2025年11月5日、ビットコインが一時10万ドルを割り込み、6月以来初めて大台を下回りました。暗号資産ロングポジションで16億ドルの清算が発生し、イーサリアムは20%急落して約1500億円規模の清算連鎖を引き起こしました。市場は激しい変動に見舞われましたが、強気派のアナリストは年末に向けた反発を予想しています。
市場急落の要因として、コロンビア大学教授は暗号資産トレジャリー企業が下落を加速させていると指摘しました。一方、ストラテジー社はユーロ建て優先株を発行して資金調達を欧州に拡大し、次の弱気市場でもビットコイン売却の必要はないとアナリストが分析しています。メタプラネットはビットコイン担保に153億円を借り入れ、追加購入を進めています。
リップル社の動きも活発です。同社のステーブルコインRLUSDが発行1年未満で時価総額10億ドルを突破し、米ドル建てステーブルコイン上位10位に入りました。米国でプライムブローカレッジ事業を開始し、総合金融インフラ化を進めています。
規制面では、ホワイトハウスがバイナンス創業者CZ氏の恩赦を正当化し、カナダはステーブルコイン規制を2025年度予算案で明記しました。伝統金融との統合も進み、UBSとチェーンリンクが100兆ドル規模の市場で初のオンチェーン・トークン化ファンド償還を実行しました。
本稿では、市場急落の詳細、企業戦略、規制動向、そして反発の可能性について詳しく解説します。
ビットコイン10万ドル割れと市場の激震 ── 清算16億ドル、強気派は年末反発予想
ビットコインが一時10万ドルを割り込み、6月23日以来初めて大台を下回りました。価格は一時9万9000ドル台まで下落した後、10万2000ドル付近まで反発しましたが、暗号資産ロングポジションで16億ドルの清算が発生し、市場に大きな衝撃を与えました。
市場急落の要因として、米ドル高、株式市場の低迷、機関投資家の資金流出、デリバティブ市場での大規模な清算が複合的に発生したことが挙げられます。現物ETFの資金フローがマイナスに転じたことが直接的な原因とされており、ETFからの資金流出が市場の重要な転換点となりました。
中国がアメリカ製品への24%の追加関税を停止したことで、米中貿易摩擦の緩和兆しが見られる中、ビットコインは約3年にわたる上昇トレンドを通じて強力な支持線として機能してきた重要水準付近で取引されています。この水準を維持できるかが、今後の展開を左右する鍵となります。
一方、強気派のアナリストは依然として楽観的な見方を示しています。資産運用会社ビットワイズ幹部とアーサー・ヘイズ氏は、一時的な下落にもかかわらず年末に向けた反発を予想しています。ただし、2025年末に向けた強気予想は実現しない可能性が高まっており、2026年を巡ってアナリストの見方は分裂しています。
ビットコイン反発の5大シグナルとして、ETFフローの回復、機関投資家の需要増加、テクニカル指標の改善、マクロ経済環境の安定、そして中国の関税停止による貿易環境の改善が挙げられています。特にETFフローが鍵を握るとされており、資金流入が再開すれば価格反発の契機となる可能性があります。
暗号資産トレジャリー企業が市場を圧迫 ── 教授が指摘、ストラテジーは売却不要
コロンビア大学ビジネススクールの非常勤教授オミド・マレカン氏は、ビットコイン価格の下落要因を分析する際には、デジタル資産トレジャリー企業の影響を無視できないと主張しています。トレジャリー企業による大量購入が価格を押し上げてきた一方、現在は買いペースの鈍化が下落圧力となっているとの見方です。
一方、ビットコインアナリストのウィリー・ウー氏によると、マイケル・セイラー氏率いるストラテジー社は、次の大幅な暗号資産市場の下落局面においても債務返済のために保有ビットコインを売却する必要はないとしています。同社の財務構造は、長期的なビットコイン保有を前提に設計されており、弱気市場でも耐えられる体制が整っているとの分析です。
ストラテジー社はユーロ建て永久優先証券「ストリーム」を発行し、資金調達を欧州に拡大しました。第3四半期決算発表から1週間も経たないうちに、国際的な永久優先株の発行を実現し、ビットコイン購入資金の調達ルートを多様化しています。
対照的に、半導体メーカーのシークアンス社は保有するビットコインの約30%を売却して転換社債の半分を償還したと発表しました。この動きを同社は「戦略的資産の再配分」と説明していますが、株価は16%急落しました。ビットコイン売却が市場に否定的に受け止められたことを示しています。
国内では、メタプラネットがビットコイン担保に153億円を借り入れ、追加購入を進めています。リミックスポイントも1000BTC超を追加取得し、新株予約権の残存分を消却しました。企業によってビットコイン戦略の明暗が分かれる中、長期保有を前提とした財務戦略が市場から評価されています。
イーサリアム20%急落で清算連鎖 ── 1500億円規模の損失拡大
イーサリアムが11月4日にかけての2日間で20%以上急落し、10月10日の暴落を彷彿とさせる展開となりました。時価総額第2位の暗号資産であるイーサリアムの急落は、約1500億円規模の清算連鎖を誘発し、暗号資産による損失が拡大しました。
イーサリアムの急落は、ビットコインの下落に連動する形で発生しましたが、下落幅はビットコインを大きく上回りました。これは、イーサリアムに対する機関投資家の需要がビットコインよりも弱いことを示しています。レバレッジ取引を行っていた投資家が大量に清算され、売りが売りを呼ぶ展開となりました。
清算連鎖とは、価格下落によって証拠金不足となったポジションが強制決済され、その売り圧力がさらなる価格下落を招く現象です。イーサリアムの場合、デリバティブ市場での取引量が多いため、清算の影響が増幅されやすい特徴があります。
リップル社の躍進 ── RLUSD時価総額10億ドル突破、プライムブローカレッジ開始
リップル社の米ドル連動型ステーブルコインRLUSDが、発行から1年足らずで時価総額10億ドルを突破し、ステーブルコイン上位10銘柄に加わりました。RLUSDは2024年12月に発行が開始され、短期間で急速に普及しています。
リップル社は米国で機関投資家向けのデジタル資産現物およびOTC店頭取引サービスを含むプライムブローカレッジ事業を正式に開始しました。このサービスでは、XRPとRLUSDの取引を提供し、機関投資家の需要を取り込んでいます。プライムブローカレッジとは、機関投資家向けに取引執行、資産保管、融資などを総合的に提供するサービスです。
リップル社は決済、カストディ、ブローカレッジを垂直統合し、総合金融インフラプロバイダーへと変貌しています。XRPと独自のステーブルコインRLUSDを軸にした金融エコシステムの構築を進めており、XRP取引量も増加しています。
一方、XRPの価格は下落トレンドが鮮明になっています。4時間足でデスクロスが形成され、価格上昇には短期の7EMA、次に28EMAを突破する必要があります。テクニカル分析では弱気シグナルが続いており、短期的な反発は難しい状況です。
マイニング業界の明暗 ── MARA・ハット8は増益、収益性は大幅低下
マイニング大手のMARAとハット8は2025年第3四半期に利益とビットコイン保有量を伸ばし、高性能コンピューティングやエネルギー開発分野への進出を進めました。両社は収益の多様化を図りつつ、ビットコイン保有を継続する戦略を取っています。
一方、ビットコインマイニングの収益性は大きく低下しています。ハッシュ価格は、ビットコインが7万6000ドル前後で取引されていた4月以来の最低水準まで急落し、現在は1ペタハッシュ毎秒あたり43.1ドルとなっています。ハッシュ価格とは、マイニングの計算能力に対する報酬の指標であり、この低下はマイナーの収益性悪化を意味します。
マイニング収益性の低下は、ビットコイン価格の下落とネットワークの難易度上昇が主な原因です。競争が激化する中で、効率的なマイニング設備を持たない企業は淘汰される可能性があります。
規制動向 ── ホワイトハウスがCZ恩赦を正当化、カナダはステーブルコイン規制導入
ホワイトハウスのキャロライン・レヴィット報道官は、バイナンス創業者チャンポン・ジャオ氏(通称CZ)への恩赦について、通常の手続きを経て慎重に審議されたと述べ、最終的にトランプ大統領に承認が送られたと説明しました。厳格な審査を経た決定であることを強調し、恩赦の正当性を主張しています。
バイナンスCEOのリチャード・テン氏は、アブダビ拠点の企業がワールド・リバティ・フィナンシャルのステーブルコインUSD1を使い、バイナンスへの20億ドル投資を行う決定について「当社は関与していない」と述べ、トランプ家関連ステーブルコイン推進疑惑を否定しました。
カナダ政府は2025年度の連邦予算案で、法定通貨担保型ステーブルコインを規制する新たな立法方針を示しました。7月にステーブルコイン規制法を成立させた米国に続く動きとなります。カナダはステーブルコインの発行、流通、保管に関する包括的な規制を導入する方針です。
伝統金融との統合 ── UBSとチェーンリンクが100兆ドル市場でトークン化ファンド償還
スイスの銀行大手UBSはチェーンリンクのデジタル・トランスファー・エージェントを用いたトークン化ファンドの初のオンチェーン償還を実行しました。これは100兆ドル規模の市場で初めての事例であり、伝統金融と暗号資産技術の統合を象徴する出来事です。
トークン化ファンドとは、投資信託などの金融商品をブロックチェーン上でデジタル化したものです。オンチェーン償還とは、ブロックチェーン上で直接ファンドの解約と資金返還を行うことを意味します。従来は複雑な事務手続きと時間がかかりましたが、ブロックチェーン技術により効率化が実現しました。
この取り組みは、伝統金融機関が暗号資産技術を実務に取り入れ始めていることを示しています。100兆ドル規模の市場にブロックチェーン技術が導入されることで、金融業界全体の効率化と透明性向上が期待されます。
その他の動向 ── ジェミナイが予測市場参入、サム・バンクマン=フリード控訴審
暗号資産取引所ジェミナイ・スペース・ステーションが予測市場分野への参入を準備していることが報じられました。予測市場とは、選挙結果やスポーツの勝敗など未来の出来事に対して賭けを行う市場です。ジェミナイの参入により、予測市場の競争が激化する見通しです。
ニューヨーク市長選挙では、予測市場ポリマーケットで100万ドルを失った投資家が話題となりました。ゾーラン・マムダニ氏がアンドルー・クオモ氏を破り当選しましたが、クオモ氏の勝利に賭けていた投資家が大きな損失を被りました。
FTXの元CEOサム・バンクマン=フリード氏は連邦刑務所で25年の刑期に服していますが、新たな裁判を求める機会を得ています。控訴審では、裁判の公正性や証拠の扱いが争点となる見通しです。
国内では、ANAP主催の「BITCOIN JAPAN 2025」が11月24日に開催され、成田悠輔氏が基調講演を行います。ビットコイン時代の未来を議論するイベントとして注目されています。
おわりに
2025年11月5日は、ビットコインが一時10万ドルを割り込むという歴史的な出来事が発生しましたが、強気派のアナリストは年末反発を予想しています。16億ドルの清算、イーサリアムの20%急落と1500億円規模の清算連鎖は、市場の脆弱性を露呈しました。しかし、中国の関税停止による貿易環境改善は、中長期的な回復の兆しとも言えます。
企業戦略では、ストラテジーのユーロ建て資金調達とメタプラネットの担保借入が対照的でした。コロンビア大学教授が指摘するように、トレジャリー企業の動向が市場に大きな影響を与える状況は続いています。シークアンスのビットコイン売却と株価急落は、市場が長期保有戦略を評価していることを示しました。
リップル社の躍進は目覚ましく、RLUSDRippleが発行する米ドル連動型ステーブルコイン。詳しく見る →時価総額10億ドル突破とプライムブローカレッジ開始により、総合金融インフラ化を実現しつつあります。UBSとチェーンリンクの取り組みは、100兆ドル市場への暗号資産技術導入という新時代の幕開けを告げています。
規制面では、ホワイトハウスのCZ恩赦正当化とカナダのステーブルコイン規制導入が、各国の暗号資産政策の方向性を示しました。今後の焦点は、ビットコインが10万ドルの大台を再び回復できるか、ETFフローが改善するか、そして機関投資家需要が戻るかです。短期的な調整は続く可能性がありますが、長期的な構造変化は着実に進行しています。
市場の変動が激しい時期こそ、冷静に情報を見極め、長期的な視点を持つことが大切です。引き続き、暗号資産市場の動向にご注目ください。
最近、ステーブルコイン 価格が安定するように設計された暗号資産。主に米ドルなどの法定通貨に連動し、1ドル=1トークンの価値を維持する。 詳しく見る → の需要が高まっています。
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