2025年12月1日、政府・与党が暗号資産取引で得た所得について、金額に関係なく一律20%の申告分離課税とする調整に入ったとNHKおよび日経新聞が報じました。現行の最大55%の総合課税から大幅な減税となり、株式や投資信託と同等の扱いになります。2026年からの導入を目指し、年末の税制大綱に盛り込まれる見通しです。
ビットコインは12月1日に急落し、9万ドル(約1,395万円)を割り込みました。約6億4,600万ドル(約1,001億3,000万円)のレバレッジポジションが清算され、ロングポジションで5億ドル(約775億円)以上の損失が発生しています。日銀の追加利上げ観測が背景にあるとの見方があります。
ソニー銀行が米Bastion(バスティオン)と業務提携し、米ドル建てステーブルコインの事業化を推進します。2026年度の発行を計画し、ソニーグループの「経済圏」での決済活用を目指します。
本稿では、分離課税導入検討、BTC急落と清算、ソニー銀行ステーブルコイン、QUICK指数算出、ストラテジーBTC売却条件、その他の重要動向について解説します。
政府・与党が暗号資産20%分離課税導入を検討──最大55%総合課税から大幅減税、2026年実施目指す
政府・与党が暗号資産取引で得た所得について、金額に関係なく一律20%の申告分離課税とする調整に入ったとNHKおよび日経新聞が報じました。現行の最大55%の総合課税から大幅な減税となり、株式や投資信託と同等の扱いになります。2026年からの導入を目指し、年末の税制大綱に盛り込まれる見通しです。
分離課税導入の意義は以下の通りです。第一に、税率の大幅引き下げです。現行制度では、暗号資産取引で得た所得は雑所得として総合課税の対象となり、給与所得などと合算されて最大55%(所得税45%+住民税10%)の税率が適用されます。これが一律20%(所得税15%+住民税5%)になれば、高額所得者にとって大幅な減税となります。
第二に、株式・投資信託との同等扱いです。株式や投資信託の売却益は申告分離課税で一律20%です。暗号資産も同じ扱いになることで、金融商品としての地位が確立されます。投資家は株式と暗号資産を同じ土俵で比較でき、ポートフォリオに組み込みやすくなります。
第三に、損益通算の可能性です。分離課税では、同じ課税区分内での損益通算が認められています。株式Aで利益が出て株式Bで損失が出た場合、相殺できます。暗号資産も分離課税になれば、ビットコインで利益、イーサリアムで損失という場合に相殺できる可能性があります。また、翌年以降への繰越控除も検討される可能性があります。
第四に、暗号資産市場の活性化です。高い税率が投資意欲を削ぐ要因となっていましたが、20%に引き下げられれば、個人投資家の参入が増えます。日本の暗号資産取引量は世界的に見て低い水準にありますが、税制改革により取引が活発化する可能性があります。
第五に、Web3推進政策との整合性です。政府はWeb3を国家戦略として推進しており、税制面でも支援する姿勢を明確にします。トークン化株式、ステーブルコイン、NFTなど、ブロックチェーン技術を活用した新サービスが次々と登場する中、税制が足かせにならないようにします。
ただし、課題もあります。第一に、税収減の懸念です。暗号資産投資家の多くが高額所得者であり、税率引き下げにより税収が減少する可能性があります。財務省は慎重な姿勢を取る可能性があります。
第二に、制度設計の詳細です。損益通算の範囲、繰越控除の可否、海外取引所での取引の扱いなど、詳細を詰める必要があります。また、法人税制との整合性も課題です。bitFlyerのアセットロックサービスのような期末時価評価課税の適用除外制度との関係も整理が必要です。
第三に、実施時期です。2026年からの導入を目指していますが、年末の税制大綱に盛り込まれるかどうかがポイントです。与野党の調整が難航すれば、先送りになる可能性もあります。
報道を受けて、メタプラネット株が急落しました。分離課税導入により個人投資家が直接ビットコインに投資しやすくなるため、メタプラネットのような間接投資の魅力が薄れるとの見方があります。一方、長期的には市場全体の活性化につながるとの期待もあります。
ビットコイン急落で9万ドル割れ、6.5億ドルのポジション清算──日銀利上げ観測が背景か、ロング5億ドル以上損失
ビットコインは12月1日に急落し、9万ドル(約1,395万円)を割り込みました。約6億4,600万ドル(約1,001億3,000万円)のレバレッジポジションが清算され、ロングポジションで5億ドル(約775億円)以上の損失が発生しています。日銀の追加利上げ観測が背景にあるとの見方があります。
ビットコイン急落の背景は以下の通りです。第一に、日銀の追加利上げ観測です。BitMEX(ビットメックス)の共同創設者アーサー・ヘイズ氏は、日本銀行による12月の追加利上げ観測が影響しているとの独自の見解を示しました。日銀が利上げすれば、円キャリートレード(低金利の円で資金調達し、高利回り資産に投資する戦略)の巻き戻しが発生し、リスク資産であるビットコインが売られます。
第二に、大規模な清算です。Coinglass(コイングラス)のデータによると、過去24時間で約6億4,600万ドルのレバレッジポジションが清算されました。そのうち5億ドル以上がロング(買い)ポジションで、強気派が大きな損失を被りました。レバレッジをかけた投資家が強制決済され、売りが売りを呼ぶ展開となりました。
第三に、弱気相場の兆候です。ビットコインのMACD(移動平均収束拡散法)ヒストグラムがマイナスに転じ、弱気相場が続くことを示唆しています。2012年以降の主要なサイクルにおいて、この指標がマイナスになると長期下落局面の始まりを告げるものでした。
第四に、2022年弱気相場との相関です。新たな調査で、ビットコイン価格が2022年の弱気相場の動きを再現しつつあることが明らかになりました。相関が98%に上昇しており、2022年のような長期低迷を警戒する声があります。
一方、楽観的な見方もあります。第一に、ETFへの流入継続です。ビットコインETFは週間で2億2,000万ドル(約341億円)の流入を記録し、リスク資産への資金流入が強気転換の兆しを示しています。
第二に、需要エンジンの一時的減速です。NYDIGの最新レポートによると、これまでビットコインの価格上昇を力強く支えてきた「需要エンジン」が減速傾向にありますが、過熱感リセット後の展開として強気相場はまだ維持できるとの見方があります。
ソニー銀行、米Bastionと提携し米ドルステーブルコイン事業化──2026年度発行計画、ソニー経済圏で決済活用
ソニー銀行が米Bastion(バスティオン)と業務提携し、米ドル建てステーブルコインの事業化を推進します。日経報道によると2026年度の発行を計画し、ソニーグループの「経済圏」での決済活用を目指します。米国子会社設立とOCC(通貨監督庁)銀行免許取得も視野に入れています。
ソニー銀行のステーブルコイン事業化の意義は以下の通りです。第一に、ソニーグループ経済圏での活用です。ソニーは、PlayStation、音楽、映画、エレクトロニクスなど多様な事業を展開しており、グローバルに顧客基盤を持っています。米ドルステーブルコインをこれらのサービスで決済手段として活用すれば、国際送金や決済の効率化が図れます。
第二に、米国規制への対応です。Bastionは米国の規制に準拠したステーブルコイン発行を支援する企業です。ソニー銀行が米国子会社を設立し、OCC銀行免許を取得すれば、米国内で正式にステーブルコインを発行できます。テザー(Tether)やCircle(サークル)のような既存発行者と競合しますが、ソニーブランドの信頼性を武器に市場シェアを獲得できる可能性があります。
第三に、日本企業の先駆けです。日本の金融機関が米ドルステーブルコインを発行する例はまだ少なく、ソニー銀行は先駆者となります。三菱UFJ銀行が「Progmat Coin」を発行していますが、これは主に日本円建てです。米ドルステーブルコインは国際決済で広く使われており、グローバル展開を目指すソニーにとって重要です。
第四に、2026年度発行計画です。発行時期が明確になったことで、具体的な準備が進んでいることが分かります。規制当局との協議、技術開発、パートナーシップ構築など、多くの課題がありますが、2026年度という目標を設定したことは、ソニーの本気度を示しています。
QUICK、円建てビットコイン指数算出開始──12月22日からリアルタイム提供、暗号資産ETFでの利用想定
QUICK(クイック)は12月1日、円建てビットコイン指数の本格公表を開始しました。試験運用から更新頻度を毎日に引き上げ、12月22日からはリアルタイム指数も提供します。暗号資産ETFなどでの利用を想定しています。
QUICK指数の意義は以下の通りです。第一に、信頼性の高い価格指標です。QUICKは日本経済新聞グループの金融情報サービス会社で、株式市場の情報提供で長年の実績があります。同社が円建てビットコイン指数を算出することで、機関投資家や金融商品の設計者が信頼できる価格指標を利用できます。
第二に、暗号資産ETFでの利用です。日本でも暗号資産ETFの上場が期待されており、その際の参照指数としてQUICK指数が使われる可能性があります。米国ではブラックロックのIBITが大成功を収めており、日本でも同様の商品が期待されています。
第三に、リアルタイム提供です。12月22日からリアルタイム指数を提供することで、取引時間中の価格変動を正確に追跡できます。株式市場と同様、リアルタイムの価格情報が投資判断に不可欠です。
ストラテジーCEO「mNAV下落と資金調達断絶時にBTC売却」──最後の手段、金融上の判断と説明
ストラテジー(Strategy)のフォン・リーCEOは、同社株が純資産価値(mNAV)を下回り、資金調達手段が途絶えた場合にのみビットコインを売却する可能性があるとし、あくまで金融上の判断だと説明しました。
ストラテジーのBTC売却条件の意義は以下の通りです。第一に、mNAV下落リスクです。mNAVとは、株式市場での時価総額が、保有するビットコインの時価総額を下回る状態です。現在ストラテジー株はプレミアムで取引されていますが、ビットコイン価格下落や株価急落により、mNAVを下回る可能性があります。
第二に、資金調達断絶リスクです。ストラテジーはビットコイン買い増しのために、株式発行や転換社債発行で資金調達しています。市場環境が悪化し、資金調達できなくなれば、最後の手段としてビットコインを売却する可能性があるとしています。
第三に、金融上の判断の強調です。CEOは、ビットコインへの長期的な信念を変えるわけではなく、あくまで企業の財務健全性を維持するための金融上の判断だと強調しています。
その他の重要動向──テザーCEO S&P反論、中国取締強化、マスク「エネルギーが通貨」、コインシェアーズETF取り下げ
テザー(Tether)社CEOがS&P(スタンダード・アンド・プアーズ)によるステーブルコインUSDTのドルペッグ機能評価の格下げに反論しました。余剰資本や米国債利回りを考慮していないと指摘し、S&Pとインフルエンサーを批判しています。
中国人民銀行が暗号資産取引の取締強化を改めて各当局に要請しました。暗号資産関連活動の再活発化が背景にあるとみられ、ステーブルコインも警戒対象としています。
テスラ(Tesla)CEOのイーロン・マスク氏が「エネルギーこそ真の通貨」と主張し、ビットコインはエネルギーに基づいていると説明しました。一方、著名経済学者やピーター・シフ氏は「本質的価値がない」と批判を続けています。
欧州大手のコインシェアーズ(CoinShares)が、XRP・ソラナ・ライトコインのETF申請を取り下げました。米国市場での大手運用会社への集中により、差別化や利益率確保が困難になるとの懸念を示しています。
カザフスタン国立銀行(中銀)のティムール・スレイメノフ総裁は、金・外貨準備ポートフォリオの一部として、暗号資産へ最大3億ドル(約470億円)の投資を検討していると発表しました。
ヤーン・ファイナンス(Yearn Finance)のyETH製品が攻撃を受け、約4億5,000万円相当のETHが流出しました。攻撃者は無限ミントの脆弱性を悪用しています。
Ginco(ギンコ)がBabylon Labs(バビロン・ラボ)と提携し、第三者への預託なしでBTCを活用できる「BTCFi 2.0」を日本で推進します。
イーサリアムの評価モデルの大半が「ETHは割安」と示しています。多くのモデルがETHの適正価格を4,000ドル(約620万円)超と示しています。
テレグラム(Telegram)のパベル・デュロフ氏が、分散型AIネットワーク「Cocoon(コクーン)」の稼働を開始しました。プライバシー保護型の分散AIプラットフォームは「ザ・オープン・ネットワーク(TON)」上に構築されています。
おわりに
2025年12月1日は、政府・与党による暗号資産20%分離課税導入検討という歴史的なニュースが報じられ、日本の暗号資産市場にとって転換点となる一日でした。最大55%から20%への大幅減税は、個人投資家にとって福音であり、株式・投資信託と同等の扱いになることで金融商品としての地位が確立されます。損益通算や繰越控除の可能性も含め、詳細な制度設計が待たれますが、2026年実施を目指す政府の姿勢は、Web3推進国家戦略との整合性を示しています。一方、メタプラネット株急落が示すように、間接投資の魅力低下という副作用もあり、市場構造の変化が予想されます。
ビットコインの9万ドル割れと6.5億ドルのポジション清算は、市場の脆弱性を露呈しました。日銀の追加利上げ観測という日本特有の要因が指摘され、円キャリートレード巻き戻しがグローバル市場に影響を与える構図が鮮明になりました。MACDヒストグラムのマイナス転換、2022年弱気相場との98%相関など、テクニカル面でも警戒信号が点灯しています。しかし、ETFへの2.2億ドル流入継続、需要エンジンの一時的減速という見方もあり、過熱感リセット後の強気相場継続を期待する声もあります。
ソニー銀行の米ドルステーブルコイン事業化は、日本企業のグローバル展開を象徴しています。2026年度発行計画、米国子会社設立、OCC銀行免許取得という具体的な道筋が示され、ソニーグループ経済圏での決済活用という明確なユースケースがあります。テザーやCircleとの競合になりますが、ソニーブランドの信頼性を武器に市場シェア獲得を目指します。QUICK円建てビットコイン指数算出開始と合わせて、日本の暗号資産インフラが着実に整備されています。
ストラテジーCEOのBTC売却条件言及は、DAT企業の財務リスクを明確にしました。mNAV下落と資金調達断絶という二重の条件が揃えば、最後の手段として売却する可能性を認めたことは、ビットコイン永久保有という神話に疑問を投げかけています。金融上の判断と強調していますが、市場はDAT企業のビジネスモデルの持続可能性を再評価し始めています。
テザーCEOのS&P反論、中国の取締強化、マスク「エネルギーが通貨」発言、コインシェアーズETF取り下げ、カザフスタン中銀投資検討、ヤーン・ファイナンス攻撃など、多様な動きがありました。規制、セキュリティ、哲学論争、競争環境変化という多面的な課題に直面しています。
分離課税という歴史的な税制改革、急落と清算という市場の試練、ソニー銀行ステーブルコインという新展開が同時進行しています。短期的な価格変動に惑わされず、税制改革の詳細、規制整備の進展、企業の実務的な活用という本質的な変化を冷静に見極め、長期的な視点で市場と向き合ってください。リスク管理を徹底し、余裕資金の範囲内で投資を行いましょう。
