2025年11月8日、暗号資産市場に深刻な信用不安が広がりました。ステーブルコインUSDXブロックチェーン上で発行されるステーブルコインの一つで、米ドルに価値が連動するように設計されている。DeFi(分散型金融)などで利用される。詳しく見る →の担保不足によるデペッグ(Depeg)ステーブルコインが、連動を目指している法定通貨(主に米ドル)などの基準価格から、大きく乖離してしまうこと。詳しく見る →が複数のDeFiプロトコルに波及し、ビットコインは再び一時10万ドルを割り込みました。合成型ステーブルコインUSDXは大幅デペッグを起こし0.6ドルまで下落、バランサー(Balancer)複数の暗号資産(トークン)を預け入れて、自動で売買(スワップ)と価格調整を行う自動マーケットメーカー(AMM)および分散型取引所(DEX)のこと。詳しく見る →攻撃の影響で連鎖的な危機が広がっています。
一方、JPモルガン(JPMorgan)アメリカ合衆国を拠点とする世界最大級の総合金融サービス会社(金融持株会社)。投資銀行業務、資産運用、商業銀行業務などを手広く展開。詳しく見る →が第3四半期にブラックロック(BlackRock)アメリカに本拠を置く、世界最大級の資産運用会社。上場投資信託(ETF)の「iシェアーズ(iShares)」シリーズや、リスク管理システム「アラジン(Aladdin)」の提供で知られる。詳しく見る →のビットコインETFを207万株追加し、保有総数は528万株となりました。6月から64%増加しており、機関投資家の関心の高さを示しています。
ストラテジー(Strategy)ビジネスインテリジェンス(BI)ソフトウェアを提供するアメリカの企業。旧社名「マイクロストラテジー社」として知られ、ビットコイン(BTC)を企業資産として大量保有していることで著名。詳しく見る →は10%利回りのSTRE優先株ストラテジー社(旧マイクロストラテジー社)が発行した永久劣後型転換優先株(Preferred Stock)のこと。同社のビットコイン購入資金調達のために発行された株式の一種。詳しく見る →を1株80ユーロで発行し、7億1500万ドル(約1100億円)を調達する予定です。当初計画の2倍超となる775万株を発行し、資金はビットコイン取得に充てられます。
カザフスタンは最大10億ドル規模の国家暗号資産準備基金を2026年初頭までに設立する計画を発表しました。押収資産と国営マイニングビットコインなどのブロックチェーンネットワークにおいて、新しい取引記録(トランザクション)を検証・承認し、新しいブロックを生成する作業のこと。この作業を行った報酬として新規発行された暗号資産が付与される。詳しく見る →収益を原資としてETF特定の株価指数や商品、債券などの資産に連動するように運用され、証券取引所に上場している投資信託のこと。株式と同様にリアルタイムで売買が可能。詳しく見る →や関連企業に投資する方針です。
本稿では、USDXデペッグの影響、機関投資家の動向、企業戦略、市場分析について詳しく解説します。
ステーブルコインUSDXデペッグでDeFi信用不安 ── 0.6ドルまで下落、連鎖危機広がる
暗号資産ビットコインは5日以来、再び一時10万ドルを割り込みました。直接的な要因は、ステーブルコインUSDXの担保不足によるデペッグが複数のDeFiプロトコルに波及し、市場全体に信用不安を広げたことです。
合成型ステーブルコインUSDXは大幅デペッグを起こし、本来1ドルであるべき価格が0.6ドルまで下落しました。バランサー(Balancer)への攻撃の影響で連鎖的な危機が広がっています。デペッグとは、ステーブルコインが本来連動すべき法定通貨から乖離することを指します。
米FRBのミラン理事はドル連動型ステーブルコインを巨大な成長分野と評価していましたが、合成型ステーブルコインUSDXの大幅デペッグは、担保の安全性と透明性の重要性を改めて浮き彫りにしました。
分散型金融リクイディティプロバイダー金融市場や取引所において、継続的な売買注文を提示することで、市場に流動性(取引のしやすさ)を供給する役割を担う機関や個人のこと。詳しく見る →のエリクサー(Elixir)は、今週初めに発生したストリーム・ファイナンス(Stream Finance)の9300万ドルの損失の影響を受け、独自の合成ステーブルコインdeUSDDeFi(分散型金融)プロトコルであるJarvis Networkが発行する、ユーロ圏を中心とした法定通貨に裏付けられた資産のバスケットに連動することを目指す合成資産(Synthetics)の一種。詳しく見る →のサポートを停止しました。DeFiプロトコル間の相互依存関係により、一つのプロトコルの問題が連鎖的に他のプロトコルに波及する脆弱性が明らかになりました。
この事態は、ステーブルコイン市場における信頼性の重要性を示しています。法定通貨担保型のステーブルコインと異なり、合成型は複雑な担保構造を持つため、市場の急変時に脆弱性を露呈しやすい特徴があります。投資家は、ステーブルコインの種類と担保構造を十分に理解した上で利用する必要があります。
JPモルガンがビットコインETF保有64%増 ── 機関投資家の関心継続
JPモルガンが第3四半期にブラックロックのビットコインETFを207万株追加し、保有総数は528万株となりました。6月から64%増加しており、機関投資家の暗号資産への関心の高さを示しています。
JPモルガンのジェイミー・ダイモンCEOは従来、ビットコインに批判的な立場を取ってきましたが、同社は顧客の需要に応える形でビットコインETFの保有を大幅に増やしています。これは、機関投資家がビットコインを投資ポートフォリオの一部として受け入れつつあることを示しています。
ブルームバーグアメリカに拠点を置く、世界的な経済ニュースおよび金融情報サービス企業のこと。特に、金融プロフェッショナル向けの情報端末「ブルームバーグ ターミナル」の提供で知られる。詳しく見る →のシニアETFアナリスト、エリック・バルチュナス氏によれば、ビットコイン価格が10月の歴史的な市場急落で20%下落したにもかかわらず、ビットコインETFからの資金流出は10億ドル未満にとどまりました。これは、ETF投資家が長期的な視点を持っており、短期的な価格変動に動じない姿勢を示しています。
ストラテジーが1100億円調達へ ── STRE優先株を1株80ユーロで発行
ストラテジーが10%利回りのSTRE優先株を1株80ユーロで発行し、7億1500万ドル(約1100億円)を調達する予定です。当初計画の2倍超となる775万株を発行し、資金はビットコイン取得に充てられる見込みです。
ストラテジーは欧州市場での資金調達を加速しており、ユーロ建ての優先株発行により、ビットコイン購入資金の調達ルートを多様化しています。10%という高い利回りは、投資家にとって魅力的であり、資金調達が成功する可能性が高いと見られます。
同社は、ビットコイン財務戦略を推進する代表的な企業であり、今回の大規模調達により保有ビットコイン量をさらに拡大する見通しです。
ビットコイン10万ドルサポート攻防 ── クジラ売りと小口買いの対立
CryptoQuant暗号資産市場のオンチェーンデータと市場指標を提供する韓国のデータ分析企業。取引所への入出金量やマイナーの動向など、投資判断に役立つ独自のデータ分析サービスを提供。詳しく見る →が最新市場レポートで、暗号資産ビットコインが10万ドル付近の重要サポートレベルで推移していると指摘しました。複数の指標から現在の状況を分析しています。
ビットコインアナリストのPlanC氏は、ビットコインの調整を警告する一部のトレーダーは、市場の客観的分析というより自己都合に基づいて発言している可能性があると指摘しました。下落を煽る人々の多くは願望バイアスがあるとの見方です。
サンティメント(Santiment)暗号資産市場のセンチメント(投資家心理)およびオンチェーンデータを分析するデータフィードプラットフォーム。市場参加者の感情やソーシャルメディアの動向を追跡し、独自の指標を提供する。詳しく見る →の分析によると、個人投資家が買い増しを進める一方で、クジラが売却を進める動きが強まっています。過去のパターンから見れば、こうした乖離は価格下落の前兆となる可能性があるとされています。小口投資家が押し目買いをする一方、大口投資家が利益確定売りを進める構図です。
グラスノード(Glassnode)ブロックチェーンと暗号資産市場のオンチェーンデータ分析を専門とするスイスの企業。マイナーや大口投資家の動向など、市場の基礎的な情報を提供するプラットフォーム。詳しく見る →のレポートによると、市場が強気基調を取り戻すには2つの明確な転換点が必要とされています。一つは米国現物ビットコインETFへの資金流入の回復、もう一つは長期保有者の売却圧力の緩和です。長期保有者も下落局面で売却を進めており、ビットコイン市場に疲労感が見られます。
暗号資産財務企業に圧力 ── XRP保有企業120億円含み損、トランプメディア84億円赤字
暗号資産XRPを企業の財務資産として保有するエバーノース(Evernorth)アメリカの大手ヘルスケア企業シグナ(Cigna)グループ傘下の、ヘルスサービス部門のこと。薬局給付管理(PBM)や、専門薬局、行動健康サービスなどを統合的に提供する。詳しく見る →が約2週間半で7900万ドル(約120億円)の含み損を抱えています。メタプラネット(Metaplanet)東京証券取引所スタンダード市場に上場する日本の企業。事業戦略をビットコインの保有・運用に転換し、ビットコインを主要な準備資産として大量に積み増す「日本版マイクロストラテジー」として注目される。詳しく見る →など他の暗号資産保有企業も大幅な含み損に直面しています。
メタプラネット株は取引終了間際に異変が発生し、420円へ高騰する場面がありました。終値は前日比9円安の415円でしたが、市場の注目度の高さを示しています。
トランプメディア(Trump Media)ドナルド・トランプ前大統領によって設立されたメディア・テクノロジー企業。主な事業として、独自のソーシャルメディアプラットフォーム「トゥルース・ソーシャル(Truth Social)」を運営。詳しく見る →が第3四半期に5480万ドル(約84億円)の純損失を計上し、3四半期連続の赤字となりました。保有ビットコインの価値は4800万ドル(約73億円)減少しましたが、オプション収入で1530万ドルを獲得しました。
暗号資産を財務戦略に組み込む企業が増えていますが、価格変動リスクへの対応が課題となっています。企業は保有資産の含み損を抱えながらも、長期的な価値上昇を見込んで保有を継続する判断を迫られています。
カザフスタンが国家暗号資産準備基金創設へ ── 最大10億ドル規模
カザフスタンが最大10億ドル規模の国家暗号資産準備基金を2026年初頭までに設立する計画を発表しました。押収資産と国営マイニング収益を原資としてETFや関連企業に投資する方針です。
カザフスタン政府は、政府が保有する外貨・金準備の一部を暗号資産に転換し、政府の暗号資産準備ファンドを創設する計画を検討しています。これは、国家レベルで暗号資産を戦略的資産と位置づける動きであり、他国にも影響を与える可能性があります。
カザフスタンはビットコインマイニングの主要拠点の一つであり、豊富な電力資源を背景にマイニング事業が盛んです。国営マイニングの収益を暗号資産準備基金に充てることで、持続可能な財源を確保する狙いがあります。
イーサリアム3000ドルで下げ止まり ── オンチェーン指標が強気転換示唆
イーサリアム(ETH)スマートコントラクト機能を持ち、分散型アプリケーション(dApps)やNFTの構築基盤となるブロックチェーンプラットフォームのこと。このプラットフォーム内で使用される暗号資産を「イーサ(Ether)」という。詳しく見る →は直近の売り圧力が3000ドルで止まり、強気派がこの水準を積極的に防衛しました。現在は3300ドル超まで回復しており、オンチェーンデータとテクニカル指標の両面から見ても、さらなる下落の可能性は低下しています。
イーサリアムのバリデータ(Validator)ブロックチェーンネットワークにおいて、新しい取引の検証(バリデーション)と承認を行い、ブロックの生成または承認に参加するノード(参加者)のこと。ネットワークの健全性とセキュリティ維持に貢献。詳しく見る →参加待ちが増加しています。The Blockが長期視点の投資家増加が示唆されると指摘しました。ステーブルコインのインフラとしての期待も高まっており、イーサリアムの将来性への信頼が強まっています。
XRP急落もゴールデンクロス出現 ── リップル社はIPO否定
リップル(Ripple)国際送金や銀行間の決済を迅速かつ低コストで行うことを目指した、リアルタイム決済システムと、そのシステムを運営するアメリカのテクノロジー企業(Ripple Labs)のこと。詳しく見る →が看板イベント「Swell」を開催した直後、XRPの価格は急落し、イベント期間中に見られた短期的な上昇分のほとんどを失いました。2ドル以下への下落となる可能性も指摘されています。
一方、テクニカル分析では短期的なゴールデンクロステクニカル分析で使われる買いシグナルの一つ。短期の移動平均線が、長期の移動平均線を下から上に突き抜ける現象のことで、相場の上昇トレンドへの転換を示唆。詳しく見る →が確認されており、反発の兆しも見られます。ただし、ゴールデンクロスがダマシとなる可能性に注意が必要です。
リップル社のモニカ・ロング社長が株式公開の計画はないと再び明言しました。同社は企業価値400億ドルで5億ドルの資金調達を完了し、十分な資本があると説明しています。SEC訴訟アメリカ証券取引委員会(SEC)が、暗号資産が未登録の「証券」であるとして、その発行企業や取引所に対して提起する法的な訴訟のこと。暗号資産の規制と法的地位の明確化に大きな影響を持つ。詳しく見る →終結後も上場せず、非公開企業として事業を継続する方針です。
Zcash急騰で時価総額100億ドル突破 ── プライバシー回帰の潮流
プライバシー暗号資産Zcash(ジーキャッシュ)高い匿名性を特徴とする暗号資産のこと。ゼロ知識証明(Zero-Knowledge Proofs)という技術を用い、取引内容を公開することなく、その正当性をネットワーク上で証明できる仕組みを持つ。詳しく見る →が過去1カ月で約4倍上昇し、時価総額100億ドルを突破しました。2018年以来初めて600ドルに到達し、暗号資産トップ20に返り咲きました。
アーサー・ヘイズ(Arthur Hayes)暗号資産(仮想通貨)デリバティブ取引所BitMEX(ビットメックス)の共同創業者兼元CEOのこと。大胆な市場分析や、マクロ経済と暗号資産市場に関する辛辣な評論で知られる。詳しく見る →氏らの支持やグレースケール(Grayscale)暗号資産(仮想通貨)に特化した、アメリカのデジタル資産運用会社のこと。ビットコインなどの暗号資産を裏付けとした、機関投資家向けの投資信託商品の提供で知られる。詳しく見る →関連商品の人気拡大が上昇を後押ししています。プライバシー回帰が生んだ市場の潮流として、ゼロ知識証明ある情報が真実であることを証明したい側(証明者)が、その情報自体を一切明かさずに、受け手(検証者)に真実であると納得させることができる暗号技術のこと。詳しく見る →技術の進化と規制当局の姿勢軟化が背景にあります。
その他の動向 ── マイニング企業のAI転換、NY市長選
ビットコインマイニング大手マラソン(MARA)アメリカに拠点を置く、ビットコイン(Bitcoin)のマイニング(採掘)を主事業とするテクノロジー企業のこと。ナスダック市場に上場し、大規模なマイニング施設の運営とビットコインの保有を行う。詳しく見る →が第3四半期決算で運営方針の変更を発表しました。今後はマイニングしたビットコインの一部を売却し、運転資金に充てるとしています。マイニング事業からAI事業への注力が示唆されており、業界の構造変化を象徴しています。
ゾーラン・マムダニ暗号資産業界の人物。ブロックチェーンベースのオープンソース型メッセージングプラットフォーム「Status(ステータス)」の共同創業者兼CEOを務める人物。詳しく見る →氏のニューヨーク市長選挙勝利は、市の暗号資産セクターに緊張をもたらしています。同氏はウォール街やデジタル資産による富に批判的であり、その政策が業界に与える影響について懸念が広がっています。
コインベース(Coinbase)アメリカに拠点を置く、世界最大級の暗号資産(仮想通貨)取引所およびカストディアン(資産保管企業)のこと。ナスダック市場に上場しており、個人投資家から機関投資家まで幅広くサービスを提供する。詳しく見る →は複数の銘柄を同社の上場ロードマップに新たに追加しました。Asterなど上場検討銘柄が増えています。
おわりに
2025年11月8日は、ステーブルコインUSDXのデペッグが引き起こしたDeFi信用不安により、ビットコインが再び10万ドルを割り込む展開となりました。合成型ステーブルコインの脆弱性が露呈し、市場全体に連鎖的な危機が広がりました。ステーブルコインの種類と担保構造を理解することの重要性が改めて認識されました。
一方、JPモルガンのビットコインETF保有が64%増加したことは、機関投資家の関心が継続していることを示しています。ストラテジーの1100億円調達、カザフスタンの国家暗号資産準備基金創設は、企業や国家レベルでのビットコイン保有戦略が加速していることを示しています。
暗号資産財務企業は含み損に直面していますが、長期的な視点での保有を継続しています。イーサリアムは3000ドルで下げ止まり、バリデータ参加待ちの増加が将来性への信頼を示しています。Zcashの急騰はプライバシー重視の市場トレンドを反映しています。
マイニング企業のAI事業への転換、NY市長選での反暗号資産候補の勝利は、業界の構造変化と政治リスクを示唆しています。市場は短期的な調整と信用不安に直面していますが、機関投資家の参入と国家レベルの戦略は継続しています。
暗号資産投資には価格変動リスク、信用リスク、技術リスクなど様々なリスクが伴います。特にステーブルコインやDeFiプロトコルの利用には、担保構造やリスク管理体制を十分に理解することが重要です。投資判断は自己責任で行い、余裕資金の範囲内で慎重に検討してください。市場の変動に一喜一憂せず、長期的な視点を持ち続けましょう。
※暗号資産投資には価格変動リスク、流動性リスク、信用リスク、技術リスク、規制リスクなど様々なリスクが伴います。特にDeFiプロトコルやステーブルコインの利用には、スマートコントラクトのリスクや担保構造の理解が必要です。投資判断は必ずご自身の責任で行い、余裕資金の範囲内で慎重に検討してください。過去の実績は将来の成果を保証するものではありません。
