ビットコイン10万ドル死守、イーサリアム失速、リップル躍進、揺れる市場と迫る規制の波 ─【11月6日 暗号資産市場の動向まとめ】

2025年11月6日、ビットコインは激しい変動を経て10万ドル台を回復しました。一時9万9000ドル付近まで下落し、ロング勢の大量清算で底打ち観測も出ましたが、10万3000ドルまで反発しました。トランプ大統領は改めて「米国をビットコイン超大国にする」と宣言し、中国との競争を理由に挙げました。

市場では重要な節目となる365日移動平均を下抜けたことで、トレーダーの警戒感が強まっています。ギャラクシーデジタルは2025年末のビットコイン価格予想を18万5000ドルから12万ドルへ大幅に下方修正しました。一方、Jan3(ジャン・スリー)創業者サムソン・モウ氏は「ビットコインの強気相場はまだ始まっていない」との見方を示しています。

イーサリアムは一時3000ドル目前まで下落し、年初来上昇分をすべて消失しました。トム・リー氏率いるビットマイン社は17億ドルの含み損を計上し、暗号資産財務戦略に暗雲が立ち込めています。

一方、リップル社は5億ドルの資金調達を完了し、評価額は400億ドルに達しました。マスターカード、ジェミナイとの歴史的提携も発表され、決済にRLUSD(リップル・ユーエスディー)を使用する計画を明らかにしました。規制面では、イギリスとカナダが米国に追随してステーブルコイン規制を推進しています。

本稿では、市場の激しい変動、価格予想の見直し、企業戦略、規制動向について詳しく解説します。

目次

ビットコイン10万ドル死守も激しい変動 ── 365日移動平均下抜けで警戒感

ビットコインは5日に一時9万9000ドル付近まで下落し、6月以来初めて10万ドルを割り込みました。その後、10万3000ドルまで反発しましたが、ロング勢の大量清算が発生し、市場は激しい変動に見舞われました。底打ち観測も出ていますが、不安定な状況が続いています。

重要な節目となる365日移動平均を下抜けたことで、トレーダーの警戒感が強まっています。この移動平均線は長期的なトレンドを示す重要な指標であり、下抜けは弱気シグナルとして解釈されることが多いためです。

弱気相場を回避するために必要な3つの条件として、長期保有者による約450億ドル相当のビットコイン売却の停止、AI関連株の急落によるリスクオフモードの改善、そして機関投資家の需要回復が挙げられています。

トランプ大統領はフロリダ州マイアミで開催されたアメリカ・ビジネス・フォーラムで、「米国をビットコイン超大国にする」と改めて宣言しました。中国との競争を理由に挙げ、暗号資産政策への強い意欲を示しました。しかし、米国史上最長の政府閉鎖が続く中、デジタル資産市場構造法案を巡る与野党協議は難航しています。

ビットバンクの市場分析によると、ビットコインは売り一巡で10万ドルを死守しましたが、戻りを試す明確な材料は乏しい状況です。オプション市場では、トレーダーがさらなる下落をヘッジする動きが見られており、慎重なセンチメントが続いています。

一方、楽観的な見方も存在します。Jan3創業者サムソン・モウ氏は、今週ビットコインが10万ドルを下回ったにもかかわらず、「ビットコインの強気相場はまだ始まっていない」との見方を示しました。マイアミ市長フランシス・スアレス氏は、2021年末から受け取っているビットコイン建て給与が現在約300%の含み益になっていると明かし、市場の急変にも「全く心配していない」と述べています。

ギャラクシーが価格予想を大幅下方修正 ── 18万5000ドルから12万ドルへ

投資会社ギャラクシーデジタルは、2025年末のビットコイン価格予想を18万5000ドルから12万ドルへ大幅に引き下げました。当初の強気予想を撤回した理由として、市場が成熟期に入り、機関投資家フローが支配的になるため、上昇ペースが鈍化すると予測し直したことを挙げています。

ギャラクシーのリサーチ責任者は、ビットコインの4日間の急落を受けて予想を修正しました。市場のダイナミクスが変化しており、以前のような急激な価格上昇は期待できないとの判断です。機関投資家の参入が進む一方で、投機的な資金流入が減少していることが背景にあります。

この下方修正は、市場全体のセンチメントに影響を与える可能性があります。ギャラクシーデジタルは暗号資産業界で影響力のある企業であり、その価格予想は多くの投資家が参考にしています。12万ドルという新たな目標値は、現在の価格水準から約20%の上昇を見込むものですが、当初の予想と比べると大幅に保守的です。

イーサリアム急落で年初来上昇分が消失 ── 財務企業に巨額含み損

イーサリアムは一時3000ドル目前まで下落し、7月中旬以来の水準となりました。年初来の上昇分をすべて消失し、投資家に大きな衝撃を与えています。

特に深刻な影響を受けているのが、イーサリアムを財務戦略に組み込んでいる企業です。ウォール街の著名ストラテジスト、トム・リー氏が率いるビットマイン社は、イーサリアムが3400ドルを下回ったことで17億ドル(約2600億円)の含み損を計上しました。同社は企業による暗号資産保有戦略の見直しを進めています。

イーサリアム財務企業は13億ドルの巨額含み損を抱え、市場暴落で苦境に立たされています。企業が暗号資産を財務戦略に組み込む動きは広がっていましたが、価格下落により、そのリスクが露呈した形です。

イーサリアムの下落は、ビットコイン以上に大きな影響を与えています。イーサリアムETFの資金流入が停滞していることも、価格下落の要因となっています。

企業の暗号資産戦略 ── ソラナ・カンパニーは自社株買い、スイスでは新企業設立

暗号資産財務企業の戦略転換が加速しています。ソラナ保有企業のソラナ・カンパニーは最大1億ドル(約153億円)の自社株買いプログラムを承認しました。株価対策が広がっており、企業は保有する暗号資産の価値だけでなく、株価の維持にも注力しています。

スイスでは、ビットコイン財務企業FUTUREが創設されました。下落相場にもかかわらず約53億円の資金調達を完了し、出資者や支援者に著名な企業や人物が名を連ねています。今後の事業展開に注目が集まります。

ストラテジー社のもう一つの戦略が形になりつつあります。同社の永久優先株STRCが過去最高値を記録し、マイケル・セイラー会長の戦略の一端が明らかになっています。永久優先株とは満期のない優先株で、配当が優先的に支払われる証券です。

メタプラネットは保有するビットコインを担保に1億ドル(約150億円)規模の資金調達を実施しました。ビットコイン担保融資を活用して追加購入を進める戦略です。

ビットワイズの最高投資責任者マット・ホーガン氏は、デジタル資産トレジャリー企業が市場で差別化を図るためには「困難な道」を選ぶ必要があると指摘しました。安易な道を選べば淘汰されるとの警告です。単にビットコインを保有するだけでなく、独自の価値創造が求められています。

リップル社が5億ドル調達で評価額400億ドルへ ── マスターカードと提携

リップル社はフォートレス・インベストメント・グループとシタデル・セキュリティーズが主導する5億ドルの資金調達を完了しました。これにより同社の評価額は400億ドルに達しました。

リップル社は年次イベント「Swell」において、決済大手のマスターカード、ウェブバンク、暗号資産取引所のジェミナイとの新たな提携を発表しました。ジェミナイが提供する法人向けクレジットカード「Gemini Credit Card」で、リップルのステーブルコインRLUSDが決済に使用される計画です。

この提携は歴史的なものとされており、伝統的な決済ネットワークと暗号資産の融合を象徴しています。マスターカードの決済ネットワークにRLUSDが組み込まれることで、ステーブルコインの実用化が大きく前進します。

リップル社は機関投資家向けの総合金融インフラプロバイダーへと変貌を遂げています。決済、カストディ、ブローカレッジを垂直統合し、XRPと独自のステーブルコインRLUSDを軸にした金融エコシステムの構築を進めています。

英国・カナダがステーブルコイン規制推進 ── 米国に追随、グローバル規制の流れ

イギリスとカナダが相次いでステーブルコイン規制計画を発表しました。イングランド銀行は米国と足並みを揃えた規制枠組みの導入を表明し、カナダも法定通貨担保型発行者への規制強化を打ち出しました。

イギリスは米国が7月にステーブルコイン規制法を成立させたことを受け、同様の規制体制を整備する方針です。カナダは2025年度の連邦予算案で、法定通貨担保型ステーブルコインを規制する新たな立法方針を示しました。

グローバルでステーブルコイン規制が進む中、日本でも動きがあります。金融庁の金融審議会「暗号資産制度に関するワーキング・グループ」では、暗号資産規制を金融商品取引法に統合する方向で議論が進んでいます。

ホワイトハウス報道官は、バイナンス創業者CZ氏への恩赦について、徹底的に精査した上で判断を行なっていると妥当性を強調しました。CZ氏の恩赦を巡っては批判もありますが、政府は慎重なプロセスを経たことを強調しています。

伝統金融とトークン化の加速 ── ウィズダムツリー、フランクリン、S&P指数

伝統金融機関による暗号資産技術の採用が加速しています。ウィズダムツリーはチェーンリンクと提携し、トークン化プライベートクレジットファンドCRDTのNAVデータをブロックチェーン上に記録する取り組みを開始しました。機関投資家の分散型金融参入を促す新たな取り組みです。

フランクリン・テンプルトンは香港でトークン化された米ドル建てマネーマーケットファンドの提供を開始しました。ルクセンブルグ登録で短期米国債を裏付けとし、香港金融管理局のフィンテック2030計画下での初の取り組みとなります。

ディナリ社はチェーンリンクと提携し、S&Pデジタルマーケッツ50指数をオンチェーンで検証可能にします。米国株35社と主要暗号資産15銘柄で構成される初のトークン化ベンチマークが第4四半期にローンチ予定です。

国内では、キリフダが企業の売掛債権に1口1万円から投資できるトークン化債権マーケットプレイス「おカネのこづち」を年内公開します。企業の資金繰り支援と個人投資家の社会貢献ニーズを結びつけるプラットフォームです。

ロビンフッド決算好調 ── 暗号資産取引収益が前年比339%増

投資アプリのロビンフッドは2025年7〜9月期決算で、暗号資産取引収益が前年比4倍増(339%増)を記録したと発表しました。予想を上回る好決算となり、同社がデジタル資産とグローバル市場での地位を強化していることを示しました。

暗号資産取引収益の急増は、ビットコインやイーサリアムなどの取引量が大幅に増加したことが要因です。ロビンフッドは若年層を中心に人気があり、暗号資産取引の利便性が評価されています。予測市場も拡大中であり、事業の多角化が進んでいます。

新プロジェクト動向 ── モナド、SOLプラネット、MegaETH配分発表

新規レイヤー1ブロックチェーン「モナド」が11月24日にメインネットをローンチすると発表しました。毎秒1万件のトランザクション処理とEVM互換を実現する次世代レイヤー1です。総額2億4000万ドルを調達し、約23万人へのエアドロップも実施予定です。

ソラナブロックチェーンに特化した戦略企業「株式会社SOLプラネット」が2025年11月4日に設立されました。外資系金融出身の野坂幸司氏がCEOを務め、企業向けにコンサルティングからインフラ構築まで一貫したサービスを提供します。

ソラナHeliusのMert Mumtaz CEOは、暗号資産ではプライバシー領域が最後に残った課題であり、市場が未開拓であるため「最後の1000倍」の成長チャンスが期待できると主張しました。ゼロ知識証明技術が実用化された今が転換点としています。

イーサリアムL2のMegaETHが独自トークンMEGAのパブリックセール配分方法を発表しました。5日間で13億9000万ドルの入札が集まったこのセールでは、既存コミュニティメンバーや長期保有意向を示した参加者を優遇する仕組みが採用されています。

市場分析 ── 半減期サイクル終了説と量子コンピューター脅威の実態

大手マーケットメイカーのウィンターミュートが暗号資産市場の最新レポートを公開しました。ビットコインのパフォーマンスが株式など他のリスク資産より低迷している理由を分析しています。

ウィンターミュートは、ビットコインの半減期サイクルは終了したとの見方を示しました。従来の半減期が主導する4年サイクルはもはや価格動向と無関係であり、新たな価格法則が支配していると指摘しています。かつてのビットコイン市場は半減期を中心に価格が動いていましたが、機関投資家の参入により市場構造が変化しました。

量子コンピューターによるビットコイン破綻論についても議論があります。量子コンピューターが2〜3年以内にビットコインの暗号を破るという予測は、ポスト量子ソリューションのマーケティングに関連するものとの指摘がされています。本当のタイムラインはより長期的であり、過度な不安を煽るべきではないとの見方です。

SBIホールディングス代表取締役会長兼社長CEOの北尾吉孝氏は、「10年もしないうちに、すべてのアセットはトークナイズされる」と述べ、着実かつ大胆な取り組みを進めています。

おわりに

2025年11月6日は、ビットコインが10万ドルを死守したものの、365日移動平均を下抜けたことで市場の警戒感が強まる一日となりました。ギャラクシーデジタルの価格予想下方修正は、市場の成熟化と上昇ペースの鈍化を示唆しています。一方、サムソン・モウ氏やマイアミ市長の楽観的な見方は、長期的な強気相場への期待を維持しています。

イーサリアムの急落とトム・リー氏のビットマイン社の巨額含み損は、暗号資産財務戦略のリスクを浮き彫りにしました。企業による暗号資産保有は広がっていますが、価格変動への対応力が問われています。ソラナ・カンパニーの自社株買いやメタプラネットの担保融資は、企業戦略の多様化を示しています。

リップル社の5億ドル調達と評価額400億ドル到達、マスターカードとの歴史的提携は、ステーブルコインの実用化が新たな段階に入ったことを示しています。イギリスとカナダのステーブルコイン規制推進は、グローバルな規制調和の流れを加速させるでしょう。

伝統金融とトークン化の融合は着実に進展しており、ウィズダムツリー、フランクリン・テンプルトン、S&P指数のオンチェーン化は、100兆ドル規模の市場への暗号資産技術導入を象徴しています。ロビンフッドの暗号資産取引収益339%増は、若年層を中心とした需要の強さを裏付けました。

市場は短期的な調整局面にありますが、規制整備、伝統金融との統合、技術革新は継続しています。半減期サイクル終了説や量子コンピューター脅威の実態についての議論は、市場の成熟化を示しています。トランプ大統領の「ビットコイン超大国」宣言は、米国の暗号資産政策への強い意欲を改めて示しました。

価格の変動に一喜一憂せず、長期的な視点で市場の構造変化を見守ることが重要です。今後も暗号資産市場の動向を注視していきましょう。

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