2025年11月7日、日本の暗号資産市場で歴史的な動きがありました。みずほ、三菱UFJ、三井住友の3メガバンクが共同でステーブルコインを発行することが正式発表され、金融庁の「FinTech実証実験ハブ・決済高度化プロジェクト」の初の支援案件として承認されました。信託型の枠組みで100万円の送金上限が撤廃され、円建てに加え米ドル建ても視野に入れています。
米国では、証券大手チャールズ・シュワブ(Charles Schwab)が2026年上半期にビットコインとイーサリアムの現物取引を開始することを発表しました。顧客資産約1800兆円を持つ同社の参入で、暗号資産市場の主流化が加速する見通しです。
ビットコインETFは6日連続の資金流出に終止符を打ち、ブラックロック(BlackRock)主導で2億3990万ドルの流入を記録しました。JPモルガン(JPMorgan)は理論上の適正価格を17万ドルと試算し、「ビットコインは金より割安」との見解を示しています。一方、ARK Investのキャシー・ウッド氏はステーブルコインの台頭を理由にビットコイン予測を30万ドル下方修正しました。
金融審議会第5回会合では、暗号資産レンディング事業を金融商品取引法の規制対象とする方針が示されましたが、委員からは「重厚すぎる」、事業者からは「存続できない」との懸念が噴出しています。
本稿では、3メガバンクのステーブルコイン、米証券大手の参入、規制動向、市場分析について詳しく解説します。
3メガバンク共同ステーブルコイン正式発表 ── 単一ブランドで発行、100万円上限撤廃
みずほ、三菱UFJ、三井住友の3メガバンクが共同でステーブルコインを発行することが正式に発表されました。金融庁は「FinTech実証実験ハブ・決済高度化プロジェクト」を新設し、この共同ステーブルコイン発行を初の支援案件として承認しました。片山財務相も支援を表明し、国を挙げた金融イノベーション推進が本格始動します。
3メガバンクは単一ブランドでステーブルコインを発行する方針です。信託型の枠組みを採用し、従来100万円だった送金上限が撤廃されます。円建てに加え米ドル建ても視野に入れており、国際送金への対応も検討されています。
この取り組みは、日本の金融機関が本格的にデジタル通貨分野に参入する画期的な動きです。3メガバンクの共同発行により、信頼性と利便性を両立したステーブルコインの普及が期待されます。企業間決済や国際送金での活用が見込まれ、日本の決済インフラの高度化につながる可能性があります。
金融審議会で暗号資産規制に懸念噴出 ── レンディング金商法適用案に「重厚すぎる」
金融庁は7日の第5回金融審議会で、暗号資産レンディング事業を金融商品取引法の規制対象とする方針を示しました。年利10%台のサービスで利用者がリスクを負う一方、事業者に管理義務がない点が問題視されたためです。
しかし、これまでの議論を総括する事務局案に対し、委員からは「重厚すぎる」、事業者からは「存続できない」との懸念が噴出しました。暗号資産規制を金融商品取引法に統合する方向性は維持されていますが、過度な規制が事業者の負担となり、イノベーションを阻害する可能性が指摘されています。
レンディング事業は、利用者が暗号資産を事業者に貸し出し、利息を得る仕組みです。高利回りが魅力ですが、事業者が破綻した場合に資産が返還されないリスクがあります。金融庁は利用者保護を強化する姿勢ですが、事業者の実態に即した柔軟な規制設計が求められています。
米証券大手チャールズ・シュワブが暗号資産取引開始へ ── 顧客資産1800兆円
米証券大手チャールズ・シュワブが2026年上半期にビットコインとイーサリアムの現物取引を開始することを発表しました。顧客資産約1800兆円を持つ同社の参入で、暗号資産市場の主流化が加速する見通しです。
チャールズ・シュワブの調査によれば、ETF投資家の45%が暗号資産ETFに関心を持っており、債券ETFと並ぶ人気となっています。同社の暗号資産取引開始は、この高い需要に応えるものです。伝統的な証券会社が暗号資産取引を提供することで、一般投資家のアクセスが容易になり、市場の裾野が広がります。
同社の参入は、暗号資産が投資商品として確立されつつあることを示しています。規制整備が進み、機関投資家や個人投資家が安心して取引できる環境が整いつつある中、大手証券会社の参入は市場の信頼性向上に寄与します。
ビットコインETF6日連続流出に終止符 ── ブラックロック主導で2.4億ドル流入
米国の現物ビットコインETFは6日、2億3990万ドルの純流入を記録し、過去6日間で約14億ドルが流出したスランプに終止符を打ちました。ブラックロックが主導する形で資金が戻り、市場心理の改善が見られます。
トレーダーの間では、ビットコイン価格が50週間指数平滑移動平均線を維持できれば反発局面が近いとの見方が広がっています。この移動平均線は長期的なトレンドを示す重要な指標であり、強気派はこの水準の防衛に注目しています。
ビットコインは10万ドル台を維持していますが、市場心理は依然として脆弱です。長期保有者による416億ドルの大量売却とETFからの9億ドル流出で市場は動揺しており、個人投資家のセンチメントは過去最悪レベルに落ち込んでいます。一方、ビットワイズ(Bitwise)幹部は機関投資家の投資意欲は旺盛で、年末の最高値更新もあり得ると指摘しました。
JPモルガン「ビットコインは金より割安、適正価格17万ドル」── 6〜12ヶ月で到達予想
米金融大手JPモルガンのアナリストはレポートで、今後数カ月にわたりビットコインに大幅な上昇余地があるとの見方を示しました。理論上の適正価格を17万ドルと試算し、「ビットコインは金より割安」との見解を発表しています。
JPモルガンは6〜12ヶ月以内にビットコインが約17万ドルに達する可能性があると予想しています。この強気予測の背景には、市場のレバレッジがリセットされた点と金のボラティリティと比較した際の割安感があります。金とビットコインを価値保存手段として比較すると、現在のビットコイン価格は割安水準にあるとの分析です。
一方、悲観的な見方も存在します。伝統金融アナリストの中には、この1か月の下落トレンドが続けば、ビットコイン価格は最大で約50%下落し、5万6000ドルまで下がる可能性があると警告する声もあります。ただし、グラスノード(Glassnode)のデータではパニック売りの兆候は見られず、市場は脆弱な均衡状態にあると分析されています。
キャシー・ウッド氏がビットコイン予測を30万ドル下方修正 ── ステーブルコインの台頭
ARK Investのキャシー・ウッド氏は、ビットコインの長期予測を下方修正したことを明らかにしました。ARKの2030年におけるビットコインの強気予測は150万ドルでしたが、ステーブルコインの急速な普及により30万ドル引き下げました。
新興国経済において、ステーブルコインが予想を超える速度で価値保存手段として普及していると、ウッド氏は指摘しています。ステーブルコインは法定通貨に連動するため価格が安定しており、インフレに悩む新興国では、ビットコインよりも実用的な選択肢となっています。
この予測修正は、暗号資産市場の構造変化を示しています。ビットコインが「デジタルゴールド」として価値保存手段の役割を担う一方、日常的な決済や送金ではステーブルコインが優位に立つという棲み分けが進んでいます。
企業の暗号資産戦略 ── ロビンフッドはビットコイン財務戦略検討中
米ロビンフッド(Robinhood)がビットコイン財務戦略導入を検討していることが明らかになりました。第3四半期の暗号資産収益は300%超急増の約413億円を記録しており、上場企業のビットコイン保有トレンドが加速する可能性があります。
JPモルガン・チェース(JPMorgan Chase)のジェイミー・ダイモンCEOはステーブルコインの将来は不透明としながらも事業参入を表明しました。他の銀行との共同構築も検討しており、大手金融機関のステーブルコイン事業への関心が高まっています。
イーサリアム年内5000ドル回復予想も ── SNS心理は強気転換
イーサリアムは直近の下落局面を経て、アナリストの一部から最適な蓄積ゾーンに突入したとの見方が広がっています。年内5000ドル回復を予想する声も出ています。
イーサリアムの価格が小幅に上昇した6日、SNS上のトレーダー心理が一転して強気に傾きました。サンティメント(Santiment)の分析によると、市場全体が依然として警戒ムードにあるなか、イーサリアムは相対的な回復を見せています。
ただし、クジラ(大口投資家)の買い増しにもかかわらず、一時3331ドルまで下落する場面もあり、不安定な状況が続いています。
ステーブルコイン規制と標準化 ── サークル・コインベース提言、7団体がコンソーシアム設立
サークル(Circle)社とコインベース(Coinbase)が米財務省にジーニアス法施行に関する提言を提出しました。ステーブルコインの公平な競争条件の確保や利回りをめぐる過剰規制の回避などを求めています。
ファイアブロックス(Fireblocks)やソラナ財団など7団体がブロックチェーン・ペイメンツ・コンソーシアムを設立しました。年間10兆ドル超のステーブルコイン取引を扱う団体が集まり、クロスチェーンのステーブルコイン取引を標準化し、従来の決済と同様の利便性を図ります。
テザーがトークン化証券市場加速 ── 2030年に1500兆円規模へ
ステーブルコイン大手テザー(Tether)が資産運用会社クレインシェアーズ(KraneShares)、ビットフィネックス・セキュリティーズ(Bitfinex Securities)と戦略提携しました。トークン化証券市場は2030年に約1500兆円規模へ急拡大の見込みです。
テザーのトークン化部門ハドロン(Hadron)は、ETF発行企業クレインシェアーズと暗号資産取引所ビットフィネックスと提携し、トークン化投資商品を開発します。
XRP底打ちの兆しか ── 新規ウォレット急増、クジラ売り減速
XRPは4日に日足終値で2.20ドルとなり、7月4日以来の安値を記録しました。その後、6日にかけて月間安値の2.06ドルから16%反発し、2.40ドルまで回復しましたが、相場全体の慎重なムードの中で強気優位を取り戻すには至っていません。
新規ウォレットが8ヶ月ぶりの高水準に達し、クジラの売りが減速していることから、底打ちの兆しが見られます。
プライバシーコイン再評価 ── Zcashがトップ20入り、2018年以来の600ドル到達
プライバシー重視のプロトコルであるZcashは、業界の専門家やインフルエンサーの新たな支持を得ており、今年はトークン価格が数年ぶりの高値を記録しています。時価総額で暗号資産のトップ20に返り咲き、約7年ぶりに600ドル台で取引されています。
プライバシー回帰が生んだ市場の潮流として、ゼロ知識証明技術の進化と規制当局の姿勢軟化が背景にあります。
その他の動向 ──ドージコインETF、ブロック決算、コインベース罰金
ビットワイズがドージコイン(Dogecoin)ETFで8(a)手続きを採用し、11月26日頃に自動承認される可能性があります。SECの介入がなければ上場実現へ向かいます。
ジャック・ドーシー氏率いるフィンテック企業ブロック(Block)の株価が、時間外取引で約12%下落しました。第3四半期の決算がアナリスト予想を下回ったことが嫌気されました。
アイルランド中央銀行がコインベース欧州法人にマネーロンダリング対策違反で約38億円の罰金を科しました。取引監視システムの設定ミスで総額31兆円相当の取引が未監視でした。
分散型金融リクイディティプロバイダーのエリクサー(Elixir)は、ストリーム・ファイナンス(Stream Finance)の9300万ドルの損失の影響を受け、独自の合成ステーブルコインdeUSDのサポートを停止しました。
その他トピックス ── マクロ経済、Web3、予測市場
ブリッジウォーター(Bridgewater)創設者レイ・ダリオ氏が、FRBの量的緩和再開は従来と異なりバブルへの刺激になると警告しています。現在の状況下でのQE拡大は、実質金利の低下や株価収益率の上昇につながり、テック・AI・グロース株や金などの価格を押し上げる可能性があります。
10月のWeb3業界では、相場下落でもブロックチェーンゲームと分散型金融が依然として主要な活動領域となりました。
Google Financeに予測市場プラットフォームのポリマーケット(Polymarket)とカルシ(Kalshi)からのデータが統合されることが明らかになりました。
SBIデジタルマーケット(SBI Digital Markets)はチェーンリンク(Chainlink)と戦略的パートナーシップを締結し、伝統金融とDeFiの橋渡しをすると説明しています。
おわりに
2025年11月7日は、日本の暗号資産市場にとって歴史的な一日となりました。3メガバンクの共同ステーブルコイン発行が正式発表され、金融庁の全面支援のもと、国を挙げた金融イノベーション推進が本格始動しました。単一ブランドでの発行、100万円送金上限の撤廃、米ドル建ても視野に入れた構想は、日本の決済インフラを大きく変革する可能性を秘めています。
米国では、証券大手チャールズ・シュワブの暗号資産取引参入が発表され、顧客資産1800兆円を持つ同社の参入は市場の主流化を加速させます。ビットコインETFは6日連続の流出に終止符を打ち、機関投資家の関心が戻りつつあることを示しました。
JPモルガンの17万ドル予想とキャシー・ウッド氏の30万ドル下方修正は、市場の見方が分かれていることを示しています。ステーブルコインの台頭が価値保存手段としてのビットコインの役割に影響を与える一方、金との比較では依然として割安との分析もあります。
金融審議会では暗号資産規制に懸念が噴出し、過度な規制がイノベーションを阻害する可能性が指摘されました。利用者保護と事業者の実態に即した柔軟な規制設計が求められています。
プライバシーコインZcashの再評価、XRPの底打ちの兆し、ドージコインETFの上場可能性など、アルトコイン市場も活発な動きを見せています。ステーブルコイン規制と標準化、トークン化証券市場の拡大は、暗号資産と伝統金融の融合を加速させています。
市場は短期的な調整局面にありますが、規制整備、機関投資家の参入、伝統金融との統合は着実に進展しています。価格の変動に一喜一憂せず、構造的な変化と長期的なトレンドを見極めることが重要です。
暗号資産投資には価格変動リスクが伴います。投資判断は自己責任で行い、余裕資金の範囲内で慎重に検討してください。今後も暗号資産市場の動向を注視していきましょう。
※本記事は情報提供を目的としており、投資勧誘を目的としたものではありません。暗号資産投資には価格変動リスク、流動性リスク、システムリスクなど様々なリスクが伴います。投資判断は必ずご自身の責任で行い、余裕資金の範囲内で慎重に検討してください。過去の実績は将来の成果を保証するものではありません。
