2025年11月9日、暗号資産市場は週間を通じた急落を受けて厳しい状況が続いています。ビットコイン世界で初めて誕生し、最も有名な暗号資産(仮想通貨)のこと。特定の管理者を持たず、ブロックチェーンと呼ばれる分散型台帳技術によってP2P(ピアツーピア)で取引・管理されるデジタル通貨。詳しく見る →は週明けから続落し、AIバブル崩壊や景気後退懸念から1560万円周辺まで下落しました。ただし短期筋の97%が含み損となっており、下値余地は限定的との指摘もあります。
市場の動きを詳しく見ると、古参クジラ暗号資産(仮想通貨)市場において、極めて多額の資金や大量の暗号資産を保有・取引する大口投資家や機関のこと。その巨額の取引が市場価格に大きな影響を与える存在。詳しく見る →が再び売り圧力をかけており、小口投資家との分断が鮮明になっています。一方、JPモルガン(JPMorgan)の顧客はビットコイン現物ETFの保有量を前四半期から64%増加させており、機関投資家の関心は継続しています。
ストラテジー(Strategy)は新優先株STRE発行で7億1500万ドルを確保し、欧州での資金調達を開始しました。ビットメックス(BitMEX)暗号資産(仮想通貨)のデリバティブ(金融派生商品)取引に特化した、世界的に著名な取引プラットフォームの一つ。高レバレッジでの先物や永久スワップ契約の提供で知られる。詳しく見る →創業者アーサー・ヘイズ氏は、プライバシーコインのジーキャッシュ(Zcash)が自身のファミリーオフィスにおける第2位の流動性資産になったと明かしました。
本稿では、週間市場総括、クジラの動向、機関投資家の戦略、アナリスト見解について詳しく解説します。
週間市場総括 ── ビットコイン急落も短期筋97%含み損で下値限定的か
今週のビットコイン相場は続落となりました。週明けから急落し、AIバブル崩壊や景気後退懸念から1560万円周辺まで下落しました。ビットコインは10万ドルの大台を再び割り込み、市場心理は悪化しています。
bitbank(ビットバンク)日本国内に拠点を置く、暗号資産(仮想通貨)取引所のこと。板取引(取引所形式)に強みを持ち、比較的豊富な銘柄と高い流動性を提供することで知られる。詳しく見る →アナリストによると、短期筋の97%が含み損となっており、下値余地は限定的との指摘があります。これは、既に多くの短期投資家が損失を抱えており、さらなる大規模な売却が起きにくい状況を示唆しています。
今週は、暗号資産ETF関連デリバティブ株、債券、為替、商品、暗号資産などの原資産の価格から派生して価値が決定される金融商品のこと。「金融派生商品」とも呼ばれる。詳しく見る →の国内提供に対する金融庁の見解、ビットコインの10万ドル割れ、暗号資産の最新市場分析に関する記事が関心を集めました。金融庁は暗号資産ETF関連デリバティブの国内提供について慎重な姿勢を示しており、規制環境の整備が進められています。
主要銘柄では、ビットコイン、イーサリアム、XRPリップル社(Ripple Labs)によって開発・管理されるオープンソースの決済プロトコル「XRP Ledger」のネイティブ暗号資産。国際送金の迅速化と低コスト化を主な目的とする。詳しく見る →、ソラナ高い処理速度と低コストを特徴とする、分散型アプリケーション(dApps)構築のためのブロックチェーンプラットフォームのこと。独自のコンセンサスアルゴリズム「Proof of History」を採用し、イーサリアムの競合として注目される。詳しく見る →など全般的に下落しました。一方、プライバシーコインのジーキャッシュは過去1カ月で約4倍上昇し、時価総額100億ドルを突破するなど、個別銘柄では明暗が分かれました。
リップル(Ripple)の770億円調達やジーキャッシュ高騰の背景分析など、注目材料も多くありました。リップルは評価額400億ドルで5億ドルの資金調達を完了し、企業としての成長戦略を加速させています。
相場復調の前提条件として、bitbankアナリストは以下を挙げています。第一に、AIバブル崩壊懸念の後退です。主要ハイテク株の安定が暗号資産市場にも好影響を与えます。第二に、景気後退懸念の緩和です。マクロ経済指標の改善が投資家心理を好転させる鍵となります。第三に、ETFへの資金流入の再開です。機関投資家の需要回復が価格反発の契機となります。
クジラの売り圧力と市場構造 ── 古参保有者が売却、小口投資家との分断鮮明
ビットコインの古参クジラが再び売り圧力をかけています。長年保有を続けてきた古参クジラたちが、再びビットコインを売却しているためです。チャート上では弱気ペナントを形成しており、さらなる下落リスクに直面しています。
弱気ペナントとは、価格が三角形状に収束していくパターンで、下方へのブレイクアウトを示唆するテクニカル指標です。このパターンが確認されると、売り圧力が強まる可能性があります。
オンチェーンデータを見ると、足元の価格の軟調さはクジラの動向が主導していることが分かります。ビットコイン市場は「クジラ」が主導しており、小口投資家との分断が鮮明になっています。年初来でビットコインはわずかにプラス圏にとどまり、2025年末は10万ドル付近での調整相場となっています。
クジラと小口投資家の動きには明確な乖離が見られます。小口投資家は押し目買いを進める一方、クジラは利益確定売りを進めています。この乖離は、過去のパターンから見ると価格下落の前兆となる可能性があります。
古参クジラの売却理由としては、利益確定の他に、税務対策や資産分散の可能性が指摘されています。長年保有してきたビットコインを売却することで、多額の利益を確定させる動きです。
JPモルガン顧客がBTC-ETF保有64%増、ストラテジーは欧州で7億ドル調達
JPモルガンの顧客は第3四半期、ビットコイン現物ETFへの投資を拡大しました。同行が規制当局に提出した書類によると、9月30日時点でブラックロックのビットコインETFの保有量が前四半期から64%増加しました。これは、機関投資家や富裕層の顧客がビットコインへの投資を継続していることを示しています。
JPモルガンのジェイミー・ダイモンCEOは従来ビットコインに批判的でしたが、顧客の需要に応える形でETF保有を増やしています。機関投資家レベルでは、ビットコインが投資ポートフォリオの一部として定着しつつあります。
ストラテジーは新優先株STRE発行で7億1500万ドルを確保し、欧州での資金調達を開始しました。マイケル・セイラー氏率いる同社は、さらなるビットコイン取得を目指し、新たな資金調達市場を開拓しています。
STRE優先株は10%の利回りを提供し、投資家にとって魅力的な条件となっています。ストラテジーは米国に加えて欧州でも資金調達ルートを確保することで、ビットコイン購入戦略を加速させる狙いです。
アーサー・ヘイズ氏、ジーキャッシュが保有資産第2位に ── プライバシー回帰の潮流
ビットメックスの共同創業者であるアーサー・ヘイズ氏は、プライバシーコインのジーキャッシュが、自身のファミリーオフィス「メイルストロム・ファンド(Maelstrom Fund)」における第2位の流動性資産になったと明かしました。
ジーキャッシュは過去1カ月で約4倍上昇し、時価総額100億ドルを突破しました。アーサー・ヘイズ氏の支持やグレースケール(Grayscale)関連商品の人気拡大が上昇を後押ししています。
プライバシーコインは、取引の匿名性を重視した暗号資産です。ゼロ知識証明技術の進化により、プライバシーを保ちながら規制に準拠することが可能になりつつあります。規制当局の姿勢軟化もあり、プライバシー回帰の潮流が生まれています。
アーサー・ヘイズ氏は暗号資産業界で影響力のある人物であり、同氏の投資判断は市場に大きな影響を与えます。ジーキャッシュへの大規模投資は、プライバシーコインの将来性に対する強い信念を示しています。
アナリスト見解 ── BTC25万ドル到達は「喜ぶべきでない」、市場過熱を警告
マクロアナリストで投資家のメル・マティソン氏が、ビットコインが今年中に25万ドルへ急騰することは、見た目ほど好ましい展開ではないかもしれないと警告しました。暗号資産起業家アンソニー・ポンプリアーノ氏とのインタビューで語ったものです。
マティソン氏によると、短期間での急激な価格上昇は市場の過熱を示し、その後の大幅な調整を招く可能性があります。持続可能な上昇には、時間をかけた堅実な成長が必要との見方です。
急激な価格上昇は、投機的な資金流入を呼び込み、市場のボラティリティ株、暗号資産、為替などの価格の変動の激しさを示す度合いのこと。変動性が大きいほどボラティリティが高い(ハイボラティリティ)と表現され、リスクの高さを示す指標の一つ。詳しく見る →を高めます。その結果、長期投資家にとって不安定な環境が生まれ、健全な市場発展を阻害する可能性があります。
その他の動向 ── オンチェーンエコノミー200億ドル規模、レンディング好調
ベンチャー企業1kxによる包括的な最新調査によると、暗号資産業界のオンチェーンエコノミーは、価格投機ではなく、手数料、ユーザー、実需によって牽引され、200億ドル規模に達しています。これは、暗号資産市場が投機だけでなく、実用的な経済活動として機能していることを示しています。
ビットコインレンディング保有する暗号資産や法定通貨を、企業や個人などの借り手に貸し出し、その対価として利息収入を得る金融取引のこと。暗号資産分野では「貸し仮想通貨」とも呼ばれる。詳しく見る →業者Ledn(レドン)は、今年の融資実行額が過去最高の四半期業績となる10億ドルを突破したと発表しました。ビットコインを担保とした融資サービスの需要が高まっており、暗号資産の金融商品としての利用が拡大しています。
アフリカの決済大手Flutterwave(フラッターウェーブ)は、ブロックチェーン基盤を活用して国境を越えた決済をより迅速かつ安価に行うため、ポリゴン・ラボ(Polygon Labs)と提携しました。新興国における暗号資産技術の実用化が進んでいます。
おわりに
2025年11月9日の週間総括として、ビットコインは週明けから急落し厳しい状況が続きましたが、短期筋の97%が含み損となっており下値余地は限定的との指摘もあります。古参クジラの売り圧力と小口投資家の買い増しという分断が鮮明になっており、市場はクジラ主導の展開となっています。
一方、JPモルガンの顧客がビットコインETF保有を64%増加させたことは、機関投資家レベルでの関心が継続していることを示しています。ストラテジーの欧州での7億ドル調達は、企業のビットコイン購入戦略が多様化していることを表しています。
アーサー・ヘイズ氏のジーキャッシュ大規模保有は、プライバシーコイン回帰の潮流を象徴しています。一方、アナリストはビットコインの急激な価格上昇を警戒しており、持続可能な成長の重要性を指摘しています。
オンチェーンエコノミーが200億ドル規模に達し、レンディング業者の融資実行額が10億ドルを突破したことは、暗号資産が投機だけでなく実用的な経済活動として機能していることを示しています。
市場は短期的な調整局面にありますが、機関投資家の参入、企業の戦略的保有、実用的な経済活動の拡大は継続しています。価格の変動に一喜一憂せず、長期的な視点で市場の構造変化を見守ることが重要です。
※暗号資産投資には価格変動リスク、流動性リスク、市場構造の変化によるリスクなど様々なリスクが伴います。特にクジラの動向や短期的な市場心理に左右されやすい局面では、冷静な判断が求められます。投資判断は自己責任で行い、余裕資金の範囲内で慎重に検討してください。引き続き、市場の動向を注視していきましょう。
