10月28日に公表されたクレジットファシリティ契約に基づくものです。ビットコインを担保とした資金調達により、レバレッジを効かせた戦略を展開します。借入金利は市場金利に連動し、ビットコイン価格上昇による利益が金利コストを上回ることを前提としています。
メタプラネットの戦略は、ストラテジーなど他のDAT企業と同様、ビットコイン価格上昇による株価プレミアムを狙うものです。ビットコインを買い増すことで、1株あたりのビットコイン保有量を増やし、株価を押し上げる効果を期待しています。
自社株買いの言及も注目されます。市場環境に応じて自己株式を取得することで、1株あたりの価値を高める戦略です。株価が割安な局面では自社株買いを実施し、株価上昇時にはビットコイン買い増しに注力する柔軟な対応が可能になります。
ただし、MSCI指数除外リスクに直面しています。除外されればインデックスファンドによる保有が減少し、株価への悪影響が懸念されます。また、ビットコイン価格下落時には借入返済が困難になるリスクもあります。
JPモルガン、IBIT連動仕組債発行 ── 1年後16%固定リターン、30%超下落時は全損の高リスク商品
JPモルガン(JPMorgan)がブラックロック(BlackRock)のビットコインETF「IBIT」に連動する仕組債を提案しました。1年後に16%の固定リターンを保証し、2028年には投資額の1.5倍を上限なく受け取れる設計ですが、30%超の下落時は損失を全額負担する高リスク商品となります。
この仕組債の特徴は以下の通りです。第一に、1年後の固定リターンです。満期時にIBIT価格に関わらず、投資額の16%を受け取れます。ただし、これは元本保証ではなく、下落時の損失と相殺される仕組みです。
第二に、2028年の上限なしリターンです。3年後の満期時、IBIT価格が上昇していれば、投資額の1.5倍を下限として、上限なく利益を受け取れます。ビットコイン価格が大幅上昇すれば、レバレッジ効果により大きな利益が期待できます。
第三に、30%超下落時の全損リスクです。IBIT価格が投資時点から30%以上下落した場合、損失を全額負担します。元本割れのリスクが非常に高い商品です。
この商品設計は、ビットコインの半減サイクルに合わせたものです。ビットコインは4年周期で半減期を迎え、その後価格が上昇する傾向があります。2024年4月に半減期を迎えたことから、2028年までの上昇を見込んだ設計となっています。
JPモルガンがこのような高リスク商品を提供する背景には、機関投資家のビットコイン投資需要の高まりがあります。直接ビットコインやETFを保有できない投資家向けに、仕組債という形で間接的な投資機会を提供します。
ポリマーケット米国復帰、ロビンフッド予測市場新設 ── 2035年に955億ドル規模、CFTC規制下で成長
予測市場大手ポリマーケット(Polymarket)が米CFTC(商品先物取引委員会)の承認を受け、3年ぶりに米国市場に正式復帰しました。ロビンフッド(Robinhood)もサスケハナ(Susquehanna)と提携し、予測市場向けデリバティブ取引所を新設。2026年運営開始を目指します。市場規模は2035年までに955億ドル(約14兆7,205億円)に達する見込みです。
ポリマーケットの米国復帰は、2022年の罰金処分後の大きな転機です。QCX買収とICE(インターコンチネンタル取引所)からの投資を経て、完全規制下での事業再開となります。米国では政治イベントやスポーツなど幅広いテーマで予測市場を提供できるようになります。
ロビンフッドの参入は、予測市場の主流化を示しています。CFTC認可の先物取引所を買収し、2026年の独自取引所運営を目指します。ロビンフッドの1,300万ユーザーにリーチできることで、予測市場の裾野が大きく広がります。
米CFTCのファム代理委員長が「CEOイノベーション・カウンシル」参加者の候補者推薦を呼びかけました。暗号資産や予測市場の規制策定に向け、業界リーダーを募集しています。規制当局が業界との対話を重視する姿勢を示しています。
ETF動向 ── フランクリン・テンプルトンSOL上場間近、ビットワイズDOGE承認、VanEck BNBステーキング撤回
運用資産255兆円を誇るフランクリン・テンプルトン(Franklin Templeton)がソラナETFのForm 8-Aを提出し、取引開始が目前に迫っています。既存のソラナETFは20日連続で純流入を記録し、累計858億円の資金が流入しています。
ニューヨーク証券取引所がビットワイズのドージコインETFの上場を承認しました。水曜日にも取引が開始される見込みで、グレースケール(Grayscale)とREX-オスプレイ(REX-Osprey)に続く3番目のドージコインETFとなります。ただし、グレースケールのドージコインETF初日の出来高は予想を下回る結果となりました。
VanEck(ヴァンエック)が米SECに提出したBNB現物ETFの修正届出書で、当初予定していたステーキング機能を撤回しました。BNBの有価証券分類をめぐる規制リスクが背景にあるとみられます。ソラナETFではステーキングを提供しているにもかかわらず、BNBでは対照的な判断となりました。
銀行の暗号資産参入加速 ── USバンコープがステラでステーブルコイン実験、スタンダードチャータードがカストディ
米国第5位の銀行USバンコープ(U.S. Bancorp)がステラ(Stellar)ブロックチェーン上で独自のステーブルコインをテストしています。資産凍結機能などのセキュリティを評価し、バンク・オブ・アメリカ(Bank of America)やシティ(Citi)に続いてデジタル資産への取り組みを拡大しています。
スタンダードチャータード銀行(Standard Chartered)が21シェアーズ(21Shares)の暗号資産カストディアンに選定されました。機関投資家の需要に対応し安全な保管サービスを提供します。様々な暗号資産企業とも提携を進めており、伝統金融の暗号資産分野への参入が一段と進んでいます。
テキサス州政府、ブラックロックBTC ETFに500万ドル投資 ── 州政府レベルのビットコイン採用が加速
テキサス州政府がビットコインへの大きな一歩を踏み出しました。ブラックロックのビットコイン上場投資信託(ETF)を通じて500万ドル(約7億7,500万円)分の株式を購入し、さらに自己保管によるビットコイン購入として追加の500万ドルを準備しています。
州政府レベルのビットコイン採用は、機関投資家の参入を象徴しています。年金基金などの長期資金が流入することで、市場の安定化が期待されます。
ビットコイン市場分析 ── ショートスクイーズ可能性、8万ドル割れリスク、需要回復目前との見方も
ビットコインのマイナス資金調達率と大量のショート流動性ゾーンは、9万ドル(約1,395万円)へのショートスクイーズ発生の可能性を示しています。ビットフィネックス(Bitfinex)は需要回復が目前と指摘していますが、アナリストはさらなるレバレッジ精算により8万ドル(約1,240万円)を割り込むリスクも警告しています。
ビットコインの11月の下落は、ほぼすべてが米取引時間中に発生しており、ハイベータのハイテク株の代替として取引されていることを示唆しています。
おわりに
2025年11月26日は、日本の暗号資産市場にとって転換点となる一日でした。金融庁が販売所誘導に懸念を示し、最良執行義務に言及したことは、投資家保護を真剣に考える姿勢の表れです。これまで曖昧だった取引所と販売所の使い分けが明確化され、業者が手数料の高い販売所へ誘導する行為に歯止めがかかります。金商法移行によるインサイダー規制導入は、市場の透明性を大きく向上させるでしょう。
一方、MSCI指数除外問題は、DAT企業のビジネスモデルそのものへの疑問を突きつけています。セイラー氏の猛反論にもかかわらず、ビットコインETFの普及により企業株を通じた間接投資の魅力が薄れている現実は否定できません。メタプラネットの203億円借入は積極戦略の継続を示しますが、指数除外リスクとビットコイン価格下落時の返済リスクという二重の試練に直面しています。
JPモルガンの仕組債は、伝統的金融機関がビットコインを本格的な投資商品として扱い始めた象徴です。30%超下落時の全損というリスクはありますが、機関投資家向けに洗練された投資手段を提供する動きは加速するでしょう。ポリマーケット米国復帰とロビンフッド参入による予測市場の2035年955億ドル規模への成長見通しは、暗号資産が単なる投機対象から実用的な金融インフラへと進化していることを示しています。
テキサス州の500万ドルBTC投資は、州政府レベルでの採用が現実になったことを意味します。銀行のステーブルコイン実験やカストディ参入も、伝統金融と暗号資産の融合が不可逆的な流れであることを裏付けています。
暗号資産市場は今、規制の成熟、機関投資家の本格参入、実用化の加速という三つの大きな波が同時に押し寄せています。短期的な価格変動に一喜一憂するのではなく、この構造変化の意味を理解し、長期的な視点で市場と向き合うことが重要です。リスクを正しく認識し、余裕資金の範囲内で、あなた自身の投資戦略を貫いてください。
