今日は、暗号資産の制度化に向けた動きが一気に加速した一日でした。JPモルガンがBTC・ETHを担保にした融資サービスの世界展開を発表し、日本では JPYC が円建てステーブルコインを正式リリース。さらに、米上院では仮想通貨法案の90%合意が報じられるなど、金融インフラの整備が進んでいます。
予測市場ではポリマーケットの評価額が急騰し、カルシやジュピターによる技術展開も活発化。企業財務の面でも、モブキャストHDがSOL取得を開始し、テスラはBTC保有による含み益を計上するなど、暗号資産の活用が広がっています。
制度、技術、財務それぞれの領域で何が起きたのか。今日の注目ニュースを一緒に見ていきましょう!
制度と金融インフラの進展 | JPモルガン・JPYC・米上院法案
暗号資産市場における制度的進展が加速した。特に注目されたのは、米金融最大手JPモルガンによるBTC・ETH担保融資の世界展開、日本初の円建てステーブルコイン「JPYC」の正式リリース、そして米上院による仮想通貨法案の90%合意という三大制度トピックだ。
まず、JPモルガンは2025年末から、ビットコインおよびイーサリアムを担保とした融資サービスをグローバルに展開する方針を明らかにした。これにより、暗号資産が従来の証券や不動産と並ぶ担保資産として認知される流れが加速する。すでにモルガン・スタンレーなど他の米大手金融機関も同様のサービス拡充を進めており、機関投資家向けの暗号資産活用が本格化している。
一方、日本ではJPYC株式会社が10月27日午後1時に、日本円建てステーブルコイン「JPYC」を正式リリースすることを発表。発行・償還・送金手数料はすべて無料とされており、第二種資金移動業者としての第1号認可を取得済み。これにより、日本円のオンチェーン流通が制度的に可能となる初の事例となる。JPYCはすでに複数のWeb3サービスやウォレットと連携しており、国内外のステーブルコイン市場における競争力を高める可能性がある。
さらに、米国ではCoinbase CEOブライアン・アームストロング氏が、米上院が仮想通貨に関する重要法案の可決に向けて「超党派で90%合意に達している」と発言。感謝祭までに進展がある可能性を示唆した。この法案にはステーブルコイン規制や取引所の登録制度などが含まれており、米国の制度的整備が一気に進む可能性がある。
これら3つの動きは、暗号資産が制度・金融インフラ・通貨としての地位を同時に高める象徴的な日となった。特にJPモルガンの参入は、従来の金融機関が暗号資産を「信用に値する資産」として扱い始めたことを意味し、JPYCのリリースは日本市場におけるオンチェーン円の実用化を示す。米上院の法案進展は、世界最大の金融市場における制度的安定性をもたらす可能性がある。
予測市場と評価額の急騰 | ポリマーケット・カルシ・ジュピター
予測市場関連の動きも活発化している。米分散型予測市場プラットフォーム「ポリマーケット(Polymarket)」は、最大150億ドル(約2兆円)の評価額で資金調達を検討していることが報じられた。これは2025年6月時点の評価額10億ドルからわずか4カ月で10倍以上の急騰となり、Web3インフラ企業としての市場評価が大きく変化していることを示す。
ポリマーケットは、政治・経済・スポーツなどの実世界イベントに対する予測市場を提供しており、最近では米スポーツベッティング大手ドラフトキングスとの提携も発表。B2CからB2Bへの展開を進めており、清算機関としての役割も担うようになっている。
また、DeFiオラクル企業レッドストーンと予測市場プロトコル「カルシ(Kalshi)」が提携し、CFTC規制下の予測市場データを110以上のブロックチェーンに展開することを発表。これにより、実世界イベントのオンチェーン化が進み、DeFi開発者にとって新たな構築基盤が提供される。
さらに、ソラナ上のDEXアグリゲーター「ジュピター(Jupiter)」が、予測市場のベータ版をローンチ。Kalshiの流動性を活用し、ソラナエコシステム内での予測市場展開が始まった。これにより、高速・低コストな予測市場インフラが実現可能となる。
これらの動きは、予測市場が単なるギャンブルではなく、制度化された金融インフラとしての地位を獲得しつつあることを示している。特にポリマーケットの評価額急騰は、投資家が予測市場を「次世代の情報市場」として認識し始めている証左であり、カルシやジュピターの技術展開はその基盤を支える重要な要素となっている。
企業財務とトレジャリー戦略 | モブキャスト・テスラ・リミックスポイント
企業による暗号資産の財務活用が加速している。モブキャストホールディングスは10月24日、暗号資産ソラナ(SOL)の取得および保有を開始したと発表。これは同社のトレジャリー戦略の一環であり、財務基盤の強化とWeb3領域への布石とされる。
モブキャストHDはかつてゲーム事業に特化していたが、2018年の会社分割以降は持株会社体制に移行。現在はエンタメ・ブロックチェーン領域への展開を模索しており、今回のSOL取得はその戦略的転換を象徴する動きといえる。
一方、米テスラは2025年第3四半期決算で、保有するビットコインによって122億円の含み益を計上したと報告。保有量は11,509BTCで、評価額は約2,000億円に達している。テスラは2021年にBTCを取得して以降、売却せずに保有を継続しており、企業財務におけるビットコインの長期保有モデルを体現している。
国内では、株式会社リミックスポイントが10月23日、新株発行による仮想通貨購入を停止する方針を決議。今後は手元資金などを活用し、株式希薄化を伴わない形での暗号資産取得を進めるとした。これにより株価は反発し、株主保護と財務戦略の両立を図る姿勢が評価された。
これらの動きは、企業が暗号資産を資産運用・財務戦略・事業転換の手段として本格的に活用し始めていることを示している。特にSOLやBTCといった主要銘柄が企業のバランスシートに組み込まれることで、暗号資産の制度的信頼性も高まっている。
ETFと資産運用 | ティー・ロウ・プライス・クラーケン・金トークン
資産運用の分野でも暗号資産の存在感が増している。米資産運用大手ティー・ロウ・プライスは、仮想通貨ETFの申請書を米SECに提出した。投資対象にはビットコイン、イーサリアム、XRP、ソラナなど時価総額の高い主要銘柄が含まれており、機関投資家向けの分散投資商品として注目されている。
ティー・ロウ・プライスは、これまで伝統的資産を中心に運用してきたが、今回の申請は暗号資産を本格的にポートフォリオに組み込む意思表示と受け止められている。SECの承認次第では、他の大手運用会社の追随も予想される。
また、米大手仮想通貨取引所クラーケンは、2025年第3四半期の売上高が前年同期比114%増の6億4,800万ドルとなり、過去最高の業績を記録した。取引量の増加に加え、機関投資家向けサービスの拡充や、IPO(新規株式公開)準備の進展が背景にあるとされる。
一方、金連動型トークン市場も拡大している。金価格が1オンスあたり4,100ドル前後で推移する中、金に価値が連動するトークンの市場規模は39億ドルに達した。しかし、バイナンス創業者CZ氏はこの動きに対し、「それは“信じてくれ”トークンだ」と批判。オンチェーンでの裏付けが不十分であることを問題視している。
ETFやトークン化資産の拡大は、伝統金融と暗号資産の融合を象徴する動きであり、今後の制度整備とともに市場の成熟度を高める要因となるだろう。
技術アップグレードと開発動向 | イーサリアム『フサカ』と次期提案
イーサリアムの開発チームは、第223回ACDE(All Core Devs Execution)会議において、次期アップグレード「フサカ(Fusaka)」の実装日を2025年12月3日に決定した。これは、前回の「デンクン(Dencun)」に続く大型アップグレードであり、スケーラビリティと効率性の向上を目的としている。
フサカでは、EIP 8058の導入や、BAL(Batch Aggregation Layer)技術の採用が予定されており、L2との相互運用性やトランザクション処理の最適化が期待されている。これにより、ガス代の削減や処理速度の向上が実現される見込みだ。
また、次期アップグレード「グラムステルダム(Glamsterdam)」に向けた提案の締切が10月30日に設定された。これにより、開発者コミュニティは今後の技術的方向性を明確にし、段階的な改善を進めることができる。
イーサリアムは依然としてスマートコントラクト基盤としての覇権を維持しており、こうした定期的なアップグレードはその競争力を支える重要な要素となっている。特にL2との統合やEIPの進化は、DeFiやNFT、RWAなど多様なユースケースにおいて基盤技術としての信頼性を高めている。
価格分析と市場動向 | BTC・ETH・XRP・SOL・AI関連株
暗号資産市場は価格面でも複雑な動きを見せている。ビットコイン(BTC)は11万ドル台を回復し、米CPI(消費者物価指数)の発表を控えて大きく動く可能性があると分析されている。オプション建玉の増加やETF流出が重荷となる一方、需給整理が進んでいるとの見方もある。
イーサリアム(ETH)は、10月に入り約6.5%下落しているが、チャート上では「トリプルボトム」パターンが形成されており、強気転換の兆しがあるとされる。これにより、4,000ドル回復の可能性が示唆されている。
XRP市場では、共同創業者クリス・ラーセン氏による継続的な利益確定売りが報じられ、価格下落リスクが指摘されている。アナリストは「市場の信頼性に影響を与える可能性がある」と警鐘を鳴らしている。
また、JPモルガンのレポートによれば、上場BTCマイニング企業の株価は仮想通貨価格との相関が崩れ、AI事業へのシフトによって独自の動きを見せている。さらに、ヴァンエックの調査では、マイナーの負債総額が過去1年で6倍に拡大し、AIおよびHPC(高性能コンピューティング)関連への投資が背景にあるとされる。
興味深い動きとして、初期のBTCマイナーによるウォレットが14年ぶりに活動を再開し、150BTCが移動されたことも報じられた。これは市場の流動性や長期保有者の動向を示す指標として注目されている。
これらの価格・市場動向は、短期的なテクニカル分析と中長期の資金流れの両面から市場を読み解く材料となるが、制度やインフラに比べると即効性や構造的インパクトは限定的である。
政治と規制 | CZ恩赦・EU制裁・米中首脳会談
政治的な動きも暗号資産市場に影響を与えている。米国では、トランプ大統領がバイナンス創業者チャンポン・ジャオ氏(CZ)に対する恩赦を正式に承認したと報じられた。トランプ氏は「彼がやったことは犯罪ですらなかった」とコメントし、善良な人々の要請を受けて恩赦を決定したと述べた。
この発言に対し、米民主党議員らは「腐敗の象徴」と批判しており、CZの経営陣復帰の可能性も含めて議論が続いている。市場ではBNBが5%高、WLFIが15%急騰するなど、恩赦報道が価格に影響を与えた。
一方、欧州連合(EU)はロシアに対する第19次制裁パッケージを採択し、初めて仮想通貨プラットフォームに対する制裁措置を導入。ルーブル連動型ステーブルコイン「A7A5」が制裁対象となり、地政学的リスクが暗号資産市場にも波及している。
さらに、米中首脳会談の開催が確定したことも報じられ、ビットコインと欧州株が上昇。ドナルド・トランプ大統領と習近平国家主席の会談は、世界経済の安定化に向けた重要なステップとされ、リスク資産への資金流入が期待されている。
これらの政治的動きは、直接的な制度整備とは異なるが、市場心理や価格変動に影響を与える要因として注目される。特にCZ恩赦は、規制と自由の境界線を揺るがす象徴的な出来事となっている。
