金融庁、暗号資産105銘柄に金商法適用で業界猛反発。ビットコイン94,000ドル割れ『極度の恐怖』、ハーバード大学4億4,300万ドル投資、シフ氏がストラテジー批判 ──【11月17日暗号資産市場の動向まとめ】

2025年11月17日、金融庁の暗号資産に対する金融商品取引法(金商法)適用方針が改めて報じられ、業界から猛反発が起きています。一方、ビットコインは16日に94,000ドル(約1449万円)を割り込み、5月以来の安値を記録。市場センチメントは「極度の恐怖」に陥っています。

明るい話題も。ハーバード大学基金がブラックロック(BlackRock)のビットコインETF「IBIT」に4億4,300万ドル(約682億円)を投資し、異例の大規模投資として注目されています。スカラムーチ家が率いるソラリ・キャピタル(Solari Capital)は、トランプ一族関連のアメリカン・ビットコイン(American Bitcoin)に1億ドル超(約154億円)を出資しました。

技術面では、DeFiプロトコルBalancer v2で1.1億ドル(約1694億円)の不正流出が発生。アリババ(Alibaba)はJPモルガンと提携してトークン化預金決済を導入する見込みです。

本稿では、金融庁の金商法適用と業界の反発、ビットコイン市場の深刻な調整、ハーバード大学の投資、論争と投資動向、セキュリティ問題について詳しく解説します。

目次

金融庁、暗号資産105銘柄に金商法適用方針 ── 業界は猛反発、情報開示とインサイダー規制の影響

金融庁が暗号資産を金融商品取引法(金商法)の対象とする方針を固めたことが、朝日新聞により改めて報じられました。この規制は国内の暗号資産交換業者が扱うビットコイン、イーサリアムなど105銘柄に適用される見通しです。税率を現行の最大55%(雑所得)から株式と同じ20%(分離課税)への引き下げも検討されています。

金商法の適用により、以下の規制が導入される見込みです:

  1. 情報開示義務 – 交換業者が詳細な情報開示を義務付けられる。暗号資産発行者に対し、事業内容や財務状況などの透明性確保が求められる。
  2. インサイダー取引規制 – 未公表の重要情報を利用した取引が禁止される。株式市場と同様の公正性確保が目的。
  3. 不公正取引の禁止 – 相場操縦や風説の流布など、市場の公正性を害する行為が規制される。

しかし、業界からは猛反発が起きています。主な反対理由は以下の通りです:

  1. 分散型プロトコルへの適用困難 – ブロックチェーンは中央管理者が存在しない分散型システムであり、誰が情報開示義務を負うのか不明確。ビットコインやイーサリアムのような分散型暗号資産では、発行者の特定が困難。
  2. イノベーションの阻害 – 厳格な規制により、スタートアップや新規プロジェクトの参入障壁が高まる。日本の暗号資産産業の競争力低下が懸念される。
  3. グローバルスタンダードとの乖離 – 多くの国では暗号資産を金融商品として扱わず、独自の規制枠組みを構築している。日本だけが金商法を適用することで、国際的な孤立を招く可能性。
  4. 実務上の混乱 – 情報開示の具体的な内容や基準が不明確であり、実務対応が困難。インサイダー取引の定義も暗号資産特有の性質を考慮する必要がある。

メタプラネット(Metaplanet)のCEOであるサイモン・ゲロヴィッチ氏は、ビットコインETFの登場が同社にとって逆風になるとの見解に反論しました。ETFと同社ではビットコインへのエクスポージャー(投資配分)の性質が異なり、同社の戦略的優位性は維持されるとしています。

IG証券は金融庁の見解を受けて、暗号資産ETFのCFD(差金決済取引)取扱いを終了すると発表しました。対象となるのはブラックロックの「iシェアーズ ビットコイン トラスト(IBIT)」など暗号資産ETFのCFD取引です。金融庁の規制強化が実務に影響を与え始めています。

業界関係者は、税率20%への引き下げは歓迎するものの、金商法適用による規制強化には慎重な対応を求めています。パブリックコメントや国会審議を通じて、実効性のある制度設計が求められます。

ビットコイン94,000ドル割れ、市場センチメント「極度の恐怖」 ── デッドクロス発生間近

ビットコインは16日に94,000ドル(約1449万円)を割り込み、5月以来の安値を記録しました。11月14日に心理的水準である10万ドル(約1542万円)を割り込んだ後、96,000ドル(約1480万円)付近まで急落しました。市場センチメントは「極度の恐怖」に陥っています。

Glassnode(グラスノード)のデータによると、ビットコインの「デッドクロス(死の交差)」が差し迫っています。デッドクロスとは、短期移動平均線が長期移動平均線を下抜けるテクニカル指標で、弱気シグナルを示す可能性があります。ただし、過去のデータでは必ずしも下落が継続するわけではなく、歴史的パターンを市場が試す局面となっています。

ビットコインは「ストラテジー(MSTR)の道」を辿り、重要なサポートレベルを下回りました。トレーダーがこの水準を信頼できる反発ゾーンとして認識していた記憶を裏切る形となっています。ストラテジー株も同様の弱気な展開を示しており、両者の相関が注目されています。

アルトコインも大きく下落しています。ETH(イーサリアム)、XRP(リップル)、SOL(ソラナ)、ADA(カルダノ)も軒並み下落し、市場全体がリスクオフの様相を呈しています。

市場の下落要因は以下の通りです:

  1. FRBのタカ派姿勢継続 – 12月FOMCでの利下げ見送り観測が強まっており、リスク資産からの資金流出が続いている。
  2. ハイテク株の軟調 – AI関連銘柄を含むハイテク株が軟調に推移しており、ビットコインとの相関が強まっている。
  3. 長期保有者の売却継続 – 過去の報道通り、長期保有者の売却が続いており、売り圧力が強い。
  4. レバレッジポジションの清算 – 価格下落により、レバレッジをかけたロングポジションが大量に清算され、下落を加速させている。

ハーバード大学、IBIT に4億4,300万ドル投資 ── 名門大学基金の異例の大規模投資

ハーバード大学基金が、ブラックロックの「iシェアーズ・ビットコイン・トラスト(IBIT)」に4億4,300万ドル(約682億円)を投資したことが、SEC(米証券取引委員会)への提出書類で明らかになりました。9月30日時点で約681万株を保有しています。

名門大学基金によるビットコイン投資としては異例の規模です。ハーバード大学基金の総額は約500億ドル(約7兆7000億円)とされており、4億4,300万ドルの投資は全体の約0.9%に相当します。

大学基金は一般的に保守的な投資戦略を取ることが多く、ビットコインのようなボラティリティの高い資産への大規模投資は珍しいケースです。ハーバード大学基金の判断は、以下の要因に基づいていると考えられます:

  1. ポートフォリオの分散 – 伝統的資産との相関が低い資産として、分散投資効果を期待。
  2. 長期的な価値保存 – インフレヘッジや法定通貨の価値低下への対策。
  3. 機関投資家グレードの投資手段 – ETFという規制された投資手段を通じて、安全にビットコインへのエクスポージャーを獲得。
  4. 次世代資産への早期参入 – デジタル資産が将来の金融システムで重要な役割を果たすとの長期的視点。

ハーバード大学基金の投資は、他の大学基金や機関投資家にも影響を与える可能性があります。名門大学が大規模なビットコイン投資を行ったことで、暗号資産への投資が機関投資家の間でさらに正当化される可能性があります。

ピーター・シフ氏がストラテジーを「詐欺」と批判、セイラー氏に討論要求 ── シフ氏vs暗号資産コミュニティ

金の支持者として知られるピーター・シフ氏が、ストラテジーのビジネスモデルを「詐欺」と批判し、マイケル・セイラー会長に討論を要求しました。シフ氏はバイナンス共同創業者のチャンポン・ジャオ(CZ)氏にも討論を求めており、討論は12月にアラブ首長国連邦で予定されています。

シフ氏は、ストラテジーがビットコインを購入するために債券や株式を発行し、レバレッジをかけて投資する戦略を批判しています。ビットコインの価格が下落した場合、債務返済が困難になり、株主に大きな損失をもたらす可能性があると指摘しています。

セイラー氏はこれまで、ビットコイン売却の噂を強く否定し、「我々は購入しています。実際、かなりの量を購入中です」と述べています。CNBCの番組で「次の購入については月曜日に発表する」とも語り、強気姿勢を維持しています。

シフ氏vs暗号資産コミュニティの論争は長年続いており、今回の討論要求もその一環です。シフ氏は金を優れた価値保存手段と主張し、ビットコインを投機的資産と批判しています。一方、暗号資産支持者は、ビットコインが金よりも優れたデジタル時代の価値保存手段だと主張しています。

スカラムーチ家がアメリカン・ビットコインに1億ドル超出資 ── トランプ一族関連企業への大型投資

AJ・スカラムーチ氏が率いるソラリ・キャピタルが、トランプ米大統領の息子らと関係するアメリカン・ビットコインに1億ドル超(約154億円)を投じたと報じられました。

アメリカン・ビットコインは、トランプ大統領の息子であるエリック・トランプ氏が共同創業したビットコインマイニング企業です。第3四半期決算では黒字転換を果たし、売上高は99億円に増加、ビットコイン保有量は4,090 BTCに到達しています。

スカラムーチ家の投資は、トランプ一族と暗号資産業界の結びつきを象徴するものです。トランプ政権下で暗号資産に対する規制環境が改善されるとの期待から、政治的なつながりを持つ企業への投資が増加しています。

Balancer v2で1.1億ドル不正流出 ── 「丸め誤差」と「時点決済」の組み合わせを突く

2025年11月3日、DeFi(分散型金融)の主要なプロトコルであるBalancer v2と、そのコードをフォーク(派生)した複数のプロトコルが不正流出の被害を受けました。被害額は約1.1億ドル(約1694億円)に達しています。

攻撃者は「丸め誤差」と「時点決済」の組み合わせを突く手法を用いました。丸め誤差とは、コンピュータが小数点以下の計算を行う際に生じる微小な誤差です。攻撃者はこの誤差を利用して、わずかな利益を何度も積み重ねることで、大きな金額を不正に引き出しました。

各ブロックチェーンは対応を進めており、一部のプロトコルは緊急停止措置を取っています。この事件は、DeFiプロトコルのセキュリティ課題を浮き彫りにしました。スマートコントラクトの設計段階で、あらゆる攻撃ベクトルを想定する必要性が改めて認識されています。

その他の動向 ── アリババ×JPモルガン、テザーのAI投資、XRPとソラナ、Def consulting

アリババのグローバルB2Bプラットフォームは、JPモルガンと提携してトークン化預金決済を導入する見込みです。主要通貨のトークン化バージョンを活用することで、国境を越えた決済を効率化します。CNBCが報じました。

ステーブルコイン大手のテザー(Tether)は、AI搭載ヒューマノイドロボットを開発するドイツのスタートアップ企業ニューラ・ロボティクス(Neura Robotics)への10億ユーロ(約1640億円)の投資を検討しています。テザーは暗号資産以外の分野への投資を拡大しており、AI技術への関心を示しています。

コインベース(Coinbase)の幹部によると、XRP(リップル)とソラナ(Solana)の投資家関心には「非常に大きな隔たり」があります。暗号資産市場は依然として、ビットコインとイーサリアム以外のどの資産を支持すべきか「非常に不確実な」状況にあるとしています。

東証グロース上場企業のDef consultingは、同社のイーサリアムトレジャリー事業のアドバイザーに前リミックスポイント社長の田代氏が就任したと発表しました。

ビットコイン対ジーキャッシュ(Zcash)の議論が激化し、ZECが700ドル(約10万7800円)台を回復しました。プライバシーや中央集権性、市場操作を巡って双方のコミュニティが応酬しています。

おわりに

2025年11月17日は、金融庁の金商法適用方針が改めて報じられ、業界から猛反発が起きた一日となりました。情報開示義務とインサイダー取引規制の導入は、市場の透明性向上につながる一方、分散型プロトコルへの適用困難さやイノベーション阻害の懸念から、実務対応が課題となっています。税率20%への引き下げは歓迎されるものの、規制強化とのバランスが問われます。

ビットコイン市場は94,000ドル(約1449万円)割れで「極度の恐怖」に陥り、デッドクロス発生間近という深刻な調整局面にあります。5月以来の安値を更新し、市場センチメントは極めて悪化しています。FRBのタカ派姿勢継続、ハイテク株の軟調、長期保有者の売却が重なり、下落圧力が強まっています。

ハーバード大学基金の4億4,300万ドル(約682億円)投資は、名門大学基金による異例の大規模投資として注目されます。保守的な投資戦略を取る大学基金がビットコインに大規模投資を行ったことは、暗号資産が機関投資家の間でさらに正当化される転機となる可能性があります。

ピーター・シフ氏のストラテジー批判とセイラー氏への討論要求は、金vs暗号資産の長年の論争を象徴しています。シフ氏は「詐欺」と批判し、セイラー氏は購入継続を強調する中、12月の討論が注目されます。

スカラムーチ家のアメリカン・ビットコインへの1億ドル超(約154億円)出資は、トランプ一族と暗号資産業界の結びつきを示しています。政治的なつながりを持つ企業への投資が増加する中、規制環境の改善期待が背景にあります。

Balancer v2の1.1億ドル(約1694億円)不正流出は、DeFiプロトコルのセキュリティ課題を浮き彫りにしました。「丸め誤差」と「時点決済」の組み合わせを突く手法は、スマートコントラクトの設計段階での厳格な検証の必要性を示しています。

アリババとJPモルガンの提携、テザーのAI投資検討は、暗号資産技術が様々な分野で活用される可能性を示しています。トークン化預金による国際決済の効率化、AI技術への投資拡大が進んでいます。

金融庁の金商法適用は日本の暗号資産市場の大きな転換点です。業界の反発を受けながら、実効性のある制度設計が求められます。市場は深刻な調整局面にありますが、ハーバード大学のような機関投資家の参入は、長期的な成長基盤が維持されていることを示しています。規制、市場動向、機関投資家の動きを総合的に見極める必要があります。

暗号資産投資には価格変動リスク、規制リスク、セキュリティリスクなど様々なリスクが伴います。特に金商法適用による規制強化は、市場構造に大きな影響を与える可能性があります。また、DeFiプロトコルの不正流出リスクにも注意が必要です。投資判断は自己責任で行い、余裕資金の範囲内で慎重に検討してください。市場の構造的な変化を冷静に見守り、長期的な視点を持ち続けましょう。

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