金融庁、銀行の仮想通貨投資解禁を検討
日本の金融庁が銀行による仮想通貨投資を認める方向で制度改正を検討していることが複数の報道で明らかになった。これまで銀行は価格変動リスクや財務健全性の観点から、仮想通貨の自己勘定保有を原則禁止されていたが、今後は株式や債券と同様に、一定のリスク管理体制の下で保有が認められる可能性がある。
制度改正の背景には、暗号資産市場の拡大と制度の成熟化がある。特にステーブルコインやトークン化証券の導入が進む中で、銀行がデジタル資産をポートフォリオに組み込む必要性が高まっている。金融庁は、銀行が暗号資産を保有する際のリスク評価・開示義務、自己資本比率の管理、保有上限などを含む厳格なガバナンス体制を求める方針だ。
さらに、銀行グループが暗号資産交換業者として登録できるよう制度改正を進める案も検討されており、銀行によるウォレットサービスやカストディ業務の提供が現実味を帯びてきている。これは、従来の金融機関とWeb3領域の融合を加速させる動きであり、個人投資家にとっても選択肢の拡大や税制面でのメリットが期待される。
一方で、金融庁は顧客への仮想通貨販売については慎重な姿勢を崩しておらず、消費者保護の観点から段階的な制度整備が求められる。今回の検討は、国内金融政策の大きな転換点であり、銀行業界・仮想通貨業界双方にとって新たな収益機会と競争環境をもたらす可能性がある。
企業によるビットコイン戦略の深化と市場影響
企業によるビットコイン(BTC)戦略が多様化しつつある。AIフュージョンキャピタルは約1億円分のBTCを追加購入し、保有量は30.76BTCに到達。BitGoや博報堂との連携を通じて、暗号資産運用の拡大を図っている。一方、コンヴァノは高値売却・安値買戻しのディーリング戦略により約7億円の利益を確保し、保有量を665BTCまで拡大。累計投資額は114億円に達しており、企業によるアクティブなトレーディングが収益源として機能している。
さらに、マイケル・セイラー氏率いるストラテジー社は690億ドル相当のBTCを保有していることを示すチャートを公開し、追加購入の可能性を示唆。週足終値では10万8,000ドルの維持が重要な「需要ゾーン」回復の鍵とされ、価格のボラティリティも高まっている。こうした企業の動きは、BTCの価格形成に直接的な影響を与えるだけでなく、トレジャリー戦略の再定義にもつながっている。
また、仮想通貨トレジャリー企業の一部では、NAVの急落により従来の「錬金術」モデルが限界を迎えつつある。10x Researchは、DAT(デジタル資産トレジャリー)企業が新たな戦略への転換を迫られていると分析しており、保有と運用のバランスが問われる局面に入っている。企業によるBTC戦略は、単なる保有から収益化・政策連動へと進化しており、今後の市場動向を占う重要な指標となる。
ステーブルコイン規制と政治的推進力
仮想通貨を取り巻く規制と政治の動きが、多方面から顕在化した。中国では、アント・グループやJDドットコムなどのテック大手が香港で進めていたステーブルコイン発行計画を、北京当局の介入により一時停止した。人民銀行は民間による通貨発行がデジタル人民元に与える影響を懸念しており、香港が5月に施行した包括的規制との摩擦が浮き彫りとなった。これは、国家主導のデジタル通貨と民間ステーブルコインの競合構造を象徴する事例である。
一方、米国ではニューヨーク市長選候補のクオモ氏が、仮想通貨振興のための新ポスト創設を公約した。AI・ブロックチェーン・バイオテクノロジーの3分野を統括する「最高技術革新責任者」や「イノベーション評議会」の設置を提案し、ウォール街を擁する都市としての政策的リーダーシップを強調している。このような政治的推進力は、都市レベルでのWeb3導入を加速させる可能性がある。
これらの動向は、仮想通貨が国家戦略の一部として扱われるフェーズに入ったことを示しており、規制と政治が市場構造に与える影響は今後ますます大きくなると予想される。中国の介入は民間の自由を制限する一方、米国では政策による振興が進むという対照的な構図が浮かび上がっている。
マイニング・AI・FRB会議:仮想通貨市場の構造変化と技術融合の現在地
仮想通貨市場は、技術進化と構造変化の波にさらされている。2025年10月20日、米FRBは「Payments Innovation Conference」の詳細を公表し、Chainlink・Circle・Coinbaseなどの暗号資産関連企業が登壇予定。中央銀行と民間企業が同じステージで議論することで、決済インフラの未来像が共有される場となる。これは、規制当局とWeb3企業の対話が制度設計に反映される可能性を示唆している。
一方、仮想通貨マイニング企業の株価が年初来2.5倍超の上昇を記録し、BTCの価格上昇を上回るパフォーマンスを見せている。アイリスエナジーやサイファーマイニングなどがAI・HPC事業への転換を進めており、マイニング業界が単なる採掘から高度な計算資源提供へと進化していることが背景にある。さらに、BTCのマイニング難易度は一時的に低下したものの、ハッシュレートは過去最高水準を維持しており、ネットワークの安定性と競争力が両立している。
これらの動向は、仮想通貨が単なる投資対象からインフラ技術へと進化していることを示しており、AI・ブロックチェーン・金融政策が交差する地点で新たな市場構造が形成されつつある。FRBの会議、マイナーの事業転換、ネットワークの技術的進化は、仮想通貨の「次の10年」を占う重要な要素となる。