金融庁、暗号資産105銘柄に金商法適用へ ── 税率最大55%から20%へ引き下げ検討、2026年国会提出。ビットコイン反発は時間の問題、STH損失レシオ95%超 ──【11月16日暗号資産市場の動向まとめ】

2025年11月16日、日本の暗号資産規制に歴史的な転換点が訪れました。金融庁が暗号資産に金融商品取引法(金商法)投資家保護と金融市場の公正性を目的として、日本の金融商品取引全般を規制する法律。従来の証券取引法に代わり、全ての金融商品を横断的にカバーする包括的な規制体系を確立した。詳しく見る →を適用し、交換業者が取り扱う105銘柄に情報開示とインサイダー取引規制を導入する方針を固めたと朝日新聞が報じました。最も注目されるのは、税率を現行の最大55%から株式と同じ20%への引き下げを検討している点です。2026年の通常国会で改正案提出を目指します。

市場では、ビットコインが1,530万円周辺で推移する中、bitbankアナリストが「下値余地残すも反発は時間の問題」との分析を発表。STH(短期保有者)損失レシオ短期保有者(STH:Short-Term Holders)が現在保有する暗号資産を売却した場合に、含み損を抱えている流通量(供給量)の割合を示す指標。STHが価格変動に対してどれだけ脆弱であるかを測る。詳しく見る →が95%超となり、売られ過ぎの水準に達しています。

専門家の見解も分かれています。ビットワイズ(Bitwise)のハンター・ホースリーCEOは市場急落でも「いまの市場環境は最も強い」と述べ、『金持ち父さん 貧乏父さん』著者ロバート・キヨサキ氏は相場急落でもビットコインを売らず、長期的に強気と強調しています。

本稿では、金融庁の金商法適用方針、市場分析、専門家の見解、セキュリティリスクについて詳しく解説します。

目次

金融庁、暗号資産105銘柄に金商法適用へ ── 税率最大55%から20%へ引き下げ検討、2026年国会で改正案

金融庁が暗号資産に金融商品取引法(金商法)を適用し、交換業者が取り扱う105銘柄に情報開示とインサイダー取引規制を導入する方針を固めたと、11月16日に朝日新聞が報じました。これは日本の暗号資産規制における歴史的な転換点となります。

最も注目されるのは、暗号資産の税率を現行の最大55%(雑所得所得税法で定められた10種類の所得のうち、他の9種類(利子、配当、不動産、事業、給与、退職、山林、譲渡、一時)のいずれにも該当しない、すべての「その他の所得」を受け入れる分類詳しく見る →として総合課税所得税の課税方法の一つ。給与所得や事業所得など、複数の種類の所得を全て合算し、その合計額から控除を差し引いた課税所得に対して、累進税率を適用して税額を計算する方式。詳しく見る →)から株式と同じ20%(分離課税所得税の課税方法の一つ。特定の種類の所得(例:株式譲渡益、退職金など)を、他の所得(給与や事業所得など)とは合算せず、個別の税率を適用して税額を計算する方式。詳しく見る →)への引き下げを検討している点です。現在、暗号資産の利益は雑所得として総合課税の対象となり、所得税と住民税を合わせて最大55%の税率が適用されています。これが株式やFXと同じ20%の分離課税になれば、投資家にとって大幅な減税となります。

金商法の適用により、以下の規制が導入される見込みです:

  1. 情報開示義務 – 暗号資産発行者に対し、事業内容や財務状況などの詳細な情報開示を義務付ける。投資家が適切な判断を下せるよう、透明性を確保する。
  2. インサイダー取引規制 – 未公表の重要情報を知る立場にある者が、その情報を利用して取引することを禁止する。株式市場と同様の規制を導入することで、市場の公正性を確保する。
  3. 不公正取引の禁止 – 相場操縦や風説の流布など、市場の公正性を害する行為を禁止する。

対象となるのは、国内の暗号資産交換業者が取り扱う105銘柄です。ビットコイン、イーサリアム、XRP、ソラナなど主要な暗号資産が含まれると予想されます。金融庁は2026年の通常国会で金商法改正案の提出を目指しています。

この方針転換の背景には、暗号資産市場の成熟化と機関投資家の参入拡大があります。現行の資金決済法に基づく規制では、情報開示やインサイダー取引規制が不十分であり、投資家保護の観点から問題視されていました。金商法を適用することで、株式市場と同等の規制環境を整備し、より健全な市場発展を促す狙いがあります。

税率20%への引き下げが実現すれば、日本の暗号資産投資環境は大幅に改善します。現在、多くの暗号資産投資家が高い税率を理由に海外への移住を検討しているとされており、税率引き下げは人材流出の防止と国内市場の活性化につながると期待されています。

ただし、報道の段階であり、正式な決定ではありません。今後、パブリックコメントや国会審議を経て、最終的な制度設計が確定します。税率20%への引き下げについても、財源確保の観点から慎重な議論が必要とされる可能性があります。

ビットコイン1,530万円周辺、反発は時間の問題か ── STH損失レシオ95%超で売られ過ぎ

bitbankアナリストによると、今週のビットコイン相場は1,530万円周辺で推移しています。米政府機関閉鎖解除後もハイテク株が軟調で、上値の重い展開が続いています。12月FOMC(連邦公開市場委員会)アメリカの金融政策を決定する最高意思決定機関のこと。政策金利(フェデラルファンド金利)の誘導目標を設定し、公開市場操作を通じて、アメリカ経済の安定と持続的な成長を目指す。詳しく見る →前の経済指標不足が懸念材料となっています。

一方、STH(短期保有者)損失レシオが95%超となり、売られ過ぎの水準に達しています。STH損失レシオとは、短期保有者(保有期間155日未満)のうち、含み損を抱えている割合を示す指標です。95%超という水準は、ほとんどの短期保有者が損失を抱えている状態を意味し、過去のデータから底値圏のシグナルとされています。

オプションOI(オープンインタレスト)分析デリバティブ市場における未決済の建玉(未決済残高)の数を分析し、特定の権利行使価格に集まる市場参加者の思惑(価格帯への期待や抵抗レベル)を把握するテクニカル分析手法。詳しく見る →では、95,000ドル(約1,464万円)がターゲットとして浮上しています。オプション市場将来の特定の期日(満期日)に、あらかじめ定められた価格(権利行使価格)で、特定の資産(原資産)を買う権利(コール)または売る権利(プット)を取引する市場。詳しく見る →では、特定の価格帯に大量のポジションが集中することがあり、それが価格の目標地点となる傾向があります。

bitbankアナリストは「下値余地残すも反発は時間の問題」との見方を示しています。短期的にはさらなる下落の可能性はあるものの、売られ過ぎの水準に達していることから、反発のタイミングが近づいているとの分析です。

市場では、12月のFOMCで利下げが見送られる可能性が高まっており、これが上値を抑える要因となっています。FRBのタカ派金融政策や経済政策において、インフレの抑制を最も重視し、景気が減速しても金融引き締め(利上げや量的引き締め)を積極的に行うべきだと主張する立場のこと。詳しく見る →姿勢が継続する中、リスク資産である暗号資産への投資意欲は減退しています。

ビットワイズCEO「市場環境は最も強い」、キヨサキ氏「売らず長期強気」 ── 専門家は楽観

ビットワイズのハンター・ホースリーCEOは、10月〜11月の急落で資産価格が下落し投資家心理が冷え込む中でも、暗号資産市場の長期ファンダメンタルズは依然として有望だと述べました。市場急落でも「いまの市場環境は最も強い」との見解を示しています。

ホースリーCEOが指摘する強気要因は以下の通りです:

  1. 機関投資家の継続的な参入 – ETFを通じた機関投資家の投資が続いており、市場の基盤が強化されている。
  2. 規制環境の改善 – 米国や日本など主要国で規制の明確化が進んでおり、投資環境が整備されつつある。
  3. インフラの成熟 – カストディサービス、決済システム、トークン化など、暗号資産を支えるインフラが充実している。
  4. 長期的な採用拡大 – 国家レベルでのビットコイン保有や企業のトレジャリー戦略など、採用が広がっている。

『金持ち父さん 貧乏父さん』の著者ロバート・キヨサキ氏は、相場急落にもかかわらず自分はビットコインも金も売らないとX(旧Twitter)で語りました。長期的に強気と強調しています。

キヨサキ氏は、法定通貨の価値が低下し続ける中で、ビットコインと金は価値の保存手段として重要だと主張しています。短期的な価格変動は気にせず、長期的な視点で保有を継続する姿勢を示しています。

今週の週刊暗号資産ニュースでは、キヨサキ氏によるビットコイン・金・銀の価格予想が高い関心を集めました。同氏は、ビットコインが長期的に大幅な上昇を見込んでいるとの見方を示しています。

豚の屠殺詐欺が国家安全保障リスクに ── チェイナリシスが警鐘

米国で巨額の被害を生む「豚の屠殺(Pig-butchering)主に暗号資産(仮想通貨)を利用した国際的な投資詐欺の手口のこと。詐欺師が被害者(「豚」と呼ばれる)と長期にわたり親密な関係を築き、最終的に高額の資金を偽の投資プラットフォームに投じさせて一気に騙し取る手法。詳しく見る →」と呼ばれる詐欺が、もはや単なる消費者被害にとどまらず、国家安全保障レベルの脅威に発展していると、ブロックチェーン分析企業チェイナリシス(Chainalysis)が警鐘を鳴らしました。

豚の屠殺詐欺とは、SNSやマッチングアプリで知り合った相手が、長期間にわたり信頼関係を築いた後、暗号資産投資などの名目で資金を騙し取る詐欺手法です。「豚を太らせてから屠殺する」という比喩から、この名称が付けられています。

チェイナリシスによると、この詐欺の背景には、東南アジアを拠点とする犯罪組織が存在しています。被害額は年間数十億ドル規模に達しており、単なる金融犯罪を超えて、以下の理由から国家安全保障リスクとなっています:

  1. 人身売買との関連 – 犯罪組織が詐欺の実行犯として、人身売買の被害者を強制労働させているケースが多数報告されている。
  2. 資金洗浄ネットワーク – 詐欺で得た資金が、国際的な資金洗浄ネットワークを通じて流通し、他の犯罪活動の資金源となっている。
  3. 外国勢力の関与 – 一部の詐欺組織が外国政府と関係を持っているとの指摘があり、地政学的なリスクとなっている。

米国当局は、暗号資産取引所や金融機関と協力して、詐欺資金の追跡と凍結を進めています。投資家は、SNSで知り合った相手からの投資勧誘には十分な注意が必要です。

その他の動向 ── サントリーNFTウイスキー、Polymarket創業者の物語

サントリーが所有するスコットランド・アイラ島の老舗蒸留所ボウモア(Bowmore)は11月5日、54年熟成の超希少シングルモルト「ボウモア ARC-54」を1本限定でリリースしました。所有証明にNFTを採用しています。

このウイスキーは、1本のみの製造で、所有権の証明と移転にNFTを活用します。高級酒類の所有証明にブロックチェーン技術を応用する事例として注目されています。NFTにより、所有者の変遷が透明に記録され、真正性の証明が容易になります。

予測市場プラットフォーム「Polymarket(ポリマーケット)」創業者シェーン・コプラン氏の物語も紹介されています。コプラン氏が予測市場を立ち上げたとき、たった1人で資金もなく、ベッドルームから始めました。現在では、グローバルなサービスへと成長しています。

2024年の米大統領選挙で、Polymarketの予測が従来の世論調査よりも正確だったことで、注目を集めました。ブロックチェーン技術を活用した予測市場は、情報の集約と意思決定の支援において、新たな可能性を示しています。

今週の主要暗号資産材料まとめでは、XRP現物ETFの米上場や世界初のZcash保有企業の91億円調達などが紹介されています。前週比で振り返る暗号資産市場の最新動向として、ビットコインやイーサリアム、XRP、ソラナ、ジーキャッシュといった主要銘柄の騰落率や注目材料が解説されています。

おわりに

2025年11月16日は、金融庁が暗号資産105銘柄に金商法を適用し、税率を最大55%から20%へ引き下げる方針を固めたという歴史的な報道が飛び込んできた一日となりました。2026年の通常国会で改正案提出を目指すこの方針は、日本の暗号資産投資環境を根本的に変える可能性があります。

税率20%への引き下げが実現すれば、株式やFXと同等の税制となり、投資家にとって大幅な減税となります。情報開示義務とインサイダー取引規制の導入により、市場の透明性と公正性が向上し、より健全な市場発展が期待されます。ただし、報道の段階であり、今後のパブリックコメントや国会審議を経て、最終的な制度設計が確定します。

市場分析では、ビットコインが1,530万円周辺で推移する中、STH損失レシオが95%超となり売られ過ぎの水準に達しています。bitbankアナリストは「反発は時間の問題」との見方を示しており、短期的な下落リスクはあるものの、底値圏が近づいている可能性があります。

ビットワイズCEOの「市場環境は最も強い」との見解、ロバート・キヨサキ氏の「売らず長期強気」との姿勢は、専門家が短期的な価格変動にとらわれず、長期的なファンダメンタルズに注目していることを示しています。機関投資家の継続的な参入、規制環境の改善、インフラの成熟、国家レベルでの採用拡大が、強気の根拠となっています。

豚の屠殺詐欺が国家安全保障リスクに発展しているとのチェイナリシスの警鐘は、暗号資産市場の負の側面を浮き彫りにしています。人身売買との関連、資金洗浄ネットワーク、外国勢力の関与など、単なる金融犯罪を超えた深刻な問題です。投資家は、SNSで知り合った相手からの投資勧誘には十分な注意が必要です。

サントリーのNFTウイスキー、Polymarket創業者の物語は、ブロックチェーン技術が様々な分野で活用されていることを示しています。高級酒類の所有証明、予測市場の情報集約など、暗号資産以外の応用事例が広がっています。

金融庁の金商法適用方針は、日本が暗号資産の健全な発展に向けて大きく舵を切ったことを意味します。税率20%への引き下げは投資家にとって朗報ですが、情報開示義務やインサイダー取引規制の導入により、より厳格な市場規律が求められます。市場の成熟化と投資家保護のバランスを取りながら、日本の暗号資産市場が次のステージへ進むことが期待されます。

暗号資産投資には価格変動リスク、規制リスク、詐欺リスクなど様々なリスクが伴います。特に税制改正は投資戦略に大きな影響を与えるため、正式な決定を待つ必要があります。また、豚の屠殺詐欺のような悪質な詐欺には十分な注意が必要です。投資判断は自己責任で行い、余裕資金の範囲内で慎重に検討してください。市場の構造的な変化を見極めながら、長期的な視点を持ち続けましょう。

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