2025年12月15日から21日の1週間、暗号資産市場は歴史的な規制整備の進展と価格調整が同時進行する複雑な展開となりました。最大の注目材料は、12月19日に決定された与党税制改正大綱で、暗号資産の申告分離課税20%導入と3年間の損失繰越控除制度創設が明記されました。金融商品取引法改正を前提に2028年施行の見通しで、現行最高税率55%から大幅に引き下げられることが確定しました。
米国では、SEC(証券取引委員会)のポール・アトキンス委員長が講演を行い、規制に関する見解を示しました。ノルウェーの政府系ファンドがメタプラネットのビットコイン戦略を支持する方針を表明し、日本企業の暗号資産投資が国際的に評価されていることが明らかになりました。
一方、ビットコイン価格は9万ドル(約1,395万円)の壁を突破できず、8万8,000ドル(約1,364万円)前後で推移しました。年末のホリデーシーズンで流動性が低下する中、bitbankアナリストは来週にかけても方向感に欠ける展開が続く可能性を指摘しています。
興味深いのは、ブラックロック(BlackRock)のビットコインETF「IBIT」が年初来マイナスリターンにもかかわらず、年間資金流入額でETF全体の6位にランクインしたことです。ブルームバーグのETFアナリストは、これを「市場の成熟の証」と評価しています。
本稿では、今週の主要材料振り返り、ブラックロックETFの意義、来週の見通し、その他重要トピックについて解説します。
今週の主要材料振り返り──税制改正大綱決定で分離課税20%明記、ノルウェー政府系ファンドがメタプラネット支持、SEC次期委員長が規制見解示す
12月15日から21日の1週間は、日本の暗号資産業界にとって歴史的な進展がありました。与党税制改正大綱で暗号資産の申告分離課税20%導入と3年間の損失繰越控除制度創設が明記され、長年の課題が解決に向けて大きく前進しました。ノルウェーの政府系ファンドがメタプラネットのビットコイン戦略を支持する方針を表明し、日本企業の暗号資産投資が国際的に評価されていることが示されました。
今週の主要材料の詳細は以下の通りです。第一に、与党税制改正大綱決定です。12月19日、自由民主党と日本維新の会が令和8年度(2026年度)税制改正大綱を正式決定しました。暗号資産の現物取引、デリバティブ取引、関連ETF(上場投資信託)による所得を対象に、一律20%の申告分離課税を導入します。内訳は所得税15%、住民税5%です。現行制度では最高税率55%(所得税45%+住民税10%)が適用されており、大幅な引き下げとなります。最長3年間の損失繰越控除制度も新設されます。金融商品取引法(金商法)改正を前提とした条件付きで、2028年施行の見通しです。昨年の「検討」から具体化が大きく前進し、業界関係者は「web3業界発展に向けた重要な一歩」と評価しています。
第二に、ノルウェー政府系ファンドがメタプラネット支持です。ノルウェーのノルゲ銀行投資運用会社(Norges Bank Investment Management、運用資産約180兆円)は、メタプラネットのビットコイン戦略を支持し、12月22日の臨時株主総会で賛成票を投じることを明らかにしました。世界最大級の政府系ファンドが日本企業のビットコイン戦略を支持することは、暗号資産投資が機関投資家レベルで認められていることを示す重要な出来事です。メタプラネットは200億円超の資金調達により、ビットコイン保有量を現在の約1,700BTCから約3,100BTCへ拡大する計画です。
第三に、SEC次期委員長が規制見解示すです。米証券取引委員会(SEC)のポール・アトキンス(Paul Atkins)委員長が講演を行い、暗号資産規制に関する見解を示しました。アトキンス氏は暗号資産に対して比較的友好的な姿勢を持つとされており、トランプ政権下でのSEC方針転換が期待されています。講演では、過度な規制が暗号資産を「史上最強の金融監視システム」にする恐れがあると警告し、イノベーションとプライバシー保護のバランスを強調しました。業界は、アトキンス氏のSEC委員長就任により、規制環境が改善することを期待しています。
第四に、米上院がCFTC・FDIC新委員長を承認です。12月18日、米上院は仮想通貨推進派のマイケル・セリグ氏(CFTC委員長)とトラビス・ヒル氏(FDIC委員長)を承認しました。両氏はデジタル資産に対するより友好的な規制環境の実現が期待されています。CLARITY法案(デジタル資産市場透明性法)が2026年1月に上院審議入りすることも確認されました。米国の規制環境が大きく改善する見通しです。
第五に、日銀が30年ぶりの利上げです。12月19日、日本銀行は政策金利を0.50%から0.75%へ引き上げました。約30年ぶり(1995年以来)の高水準です。市場では円キャリートレードの巻き戻しによるビットコイン下落が懸念されていましたが、実際には8.7万ドル(約1,349万円)へ上昇しました。マクロ経済の懸念が解消されたことで、暗号資産市場はポジティブに反応しました。
第六に、日本企業の暗号資産戦略拡大です。TORICO(東証グロース上場)がイーサリアム財務戦略を発表し、株価が連日ストップ高を記録しました。12月17日に完全子会社「株式会社TORICO Ethereum」の設立を決議し、「日本No.1イーサリアム投資運用企業」を目指すと表明しました。エスクリプトエナジー(旧エス・サイエンス)、メタプラネット、TORICOと、日本企業による暗号資産投資がビットコインからイーサリアムへと多様化しています。
第七に、その他の重要材料です。(1)SoFiが米国法銀行として初のステーブルコイン「SoFi USD」を発表。(2)JPモルガンのJPMコインがコインベースの「ベース」に移行。(3)サークル(Circle)がインテュイット(Intuit)と提携し、TurboTaxやQuickBooksでUSDC活用。(4)2025年の暗号資産盗難被害額が5300億円(34億ドル)を突破。(5)台湾政府が210BTC保有で世界8位に浮上。
ブラックロックETF流入6位『マイナスリターンでも資金流入継続』──市場成熟の証、長期投資家の信頼示す、年間流入額350億ドル規模
ブラックロックの現物ビットコイン上場投資信託(ETF)「iシェアーズ・ビットコイン・トラスト(IBIT)」が、年初来でマイナスリターンとなっているにもかかわらず、年間資金純流入額でETF全体の6位にランクインしました。ブルームバーグのETFアナリストは、これを「市場の成熟の証」と評価しています。
ブラックロックETFの意義は以下の通りです。第一に、マイナスリターンでも流入6位です。ブラックロックのIBITは、2024年1月に承認・上場されて以来、大量の資金を集めてきました。しかし、ビットコイン価格が12月に急落したことで、年初来のリターンがマイナスに転じました。2024年1月の上場時、ビットコイン価格は約4.6万ドル(約713万円)でした。その後10万8,000ドル(約1,674万円)まで上昇しましたが、12月に8.8万ドル(約1,364万円)まで下落しました。年初来リターンは、上場時の価格と現在の価格を比較すると、約+91%とプラスですが、ピークからは約-18%の下落です。記事によれば「年初来マイナスリターン」とされているため、ピークからの下落を指していると考えられます。
第二に、年間流入額は350億ドル規模です。IBITへの年間資金純流入額は、約350億ドル(約5兆4,250億円)規模と推定されます。これは、全てのETF(株式、債券、コモディティなど全てを含む)の中で6位という驚異的な順位です。通常、ETFへの資金流入はリターンと連動する傾向があります。リターンが高いETFには資金が流入し、リターンが低いETFからは資金が流出します。しかし、IBITは価格が下落している局面でも資金流入が継続しました。これは、投資家が短期的な価格変動ではなく、長期的なビットコインの成長を信じていることを示しています。
第三に、市場成熟の証とブルームバーグアナリスト評価です。ブルームバーグのETFアナリスト、エリック・バルチュナス(Eric Balchunas)氏は、IBITへの継続的な資金流入を「市場の成熟の証」と評価しました。バルチュナス氏によれば、以下の理由で市場の成熟が示されています。(1)長期投資家の増加:短期的な価格変動に一喜一憂せず、長期的な視点で投資する投資家が増えています。(2)機関投資家の参入:年金基金、保険会社、大学基金などの機関投資家がビットコインETFに投資しています。これらの投資家は、短期的な価格変動よりも長期的な資産配分を重視します。(3)分散投資の一環:ビットコインがポートフォリオの一部として認識され、株式や債券と同様に分散投資の対象となっています。(4)「押し目買い」の戦略:価格下落局面を買い増しの好機と捉える投資家が増えています。
第四に、他のビットコインETFとの比較です。IBITだけでなく、他のビットコイン現物ETFも同様の傾向を示しています。フィデリティ(Fidelity)のFBTC、アーク(ARK)とブラックストーン(Blackstone)のARKB、ビットワイズ(Bitwise)のBITBなども、価格下落局面でも資金流入が継続しました。ビットコイン現物ETF全体では、年間で約600億ドル(約9兆3,000億円)の資金が流入したと推定されます。これは、2024年がビットコイン投資元年となったことを示しています。
第五に、従来の暗号資産市場との違いです。従来の暗号資産市場では、価格が下落すると投資家がパニック売りを行い、さらなる下落を引き起こす「悪循環」が発生することがありました。2022年の弱気相場では、テラUSD(UST)崩壊、FTX破綻などが連鎖し、ビットコイン価格が6万9,000ドルから1万5,000ドルまで暴落しました。しかし、2025年の調整局面では、ETFを通じた機関投資家の買い支えにより、価格が比較的安定しています。ビットコインが10万8,000ドルから8.8万ドルへ下落しましたが、約-18%の調整にとどまっており、過去の弱気相場(-70%以上の下落)に比べて穏やかです。
第六に、今後の展望です。ブラックロックのIBITへの継続的な資金流入は、以下の点で重要です。(1)ビットコイン市場の安定化:機関投資家の長期的な買い支えにより、価格変動が緩和されます。(2)市場の信頼性向上:ETFという規制された金融商品を通じて投資できることで、暗号資産市場全体の信頼性が向上します。(3)さらなる機関投資家の参入:IBITの成功が他の機関投資家の参入を促します。(4)ビットコインの地位確立:ビットコインが金(ゴールド)と同様の「デジタルゴールド」として認識されつつあります。
BTC来週も不安定展開か──流動性低下で方向感欠く、年末ホリデーシーズン、12月米雇用・物価データが鍵、9万ドル突破が焦点
ビットコインの今後の見通しについて、bitbank(ビットバンク)アナリストが解説しました。年末のホリデーシーズンで流動性が低下する中、来週にかけても方向感に欠ける展開が続く可能性があります。12月の米雇用・物価データが金利見通しの鍵を握ります。
来週の見通しの詳細は以下の通りです。第一に、流動性低下で不安定な展開です。年末のホリデーシーズン(クリスマスから年始にかけて)は、多くの投資家が休暇を取り、市場参加者が減少します。流動性(取引量)が低下すると、少量の売買でも価格が大きく変動しやすくなります。ビットコインは現在8.8万ドル(約1,364万円)前後で推移していますが、9万ドル(約1,395万円)の壁を突破できていません。流動性が低い環境では、9万ドル突破を試みる動きと、8万ドル台への下落リスクが交錯し、方向感に欠ける展開が続く可能性があります。
第二に、年末ラリーへの期待と現実です。過去、暗号資産市場では年末から年始にかけて「年末ラリー」が発生することがありました。新年に向けて投資家が買い増しを行い、価格が上昇する傾向です。しかし、2025年は以下の理由で年末ラリーが発生しにくい状況です。(1)既にピークアウト:ビットコインは12月初旬に10万8,000ドルまで上昇し、既にピークを迎えた可能性があります。(2)利益確定売り:年末に向けて、投資家が利益確定のため売却する動きがあります。(3)税金対策:損失を確定させて税金を減らす「タックスロス・セリング」(損失確定売り)が発生する可能性があります。(4)流動性低下:前述の通り、ホリデーシーズンで市場参加者が減少します。
第三に、12月米雇用・物価データが鍵です。bitbankアナリストは、12月の米雇用・物価データが金利見通しの鍵を握ると指摘しています。FRB(連邦準備制度理事会)は、雇用とインフレのデータに基づいて金利政策を決定します。12月の雇用統計(1月初旬発表予定)が強ければ、FRBの利下げペースが鈍化し、暗号資産にネガティブです。インフレ率(PCE物価指数など)が高ければ、同様に利下げペースが鈍化します。逆に、雇用が弱くインフレが鈍化すれば、FRBの利下げ継続が期待され、暗号資産にポジティブです。
第四に、9万ドル突破が焦点です。テクニカル分析では、9万ドルが重要なレジスタンスライン(上値抵抗線)として機能しています。9万ドルを明確に突破できれば、10万ドル(約1,550万円)を再テストする展開が期待できます。逆に、9万ドルを突破できず、8.8万ドルを割り込めば、8.5万ドル(約1,318万円)、さらには8万ドル(約1,240万円)を試す展開となります。bitbankアナリストは、来週にかけても9万ドル突破を試みる動きと、8万ドル台への調整リスクが交錯すると予想しています。
第五に、2026年の展望です。短期的には不安定な展開が予想されますが、2026年については以下の前向きな要因があります。(1)規制明確化:CLARITY法案が1月に審議入りし、成立すれば規制環境が改善します。(2)税制改正:日本で2028年に分離課税20%が施行される見通しで、長期的には市場にポジティブです。(3)機関投資家の参入継続:ブラックロックETFへの資金流入が示すように、機関投資家の参入は継続します。(4)企業のBTC財務戦略:ストラテジー、メタプラネット、TORICOなど企業による買い増しが継続します。(5)半減期効果:2024年4月の半減期効果が、2025年から2026年にかけて顕在化する可能性があります。
その他重要トピック──ファンドストラット内部資料とトム・リー氏矛盾、ドラフトキングス予測市場参入、JPYC週間まとめ
ファンドストラット・グローバル・アドバイザーズ(Fundstrat Global Advisors)の内部レポートとされる文書が、暗号資産市場について弱気の見通しを示しており、同社のトム・リー(Tom Lee)氏が公に主張している見解と矛盾しているようです。スポーツベッティング大手ドラフトキングス(DraftKings)が予測市場分野への進出を進めており、将来的には暗号資産に連動した契約の導入も視野に入れています。
その他重要トピックの詳細は以下の通りです。第一に、ファンドストラット内部資料とトム・リー氏の矛盾です。ファンドストラット・グローバル・アドバイザーズの内部レポートとされる文書が、暗号資産市場について弱気の見通しを示しています。これは同社のトム・リー氏が公に主張している強気見解と矛盾しているようです。トム・リー氏は、ビットコインの長年の強気派として知られており、2025年末までに15万ドル(約2,325万円)を超えると予測していました。しかし、内部レポートでは、2026年に調整局面が訪れる可能性が示唆されているとされています。この矛盾について、ファンドストラットは公式なコメントを出していません。内部レポートが本物かどうかも確認されていませんが、市場では話題となっています。
第二に、ドラフトキングス予測市場参入です。スポーツベッティング大手ドラフトキングスは、予測市場分野への進出を進めており、将来的には暗号資産に連動した契約の導入も視野に入れています。予測市場とは、政治、スポーツ、経済などの将来の出来事に対して賭けを行う市場です。ポリマーケット(Polymarket)、カルシ(Kalshi)などが先行しています。ドラフトキングスは、既にスポーツベッティングで大きなシェアを持っており、予測市場への参入により事業を拡大します。暗号資産に連動した契約とは、ビットコインやイーサリアムの価格変動に賭ける契約などが考えられます。ドラフトキングスの参入により、予測市場が一般化し、暗号資産の認知度向上にもつながる可能性があります。
第三に、JPYC週間まとめです。今週の日本円ステーブルコイン「JPYC」は、実需の拡大と社会実装に向けた多角的な進展が見られました。(1)累計発行額5億円突破:12月17日に報じられた通り、JPYCの累計発行額は5億円を突破しました。口座開設数も1万件に達しています。(2)JPYCゲートウェイ始動:アステリア株式会社が開発した「JPYCゲートウェイ」が2026年1月13日よりベータ版提供開始。企業導入の壁を取り払う画期的なサービスです。(3)ECサイトで使う裏技:暗号資産決済ソリューションを提供する「Tria」のカードを利用することで、TikTok Shopなどのプラットフォームで手数料・遅延なしに決済できます。(4)Xキャンペーン支援ツール対応:アライドアーキテクツ株式会社のXキャンペーン支援ツール「echoes」において、JPYCをマーケティングインセンティブとして活用できる新機能が提供開始。JPYCは、企業導入と個人利用の両面で成長を続けており、30兆円規模への拡大を目指しています。
おわりに
2025年12月15日から21日の1週間は、日本の暗号資産業界にとって歴史的な転換点となりました。与党税制改正大綱で暗号資産の申告分離課税20%導入と3年間の損失繰越控除制度創設が明記され、長年の課題が解決に向けて大きく前進しました。金商法改正を前提に2028年施行の見通しで、税率が55%から20%へ大幅に引き下げられることが確定しました。
ノルウェーの政府系ファンドがメタプラネットのビットコイン戦略を支持する方針を表明し、日本企業の暗号資産投資が国際的に評価されていることが示されました。米国では、SEC次期委員長が規制見解を示し、CFTC・FDIC新委員長が承認され、CLARITY法案が1月に審議入りする見通しです。規制環境の改善が進んでいます。
ブラックロックのビットコインETF「IBIT」が、年初来マイナスリターンにもかかわらず、年間資金流入額でETF全体の6位にランクインしました。これは、長期投資家がビットコインの将来を信じ、価格下落局面でも投資を継続していることを示しています。ブルームバーグのETFアナリストは、これを「市場の成熟の証」と評価しました。
一方、ビットコイン価格は9万ドルの壁を突破できず、8.8万ドル前後で推移しています。年末のホリデーシーズンで流動性が低下する中、bitbankアナリストは来週にかけても方向感に欠ける展開が続く可能性を指摘しています。12月の米雇用・物価データが金利見通しの鍵を握ります。
短期的には不安定な展開が予想されますが、2026年については規制明確化、税制改正、機関投資家の参入継続、企業のBTC財務戦略という前向きな要因があります。フィデリティのティマー氏は「暗号資産の冬」を警告していますが、コインベースやギャラクシーは2026年が転換点となる可能性を示唆しています。
今週は、規制整備の進展(税制改正大綱決定)と市場の成熟(ブラックロックETF流入継続)という2つの重要なトレンドが確認されました。暗号資産市場は、投機的な資産から機関投資家が長期保有する「成熟した資産クラス」へと移行しつつあります。投資家は短期的な価格変動に一喜一憂せず、長期的な視点を持つことが重要です。リスク管理を徹底し、余裕資金の範囲内で投資を行ってください。良い週末をお過ごしください。
