米国ビットコイン準備金設立の衝撃 ── 13カ国が準備金競争に参戦【11月1日の暗号資産市場の動向まとめ】

2025年11月1日、暗号資産市場は歴史的な転換点を迎えました。

米国で「戦略的ビットコイン準備金設立法案」が下院で可決され、ビットコインが正式に国家資産として認められる時代が到来しました。

トランプ大統領は押収済みビットコインを保有し続ける方針を示し、新規購入は行わないものの、国家がビットコインを戦略的資産として位置づけるという画期的な決定を下しました。

この動きは米国だけにとどまりません。

ポーランド大統領候補がビットコイン国家備蓄を公約に掲げ、ドイツでも準備金設立の提案が出されるなど、世界13カ国以上がビットコイン準備金を検討しています。

国家間での「ビットコイン準備金競争」が本格化しつつあります。

規制面でも大きな進展がありました。

米国でステーブルコイン規制法案「ジーニアス法」が成立し、銀行によるステーブルコイン発行が容認されました。これにより、ステーブルコイン市場の制度的基盤が確立されます。

企業戦略では、テスラが11億ドル相当のビットコインを保有し続けていることが判明し、マイクロストラテジーは総保有額11兆円超に達しました。

ビットコインETFは4日連続で資金流入を記録し、総額は4億ドルを超えています。

市場ではビットコインが11万2000ドル台で堅調に推移し、アナリストは年末までに13万ドル到達の可能性を指摘しています。本稿では、これらの歴史的な動きを詳細に解説します。


目次

米国規制・政策の大転換 ── 戦略的ビットコイン準備金設立、ステーブルコイン法成立

2025年11月1日、米国で戦略的ビットコイン準備金設立法案が下院で可決されました。

この法案は、米国政府が押収したビットコインを国家資産として管理することを定めるもので、トランプ大統領が署名すれば正式に法律として成立します。

トランプ大統領は「戦略的ビットコイン準備金」の設立を発表し、新規購入は行わず、既に押収済みの資産を保有し続ける方針を明らかにしました。

米国政府は過去の犯罪捜査で押収したビットコインを多数保有しており、その総額は数十億ドル規模に達すると推定されています。

これらを売却せずに保有し続けることで、ビットコインを金や外貨準備と同様の戦略的資産として位置づけるという歴史的な決断です。

この決定の意義は極めて大きいと言えます。これまで米国政府は押収したビットコインをオークションで売却してきましたが、今後は国家の資産として長期保有する方針に転換します。

これは、米国政府がビットコインの長期的な価値を認めたことを意味し、他国にも大きな影響を与える可能性があります。

並行して、米国でステーブルコイン規制法案「ジーニアス法」が成立しました。

この法律は、銀行によるステーブルコイン発行を容認するもので、これまで規制の不透明性から参入を躊躇していた銀行が、正式にステーブルコイン事業に参入できる法的基盤が整いました。

ジーニアス法の成立により、JPモルガン・チェース、バンク・オブ・アメリカ、ウェルズ・ファーゴなどの大手銀行がステーブルコイン発行を検討する可能性があります。

銀行が発行するステーブルコインは、既存の金融システムと統合されやすく、より広範な利用が期待されます。

規制当局の人事でも動きがありました。

仮想通貨に友好的なSEC委員長候補としてテレサ・ギルマン氏が有力視されています。

現在のSECは暗号資産業界に対して厳しい姿勢を取ってきましたが、ギルマン氏が委員長に就任すれば、より業界に寄り添った規制運営が期待されます。

これらの政策転換は、米国が暗号資産を敵視する姿勢から、戦略的に活用する姿勢へと180度転換したことを示しています。

トランプ政権下で進められるこの方針は、2026年以降の暗号資産市場の基調を決定づける重要な要素となるでしょう。


国家によるビットコイン戦略の世界的拡大 ── 13カ国以上が準備金検討、国家間競争が激化

米国の動きを受けて、世界各国で「ビットコイン準備金競争」が加速しています。

現在、13カ国以上がビットコイン国家準備金の設立を検討しており、国家がビットコインを戦略的資産として保有する動きが世界的なトレンドとなりつつあります。

欧州では、ポーランドの大統領候補がビットコイン国家備蓄を公約に掲げ、選挙戦で大きな注目を集めています。

ポーランドは欧州の中でも暗号資産に対して比較的開放的な姿勢を取ってきた国であり、国家備蓄が実現すれば欧州初の事例となります。

ドイツでも政治家がビットコイン準備金設立を提案しており、欧州で広がる国家備蓄の動きを象徴しています。

ドイツは過去に大量のビットコインを保有していましたが、2024年に売却してしまい、その判断を後悔する声が上がっていました。今回の提案は、その反省を踏まえた動きと見られます。

これらの動きは、国家間でのビットコイン獲得競争を引き起こす可能性があります。

金や外貨準備と同様に、ビットコインを保有することが国家の経済力や金融主権を示す指標となる時代が到来しつつあります。

特に注目されるのは、米国が新規購入を行わない方針を示したことです。

これは既存の保有分を維持するという消極的な戦略ですが、他国が積極的に購入を進めれば、米国の相対的な保有比率が低下する可能性があります。この点が、今後の米国の政策変更につながる可能性もあります。

国家備蓄の動きは、ビットコインの価格安定性にも影響を与えます。

国家が長期保有を前提として購入・保有すれば、市場からの供給が減少し、価格上昇圧力となります。また、国家が保有することでビットコインの信頼性が向上し、民間企業や個人投資家の投資意欲も高まる可能性があります。


企業のビットコイン戦略 ── テスラ11億ドル保有継続、マイクロストラテジー11兆円超に

企業によるビットコイン保有戦略が新たな段階に入っています。

テスラが11億ドル相当のビットコインを保有し続けていることが第3四半期決算で判明しました。テスラは2021年に15億ドル相当のビットコインを購入し、一部を売却していましたが、残りを長期保有する戦略を継続しています。

テスラのイーロン・マスクCEOは以前からビットコインに対して好意的な姿勢を示してきましたが、実際に大規模な保有を継続していることが確認されたことは、市場に安心感を与えています。

一方、マイクロストラテジーはビットコイン買い増しを継続しており、総保有額は11兆円を超えました。

同社のマイケル・セイラー会長は、ビットコインを**「デジタルゴールド」**と位置づけ、長期的な価値保存手段として積極的に購入しています。

マイクロストラテジーのビジネスモデルは、転換社債を発行して資金を調達し、そのほぼ全額をビットコイン購入に充てるというものです。

ビットコイン価格が上昇すれば、社債を株式に転換することで株主価値が増大し、価格が下落しても長期保有することで損失を回避する戦略です。

セムラー・サイエンティフィックも297BTCを追加購入し、総保有量は2,084BTCに達しました。

同社もマイクロストラテジーと同様のビットコイン財務戦略を採用しており、中小企業による採用事例として注目されています。

マイニング企業でも好調な動きが見られます。

米マイニング企業リオットは第3四半期に過去最高売上を記録しました。ビットコイン価格の上昇とマイニング効率の改善により、収益性が向上しています。

企業のビットコイン保有戦略は、長期的な価値保存手段として認知されることで、より多くの企業が採用する可能性があります。

特に、インフレヘッジや通貨分散の手段として、ビットコインを財務戦略に組み込む企業が増加する見通しです。


ETF市場の拡大 ── 4日連続資金流入、ソラナETF初日2億ドル超

ETF市場が力強い成長を続けています。

ビットコインETFは4日連続で資金流入を記録し、総額は4億ドルを超えました。

10月中旬の市場急落後、一時的に資金流出が見られましたが、戦略的ビットコイン準備金設立のニュースを受けて、投資家心理が改善し、再び資金が流入しています。

特に注目されるのは、ソラナETFの初日出来高が2億2300万ドルを記録したことです。

これはアルトコインETFとしては過去最大規模であり、機関投資家のアルトコインへの関心の高さを示しています。

ソラナは高速かつ低コストなトランザクション処理能力を持ち、DeFiやNFT市場で広く利用されているため、投資対象としての魅力が認められた形です。

さらに、グレイスケールが複数のアルトコインETF申請を準備中との報道もあります。

グレイスケールは暗号資産投資商品の分野で長年の実績を持ち、ビットコインETFの成功を受けて、アルトコインETFにも本格参入する構えです。

ETF市場の拡大は、機関投資家が暗号資産を正式なポートフォリオの一部として組み入れる動きを加速させています。

従来、暗号資産への投資には技術的なハードルや規制の不透明性がありましたが、ETFという伝統的な金融商品の形態で提供されることで、より多くの投資家がアクセスしやすくなっています。


ステーブルコイン・決済インフラの進展 ── RLUSD12月ローンチ、テザー利益2.3兆円

ステーブルコイン市場が急速に拡大しています。

リップルが独自ステーブルコイン「RLUSD」を12月4日にローンチ予定であることを発表しました。リップルは国際送金ネットワークで実績を持ち、RLUSDは送金・決済に特化したステーブルコインとして設計されています。

テザー社の2025年利益が150億ドル(約2.3兆円)に達する見込みであることも報じられました。

テザーのUSDTは世界最大のステーブルコインであり、発行残高を背景に利回り運用や準備資産の活用によって安定的な収益を確保しています。この収益性の高さは、ステーブルコイン事業の将来性を示しています。

サークルのUSDC発行量が400億ドルを突破し、年初から60%増加しました。USDCは規制準拠を重視したステーブルコインとして、機関投資家や企業からの信頼を集めています。


DeFi・分散型取引所の成長 ── ユニスワップ月間800億ドル突破

DeFi市場も拡大しています。

ユニスワップの月間取引高が800億ドルを突破し、DEX市場でシェアを拡大しています。ユニスワップは分散型取引所の代表的存在であり、中央集権的な取引所に代わる選択肢として成長を続けています。

パンケーキスワップもBNBチェーンでのTVL(総ロック価値)が過去最高を更新し、DeFiエコシステムの拡大を示しています。


その他の動向 ── NFT、マイニング、技術開発

アディダスがNFTプロジェクト第2弾を発表し、Web3戦略を強化しています。

ザ・サンドボックスはメタバース内に仮想不動産市場を開設し、デジタル不動産取引の新市場を創出しています。

マイニング分野では、ビットコインマイニング難易度が過去最高を更新し、ネットワークセキュリティが強化されています。マラソン・デジタルがケニアに新マイニング施設を建設する計画も発表されました。

技術面では、ライトニングネットワークの容量が6000BTCを突破し、イーサリアムL2「Arbitrum」がトランザクション数で新記録を達成しました。


おわりに

2025年11月1日は、ビットコインが国家資産として正式に認められた歴史的な日として記憶されるでしょう。

米国の戦略的ビットコイン準備金設立法案の可決は、暗号資産が投機対象から戦略的資産へと進化したことを象徴しています。

世界13カ国以上がビットコイン準備金を検討する中、国家間でのビットコイン獲得競争が本格化しつつあります。

企業レベルでも、テスラやマイクロストラテジーが大規模な保有を継続し、ビットコインが企業財務戦略の重要な要素となっています。

ステーブルコイン規制法の成立により、銀行がステーブルコイン事業に参入する道が開かれ、決済インフラとしての実用化が加速します。

ETF市場の拡大、DeFiの成長、そして技術革新の継続──これらすべてが、2026年に向けて暗号資産市場が新たな成長段階に入ることを示しています。

ビットコインが11万2000ドル台で堅調に推移し、アナリストが年末13万ドル到達を予測する中、制度化と実用化が同時進行する歴史的な局面を迎えています。

暗号資産市場の未来は、もはや「可能性」ではなく「現実」となりつつあります。

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